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国道二号線を走っていたら
ふいに視野の右側から
何か小さなものが飛び込んで来た
と思ったらサイドミラーの上に
シジミ蝶が止まっていた
小指の爪ほどの大きさの
灰白色の翅をピタリと閉じて ....
仕事場のドアを開けると
早く来て掃除をしている筈の君がいない
代わりに卵がひとつ床に転がっていた
とうとう君は卵になってしまったのか
私には何も言ってくれなかった
淡いピンク色を ....
九月の雨
今日は雨降り
九月に入って初めてだ
小雨から本降りになると
コーヒーショップの窓の外を
アノマロカリスが泳ぎ始めた
カンブリア紀の海棲生物だ
雨足がさらに増してゆ ....
南へ向かう鳥達が
薄色の空に溶けて行った
きみは衣装棚から
厚い上着を出してきて
胸元に飾った小さな憧れを
そっと隠した
子犬が地層の匂いを嗅いでいる
鳥の化石に恋をしたんだ
....
巡り来る日々と
ぼくらの幼い憧れとの隙間から
木洩れ日のように降り注ぐ光
聴こえて来るだろう?
光の後ろ側の国から
あの/弾む息が
リズミカルなステップが/
国境線で
少女 ....
海が
めくれてゆく
いくつもの
いくつもの
海が
めくれて
岸壁から
追い縋って
宙を泳ぐ指先に
紫貝のように
閉じる音楽
(母は海に還ったのだ
街が
たわ ....
ゴルフ焼けしたいい親父になった
今では大阪の営業所長さんだ
―僕らの音楽を理解してくれる人は
この広島に一人か二人ってところだ
だけど これだけは確実に言える
僕らは凄いことを ....
ぼくはいつも
あおい国を探している
仕事場へ向かう朝の舗道で
灰色の敷石の
一つ一つの継ぎ目から
あおが立ち昇る
草原の朝露たちが集まって
小川になり大河になって溶けて行く
....
じゅうじか?
ううん
かざぐるま?
ううん
なにかのかざり?
ううん
なに?
しゅりけん
チラシを細く丸めた棒を二つ
十字形に組み合わせて
セロテープでぐるぐる巻いてあ ....
深緑色の小葉が群れる枝に
金の果実が十幾つ
花瓶に挿して眺めていたら
子供の頃に読んだ
セルビアの民話を思い出した
夜更けに鳥が盗みに来る
王宮の金の林檎
鳥は綺麗な女性に変 ....
ボディの色が気に入ったので
エレキギターが欲しくなった
メーカーの最上位機種
カラー名はアバロンとある
「AVALON」は
イギリスの何処かにある伝説の島
アーサー王の遺体の眠ると ....
あなたが残して行ったもの
俳句を連ねた小さなノート
表紙がぼろぼろになった聖書
漱石の「虞美人草」と
若山牧水の歌集
壇の上の 薄い写真の中の
やわらかな微笑み
かつてあなた ....
冷んやりした部屋の
窓際に椅子を置いて座る
裸電球に照らされた
オレンジ色の壁に
魚の形の滲みが付いている
じっと見つめていると
風が梢を揺らす音に混じって
足音が聴こえてき ....