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白球が
バットをかすめると
息の仕方を忘れる
真空状態の後
こみあげてくるものが
目に見えない
傷に滲む
涙は血のように熱く
まだ若い
階段を昇り終えると
手には指のようなものが生えていて
動かすとそれは
自分のもののように動くので
そればかりじっと見ていた
窓を開けると
外はどこまでも夜で
星のようなも ....
疲れてるの
と聞かれると
疲れてると
言ってはいけない
気がしている
休日も
休日以外の日も
そのどちらでもない日も
ある海で
休んでいると
網に掛かってしまっ ....
日々が声になって
声にならないものは
声にならない
紙の上の文字になって
出せなかった
手紙のように
ここにある
まだ捨てずに
取っておいていいですかと
やはり声にならず ....
エレベーターに乗ると
上へまいります
と声が案内するけれど
ほんとうは
上にも下にもたどりつかない
変わらないものが
この空のどこかにある
世界はあの頃と ....
セーターが
箪笥の中で冷たくなって
死んでいたので
あたためてあげようと
思った僕のからだも死んでいた
箪笥には
僕以外にも
死んでしまった
家族のセーターがきれいに
冷た ....
白い書物の中で
あなたとはじめて会った
数千年の時を経て
変わらない声と声が
光に影を差して立ってる
向き合いながら
照れくさそうな文字になって
たとえば
あなたが好きですは ....
つめたく湿った朝
目がさめると
屋根から鳥の足音が聞こえる
降り立って
昨夜の戦況を
せわしなく伝えていた
兵士の声は力尽き
衛生兵の途方に暮れた
足音が聞こえる
数匹 ....