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僕の手が
僕の指が
父の手にみえることがある
どこからか父の
僕を呼ぶ大きな声がきこえてくる
指さす先には誰もいない
声だけが耳に残る
七年ぶりに
父の洋服ダンスを開けた
....
人間になったときに
長いしっぽは捨てたはずだったが
ゆうべまた失くしたので
蜥蜴になろうと決心した
体が楽になったのは
まっすぐで生きられるからだろう
背中が陽に染 ....
背中の星が重いから
飛翔しても
飛翔しても落ちる
てんとう虫の
ちいさな宇宙
野の草のように
持ち上げたものの重みに
ひとも耐えているが
あまりにも大きなものの中で
あま ....
きょう
ぼくは少年だった
両腕をいっぱいに伸ばして
いちにち
空を憧れていた
ぼくのノートは
かなしい文字でいっぱいだ
さようなら
さようなら
みんな さよ ....
雨あがりの道を母と歩いていた
虹だ
おかあさん
虹だよ
ふりむくと母はいなかった
手の感触も覚えていない
母はよく左の胸をおさえていた
あれは母の癖だとばかり
思ってい ....