すべてのおすすめ
腹の中
むかし
おふくろは言ったものだ
「おれの腹断ち割って見せたいものだ
真っ白じゃで…」
そう あなたは
腹に一物持つような了見など有りはしなかった
だが
子ども達は ....
妖怪
都会の妖怪は
昼間に出るらしい
夜は明るくて
隠れる場所が無いから
たとえば
人の途絶えた午後
ビルの屋上に出るドアの
前に佇む影
あるいは
休日の事務室に ....
世の中にはあきらめの悪い男や女がいて
失敗にもめげず研究を重ね
ときには世間を驚かせるけれど…
昨年 クリスマスに
かがり火を焚いたシクラ ....
じっと見つめる白いディスプレイ
画面の深淵に広がる混沌
ぼんやりとした影がふるえているのだが
コーヒーを一口 指先で机を叩き
たばこを一本 目を閉じ頭に爪を立て
五分 十分・・・
一瞬 ....
山間の道路が雪に覆われていた間
馬小屋に閉じ込められていた馬
雪が溶けると小屋から引き出され
四輪の荷馬車に繋がれる
出かけるときには
隣の家の生け垣の
樫の葉を食いちぎり
轡に邪魔 ....
ブリキの機関車が横向きに倒れ
プラスチックのミニカーが仰向きになっている
河原で拾った平たい石と
足の折れた甲虫の死骸の上で
スカートのまくれた人形と
鼻のかけた木偶が抱き合っている
形も ....
セピア色の銀板写真に
固定されたあなた
肋骨の浮き出た体で
西瓜を喰っている姿に
戦場の匂いはないとしても
あの夜
炎にあぶられた身体は
反り返り 跳ね返り
決意は ぱちぱち爆 ....
悪夢
蚊がれの字に足を上げ
腕に止まり 足に止まり
れ
れ れ れ れ れ
れ れ れ れ れ れ れ れ れ れ
....
周りの山を写す湖面の鏡
虹色の橋が架かり
友の誘う声が聞こえても
ぼくは そこには行けない
木々に守られていた明るい過去
育った家 育った台所 育った学校
父もいた 母もいた 友人も ....
隣の村とぼくの村の間に
鎮守の森が有って
鳥居の奥には不思議な気が漂っていた
大きな楠があって
その前には祠があって
神様が居るらしい
子供のころ お願いしたのだが
たとえば ....
大人になれば女だって立ちションが普通
どの家にも出入り口脇には
風呂の水を落とす瓶があって
三方板囲にした小便用便所と兼用
此処で男も女も用を足した
厠小屋もあるにはあったが
....
船は水平線を追いかける
疲れた今日が沈み
絶望が沈み
青春が沈んでいく水平線
追いかける船も
やがては
水平線に沈んでいく
目には見えるけれども
決して捉えることは出来な ....
今日は町内会の清掃活動日
今日は春のウオーキング大会最終日
近所のかみさんたちが
雑草刈りしている
あいさつはしないほがいいな
気付かれないように行った方がいいな
か ....
わたしの家では
年中花を咲かせています
旱天の続く夏の日も
雪に埋もれる冬の日も
花はたくさん咲いていて
やっと花です
光に満ちた庭で 花壇で
お互いにおしゃべりしているようで
風 ....
青い陶器瓦の下に埋もれた
記憶を掘り出してどうなるというのだ
焼け落ちた家の跡の
現実と幻想の交叉した風景の中に
私が立っていたあの日
陽光に照らし出された井戸の
湧き出る水に沈んでい ....
庭の片隅で子供がじゃんけん
勝った手で円を描く
ここはぼくの陣地
庭の柿の木に
猫が爪痕つける
ここはワタシの陣地
庭木にさした蜜柑
メジロを追い払ってヒヨドリがつつく
こ ....
1 ベランダのアマガエル あるいは セミ
人工石に囲まれた中空にひらひら揺れる緑色の片鱗が
さまざまな生き物の宿る大木の小枝に見えたのか
ベランダに並んだ化学合成陶器に盛られた疑似土に
....
独身中
家と家の間の狭い庭に居着いたアマガエル一匹
今年も紫陽花の葉に上にあらわれた
眼 さましたか
やせたな
ひとりか
女房はどうした
子ども ....
旭山動物園 シロクマ兄弟
なあアニキ
ちょっと脅してやろうじゃないか
おれは面倒だ 勝手にやりな
じゃあ 見みててくれ
あのこども脅してやっから
白 ....
鳥のくせに空が飛べないなんて
と言われても
空を飛ぶのは結構大変なんだ
体重減とか
筋力増強とか
だから大型肉食獣の居ないところ
餌のたっぷりあるところにいた鳥
たとえばダチ ....
血管を流れる血のように
岩を滑る垂水が
ぼくの中に流れていたころ
ときどき 桃が流れ着く岸辺で
老女が野菜を洗い米をとぎ
男の子が笹船に乗って
都の方へ出かけて行った
川の畔の小さな ....
団地の狭い庭に桃を植えて
安くて新鮮な桃を食べようなどと
欲を張ったのだが
日当たりは良くないので
おいしい実がなったかどうか
それも分からないまま…
たっぷりの肥料と
水やりをし ....
もう二十年も昔になるだろうか
「政府の備蓄米が放出されているらしい」と
うわさが流れていたころ
「あんたの家のお米ぐらいはいつでも確保しておくからね」
そういった町の米屋さん
近くにスー ....
バーチャル世界を漂う夥しい単体から
吐き出される0と1の記号は
フェロモンを伴って 波に乗り
キーボードの前に佇む孤独な心の
隙間に入り込む
ディスプレイの
向こうとこちらで ....
ブラックボディのノートパソコンを開け
キーボードに伸びる手を追い越して
パネルに伸びた指が
無作為にキーを叩く
SACK DON SEX…
夜明け前の画面に触れた指先から
水が泡 ....
あなたは数十年間共に過ごした顔を
しみじみ見つめたことはあったか
舐めるように眺めたことがあったか
家庭で会社で割り当てられた役
自分の心を追い払い
ドーランを塗り 眉を描き
役のキャ ....
はるののでツクシをつんでいるとき
かんぼくのあいだを とおりすぎるかげ
そいつはイタチだ
かんぼくのなかをのぞくと
なくしたスーパーボールや
ミニカーがみつかるにちがいない
イタチのこ ....
水平線に
盛り上がった入道雲
の中へ
入ってゆく船
をあなたと
見送った日
渚に係留された
氷川丸を眺めて
赤い靴の少女を歌い
砂に埋まった啄木の蟹を
掘り出した二人は
こぼ ....
揺れる心地よさに
居眠りしていたわけではないが
通過してしまった駅があったという
ぼくを待っていた人に気付かず
遠ざかった町
乗車駅の ....
むかし、ぼくが田舎で少年をやっていたころ、野性の動物が家の周りを彷徨いていた。畦を通れば、蛇が逃げ、イタチやムジナに出会うことも、珍しくはなかった。イノシシは畑の作物を喰い荒らしていた。雪の日には山 ....
1 2 3