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人間はへんなことをする。
ぬけるような秋晴れの空だというのに
古いお城に集まって
中世の衣装を着て
お芝居が始まった。
しずしずと歩む男たちの
おそるおそる歩む女たちの
なんという白 ....
一九八九年九月一日のガンジス河は
モンスーンの雨水を集め濁りに濁り
滔滔と流れて行く
ようやく白みかけた空から
朝の光が差し始めると
ガート(沐浴場)に群れ集う夥しい人々がどよめく
....
インドの魔術師から花束を貰った夜
僕は何故平安時代の日本にいたのだろう
うら若い細身の美女に囲まれて
宴が始っていたようで
僕はひとりの女を抱き締めている
官能が昂まり思わず腕に力をいれ ....
長男 22歳
卒業研究題目「二次元突起列を有する平行平板間の流動性」序論 実験方法 結果 エネルギー 有効利用 機器 小型化高効率 熱交換機 伝熱特性向上 工学上重要 問題 壁面 伝熱促進方 ....
優雅で端整な コメット
乱暴で大食漢の オランダ
平凡で神経質な 黒出目金
紅白 オレンジ 真っ黒
我が家の四尾の金魚たちを
見つめているときりがない
金魚たちは主の心を映して泳い ....
お墓参りに行くから早起きしよう
しかも
いつものように バスと電車とまたバス
ということでなく
自転車で行ってみよう。
そのとおり
めずらしくみな早起きした
長男 長女 二男 三男
....
1
薔薇の苗木を一本買った。
生まれて初めて
自分の手で庭に植えた。
木を強くするために
たった一つの蕾を切れと言う
胸が痛んだ。
薔薇の木に新芽がふいて
やがて蕾が三つもつい ....
人々が同窓会に出席するのは
みな自分に会いたいからだ
失われた自分自身を確かめたいのだ
それぞれの顔に刻まれた時間を
みつめあい 納得する
何処か知らない 浜辺
の砂の上に座りこんで ぼんやり
海を眺めていたようで
すぐそこの岩屋の蔭
から蟹が一匹
ちろっと動いた ように感じて
眼を凝らそうとしている
つもりが逃げ ....
疲れた体を横たえ雨の音を聴く
水音の底から甦るいのちは
限りなくやさしい
長かった旅の終わりに向かって降りて行くとき
人はなぜ柔和な表情になるのだろう
暖かいビロードを愛撫するように ....
フィリッピンの
バタンガス地方
カラカの
小さな漁村が消え
三〇万KW石炭火力発電所 出現
あつい日盛りで
海には風もない
遥かセミララから
ふるぼけた石炭船が着いて
なんに ....
舞台の中央には透明な攪拌機がありまして
僕によく似たピエロが登場します
ピエロは無言で虚空を凝視めると
両手をひらひらさせて様々な八月を取り出します
粗末なリュックに詰め込んだサツマ芋 ....
ゆいごんじょうをかけという
まいにちまいにちゆいごんじょうをかけという
ふるほんやにいっていっさつひゃくえんのぶんこぼんをかえという
まいにちまいにちかえという
びょういんへいけという
でき ....
時代遅れの政治家並に肥満して
申し分ない冷暖房付の部屋に
横たわり 詩をつくるその男の 別して
濁った目と憂鬱な顔こそ 思うに
現代詩そのもののありようとは言える。
ありふれた喫茶店の ....
ぼくの愛する人 ぼくの恋人よ
きみの歯が入れ歯になるまでの{ルビ一世=ひとよ}
その時までずっと一緒に居たい
あの遠い山宿に生まれた期待
かぎりなくつづく田舎道の散歩
きみの部屋でともに ....