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散歩より帰りし犬の足を拭く
吾が顔のぞき されるがままに
くちなしの{ルビ香=かおり}ただよう くりやべに
千日紅の赤が寄り添う
無花果が口あけ雨を受く姿勢
姑独り居の狭庭の隅に
家の建つ工事現場の土もらい
それぞれの鉢に土満たしてゆく
人よりもおくれて登る鞍馬寺
熊に注意と立札のあり
足弱き友に ....
子等の留守 語る事なく夫と居て
硝子戸たたく雪を見てゐる
入試終え帰りきし子は降る雪の
中にレコード買ふと出で行く
ミニを着て鏡の前に立ちみれば
膝にかくせぬ年と知らさる
....
走りきて吾が手をとりて飛行機雲
指さす孫は 1才と半
{引用=
(孫=まだものが言えなかった頃)
}
満たされぬ言葉想いて立ちつくす
足元に身をすり寄せる猫
故里のなまりやさしく語る友
友も故里をとく出でしなり
何着ても似合はずなりし我が年を
哀れがりつつせめて紅さす
故里の老 ....