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新しい雪の降り積もった
静かな屋根やねが
水平な朝に焼かれて
私の底辺をもちあげる

増幅する光の波が
うずくまる私の手をとり
青い影を洗う

そうして
裸にされてゆく、わたし
 ....
一、たらちね

ふるさとの町は
訪れるたびに輪郭を変えてゆく
けれど
夕暮れどきに帰りつけば
あいも変わらぬ暖かさで
湯気の向うから微笑みをくれる
あの人のおかえり

ただいま、と ....
猫のながぐつ、なっちゃんは
アヒルのくちびるで
せんべいをコリリ
よくきたね
あくしゅ、あっしゅ


星のくつした、さくらんぼ
唄いながらお絵かき
なっちゃんは、ようせい
(たんぷ ....
子供たちは
キティちゃんのホークで
なぽりたんを召し上がる

何千キロという海の大きさも
何十万ガロンという容積も
その喫水の深さも
まるで想像できない
きっと、大切なことなのだろう
 ....
どんなに鮮烈な映像も、感情も
あとからあとから
注ぎたされる
とろりとした夢水に
輪郭を曖昧にして
とらえようとするほど
淡くまぎれてしまう

過去と未来の、あるいは
前世と来世の狭 ....
そこはいつも
清潔な湿度と
せつないじゅうりょくの
香りにみちている

身ごもったおんなたち
髪を横に束ね
しずかにもたれている
雑誌をうつくしく取りだし
うつくしくめくる
とろと ....
夜明け前
神々の気配が
冷えた大地をわたり
静かな{ルビ洞=うろ}に届けられると
指さした方角から
蒼い鼓動が、はじまる

やがて
優しい鋭さをもって
崇高な感謝があふれだすと
う ....
青や緑の絵の具を
うすくのばして
あの透明をあらわそうとして
さっきから
なんども失敗している
{引用=
手をひいて
石を渡る
ぬらりとした光沢に滑らせた足を
からだごと、ぐいと引き ....
あの日
あっというまに難破した僕らは
流木にもなれずに
世界中の海に散らばった

絶え間なく打ち寄せるくらやみの音色に
安心してしまいそうな
ちいさな木片

ほんの少しの誤り
いく ....
星のみえないまちで
拾った青黒い石を
隕石標本だといって
ポケットにしまう

今夜、星をわけよう
はくちょうと
おやこのくまは
君にあげる
いっかくじゅうさえ
あればいいんだ

 ....
牛がこない
遅れるなよと言ったのに
メールさえ返ってこない
電源を切っているのだろう

遠くに
うすちゃ色のまーぶるがみえる
きっとあれだ
おーい、と呼ぶ
MOO―、と感情を長くのば ....
夏ごとに
おしゃれになってゆくおまえが
自慢のミュールで前を行く
{引用=
(なぁ、おまえが選んだっていう
(このお父さんの水着
(ちょっと
(トロピカル過ぎやしないか

いつか
 ....
朝霧の蒸発してゆく速さに
子供たちは
緑色の鼻先をあつめて
ただしい季節を嗅ぎわける


くったり眠っている
お父さんのバルブを
こっそりひらいて
空色を注入する
うん、うんとうな ....
一、蝉しぐれ

白い病の影がおりて
夏の命、際立つ


すり硝子の花瓶に
溢れていたはずの笑顔
シーツに残された
僅かな起伏は
生きていた
あなたの

散らばった
レモン色 ....
若草色のかざぐるまに
しがみついていた、あの人が
夕風にさらわれて
私の中を流れてゆきます

水たまりの映す青さの
ほんとうを
確かめるまえに
軽々と飛び越えて
もう
行ってしまっ ....
何を植えるかなんて
考えもなしに
掘りおこした
庭のすみ

やわらかい土の頂きに
雀が降りて
ころころと、まろび遊ぶから
つい、嬉しく振り返って
あの人の面影を探してしまう

幸 ....
あなたのご推察のように
私の頬袋という港には
一艘の縞模様が
静かに停泊しております

ふとく、ほそく打ち寄せる
うるわしき流線の集合する先端を
風に尖らせ
凝縮された夏色の系譜は
 ....
月光をすくい、すくって
髪を洗い
ほっそり
とうめいな櫛を曳く

鎮まってゆく肌、肌に
しみこんでゆく
流麗な調べ

{引用=
呑まれても
ひとひら
抱きしめても
ひとひら
 ....
路地裏のちび猫は
突入する赤に
踏み出す肢を迷わせる
産み落とされた残り香
ずぶ濡れのステップ

行きずりのハーモニカ犬は
油のしみ込んだ木柱に
鼻先をふがふが押しあてる
かつて高く ....
確かめるように差し出した
金魚引換券は
手のひらの熱で
もう、よれよれだ

  (ううん
  (いちばん小さいのがいいの
  (だって
  (いちばん大きくなるでしょう?

