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「国宝薬師寺展」の垂幕が
灰色の壁に掛かった
上野の美術館
瞳を閉じる
観音像の絵が待つ入口へ
長蛇の列は
ゆっくり進む
ぽつり ぽつり
曇り空から
降り出 ....
川崎LAZONA5階
木のベンチに腰を下ろした僕は
各階に店の並ぶ円形広場を眺める
小さく見える人々の
行き交う傍らで
ステージに立つ
君の唄声を聴いていた
君の息子 ....
人々の行き交う夕暮れの通りに
古びた本が
不思議と誰にも蹴飛ばされず
墓石のように立っていた
蹴飛ばされないのではなく
本のからだが透けているのだ
聴いている
時 ....
ペットボトルのゴミ箱に貼り紙一枚
「ラベルははがしてすててください」
点線に沿い
びりっとはがそうと思ったら
なかなか切れずにはがれない
意固地な自分を脱がない
がんこ者の ....
昨日のゴミ置き場で
幸せそうに日向ぼっこしていた
白い便器の蓋が
今日は無い
腰を痛めて十日間
介護の仕事を休んでいたら
先月の誕生会で
目尻の皺を下げていた
....
老夫の胸に
長い間蓋を閉じていた
遠い日の戦
時折今も夢に見る
モノクロームの場面
白飯を掻きこんだ後
張り詰めた空気の部屋で
就寝前
心細く母のことを語らいながら
....
路面に{ルビ陽炎=かげろう}ゆらめく
真夏の正午
長袖の作業着に
ヘルメットをかぶる
眼鏡のおじさんは
汗水たらし
鉄パイプを{ルビ担=かつ}ぐ
路面には
夏空 ....
お香の煙が立ち昇る
傾き揺れる炎の指さき
すうっとのびて
天をさす
*
{ルビ蝋燭=ろうそく}は
人と似ている
明かりを灯し
身を溶かし
や ....
友と楽しい一日を過ごし
反対ホームの車窓の内から
ぼくに手を振る面々を
列車が運び去った後
静まり返った
無人のホームの端に立つ
胸のすき間に
沁みる夜風が吹き抜け ....
お得意さんの取引先から
オフィスへ戻る車内
助手席の窓外は
穏やかな{ルビ田舎=いなか}の村と
夕焼け空の陽の下に
広がる畑
窓を開けた隙間から
入る風に
前髪は ....
昨日はきみを傷つけたので
布団にしがみついて
うつ伏せたまま
闇のなかに沈み
眠った
夜が明けて
目覚めると
窓枠の外に広がる
朝焼けの空
ふわりと浮かぶ
....
中央図書館を出ると
すでにとっぷり陽は暮れて
人々が行き交う広場の真ん中には
イルミネーションのまばらなさえないクリスマスツリーが
それ以上でもそれ以下でもない素朴さで風に揺れていた ....
2年前
中年夫婦で営んでいた
ふっくら美味しいパン屋さん
大洪水で流された
跡地には
独り身の{ルビ若旦那=わかだんな}が一人で開いた
手打ちの美味しい{ルビ蕎麦=そば}屋 ....
地面には
ぺちゃんこのかまきり
おどけた鎌を振り上げて
お前は偉いな
踏みつぶされても
踊ってる
ku-miさんの服部 剛さんおすすめリスト
(14)
タイトル
投稿者
カテゴリ
Point
日付
頭上の傘_
-
服部 剛
自由詩
4
08-6-5
空の絹糸_
-
服部 剛
自由詩
4
08-6-2
詩人の肖像
-
服部 剛
自由詩
11*
08-5-2
空の器_
-
服部 剛
自由詩
2
07-11-16
「_無_」
-
服部 剛
自由詩
32*
07-11-6
鉛色の街_
-
服部 剛
自由詩
4
07-10-31
昼間の父さん_
-
服部 剛
自由詩
7
07-8-6
蝋燭の灯_
-
服部 剛
自由詩
6
07-8-6
蜘蛛の糸_
-
服部 剛
自由詩
2
07-7-4
畑のにおい_
-
服部 剛
自由詩
9*
07-4-24
「_夜明け_」_
-
服部 剛
自由詩
11*
07-3-19
’06_12/22_18:30_@_Machida_〜クリス ...
-
服部 剛
自由詩
11*
06-12-22
消えた店_
-
服部 剛
自由詩
8*
06-10-27
標本_
-
服部 剛
未詩・独白
11*
06-9-9
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