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ふいに
{ルビ痒=かゆ}くなった腕をかいたら
思いのほか
しろい爪は伸びていた
( 窓の外には風が吹き
( 緑の木々が
( 夢を{ルビ囁=ささや}く声がする
はた ....
窓辺の{ルビ日向=ひなた}に置かれた{ルビ壺=つぼ}は
ざらつく{ルビ表面=おもて}を
降りそそぐ日にあたためて
まあるい影を地に伸ばす
窓辺の日向に置かれた壺は
「何者か」の手 ....
窓辺には
ガラスケースにしまわれた
誰かの心臓が置かれている
真夜中の無人の部屋に現れる
今は亡きピアニストの面影
奏でられる旋律に
永い眠りから覚めた心臓は
脈を ....
終電前の
人もまばらなラーメン屋
少し狭いテーブルの向こうに
きゅっ と閉じた唇が
うれしそうな音をたて
幾すじもの麺をすいこむにつれ
僕のこころもすいこまれそう
....
わたしはいつも、つつまれている。
目の前に広がる空を
覆い尽くすほどの
風に揺られる{ルビ椛=もみじ}のような
数え切れない、{ルビ掌=てのひら}に。
その手の一つは、親であり ....
お得意さんの取引先から
オフィスへ戻る車内
助手席の窓外は
穏やかな{ルビ田舎=いなか}の村と
夕焼け空の陽の下に
広がる畑
窓を開けた隙間から
入る風に
前髪は ....
目の見えない人が歩く
前にいる友の背中に手をあてて
目の見える僕も歩く
いつも前にいる 風の背中 に手をあてて
そうでもしないと
ささいなことで気ばかり{ルビ焦=あせ} ....
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