わがま ....
途切れがちの遠い波音に
あるいは
いつかの風景の肌ざわりに
私は
何を求めていたのか

カンバスは
筆先の触れた瞬間から
額縁にきちきちと収まってしまう
握り込んだ青い爪が
手のひ ....
帰宅ラッシュだった
階段で圧力に耐えかね
ひょろ長い女の背を
あわあわと胸で押してしまった

(押すなよおっさん!

おっさんではない
武士である



{ルビ法度=はっと}に ....
折りたたまれてゆく季節は
いつか振り返れば
一瞬なのかもしれない
湧きいずる水におされて
いま
雲母のいちまいが
なめらかに遠ざかる


使いきれなかったノートの白さ
描ききれなか ....
二日遅れのホワイトデーの
白いリボンを髪にのせて
ふわりと回ってみせる君は
大きくなったら
メイドになりたい
という

人様に奉仕したいとは
見あげた心がけだ

解釈は準備してお ....
春へと続く回廊は
まだ細くて
差し込む光に
白く歪んでいる
三月は
足裏を流れる砂の速さで
大切なものを{ルビ攫=さら}っては
あやふやなものばかりを
残してゆく


  いくつ ....
(また、お出かけなんだって、つまんない
保育園で唯一娘のことを
好き
と言って遊んでくれた友達は
先月突然、家庭の事情で引っ越してしまった

この町にも
あの町にも
ひしめく家並み
 ....
{ルビ微睡=まどろ}んで、乗り過ごすうちに
春まで来てしまった

0番線から広がる風景は
いつかの記憶と曖昧につながっていて
舞いあがる風のぬくもりが
薄紅の小路や
石造りの橋や
覗き ....
朝起きるとボスだった
眉間に深い皺が刻まれていたが
特に不満があるわけではなかった

煙草をつまんで深々と吸い込む
ブラインドはない
のでカーテンから覗く
何ということのない休日の朝が広 ....
あいかわらず武士だった
参代する日でもなかろうに
女房殿に渡された温かい包みを抱えて
坂を下ってゆく

*

何やら人垣ができていて
たいそうな{ルビ賑=にぎ}わいである
隣の女房が ....
朝起きると武士だった
(拙者、もうしばらく眠るでござる
と、布団を被ったが
あっさり古女房に引き剥がされた
長葱を{ルビ購=あがな}ってこいという
女房殿はいつからあんなに強くなったのだろう ....
渡 ひろこさんの佐野権太さんおすすめリスト(61)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
私信- 佐野権太自由詩21*08-2-11
春へ- 佐野権太自由詩13*08-1-7
なっちゃん- 佐野権太自由詩19*07-11-9
キティホーク- 佐野権太自由詩21+*07-10-24
いきものがかり- 佐野権太自由詩22*07-10-22
にんぷ専用車両- 佐野権太自由詩14*07-10-4
フォルクローレ- 佐野権太自由詩20*07-9-26
夏のあとがき- 佐野権太自由詩28*07-9-4
難破船- 佐野権太自由詩22*07-8-18
流星のふりつもる夜は- 佐野権太自由詩15*07-8-15
牛とあるく- 佐野権太自由詩24*07-8-13
海色のミュール- 佐野権太自由詩32*07-8-9
海の日- 佐野権太自由詩38*07-7-24
夏を弔うための三重奏- 佐野権太自由詩31*07-7-19
風待ち- 佐野権太自由詩31*07-7-4
つゆむらさき- 佐野権太自由詩37+*07-6-26
ひまちゃん- 佐野権太自由詩10*07-5-30
月下夜想- 佐野権太自由詩15*07-5-23
ブルー・ノート- 佐野権太自由詩17*07-5-22
春金魚- 佐野権太自由詩29*07-5-8
遥か、透明の過程- 佐野権太自由詩32*07-4-25
武士のきもち- 佐野権太自由詩34*07-4-5
青いピースサイン- 佐野権太自由詩34*07-3-29
お父さんスイッチ- 佐野権太自由詩53+*07-3-23
桜通信- 佐野権太自由詩18*07-3-5
あっかんべーの事情- 佐野権太自由詩17*07-3-1
春のホログラム- 佐野権太自由詩34*07-2-28
ボスのブルース- 佐野権太自由詩15*07-2-20
武士と猫- 佐野権太自由詩21*07-2-9
武士のつかい- 佐野権太自由詩58*07-2-6

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