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明るい空から
さわさわと緑の雨が降るから
おまえの誕生日は
いつも濡れている
水色の
ローラーブレード
畳の上で
肘あてや膝あての
具合を確かめている
それは
おまえを守るため ....
濃いほうのお父さんの
ガハハな笑顔もいいけど
やっぱり私は
うすいほうのおとうさんの
静かなほほ笑みが好き
声に出して呼ぶと
両方振り向いて
うすいおとうさんが
所在なさそうに下を ....
夜明け前
神々の気配が
冷えた大地をわたり
静かな{ルビ洞=うろ}に届けられると
指さした方角から
蒼い鼓動が、はじまる
やがて
優しい鋭さをもって
崇高な感謝があふれだすと
う ....
夏ごとに
おしゃれになってゆくおまえが
自慢のミュールで前を行く
{引用=
(なぁ、おまえが選んだっていう
(このお父さんの水着
(ちょっと
(トロピカル過ぎやしないか
}
いつか
....
朝霧の蒸発してゆく速さに
子供たちは
緑色の鼻先をあつめて
ただしい季節を嗅ぎわける
くったり眠っている
お父さんのバルブを
こっそりひらいて
空色を注入する
うん、うんとうな ....
何を植えるかなんて
考えもなしに
掘りおこした
庭のすみ
やわらかい土の頂きに
雀が降りて
ころころと、まろび遊ぶから
つい、嬉しく振り返って
あの人の面影を探してしまう
幸 ....
初夏の雫を集めた、里芋の
透明な葉脈の裏側で
夏風の子が
小さな産声をあげる
まだ、うまく飛べない
棚田の{ルビ畦=あぜ}に沿って
緩やかな曲線を描くと
早苗に浮かぶ蛙が
水かきを ....
夏少年の、硝子の{ルビ背=せな}に
せせらぐ
ピアニシモ
白い{ルビ喉=のど}の、滑るシトラスに
透けてゆく
アダージョ
戸惑う爪先の、細い苦悶
ふるえてゆく
アレグロ
....
ブルーチップの青いリスは
目を離すと、すぐに増殖して
ガマ口をはみ出してしまうから
台紙にきちんと貼りつけなければいけなかった
母は台紙をもらってくれると約束をしたのに
永遠と立ち話をやめや ....
海を見たことがなかった
見え隠れする光
あれがそうだ、と無骨な指で示された海は
たいして青くなかった、が
軽トラックが、ギシギシとカーブを曲がるたび
輝きを探して、車窓にしがみついた
....
大きなガラス扉
日焼けしたブラインド
貸店舗、の白い貼り紙
コンビニになりきれなかった
角の、たなか屋
殺風景な店先のコンクリートには
ただひとつ
小さな郵便ポストが生えたまま
舌 ....
千代紙こうてくれへん?
匂い付きのやつやで。
嗅ぐと、鼻の奥んとこが、ジーンとなんねん。
何や懐かしいこと、思い出せそうで、思いだせへん
あわーい陶酔があんねん。
千代紙には。
何でやろ、 ....
本当はセリカがよかった
が、人気車には、やはり手が届かなくて
中古車屋のおやじに勧められるまま
同じエンジンだというコロナにした
家に帰ってよく見ると
左のドアが少しへこんでいた
―― ....