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九月なのに炎天下で
九月なのに濃紺のスーツは汗まみれで
九月なのに就職活動中の女子大生たちによる真昼の行軍が
九月とは無関係に地下鉄の出口から延々と続いている
彼女たちはそれが決まりごとで ....
赤い砂が
点々と道にこぼれていて
導かれるようにそれを辿ると
その先には
ガラスの破片
蝿の群れ
潰れたカラス
目を見開いて直立不動で
何かを大声で叫ぶ
死にかけの女 ....
セブンスター
今夜はもう
誰の書いた詩も読みたくはないんだ
ピース
おれ自身が書いた詩さえも
読む気がしない
これって
どうかしてるかもしれないな
セブ ....
テレビの中では
若手のお笑い芸人どもが
必死になって目立とうとして
大げさなリアクションを
次から次へと連発している
生放送なんだし
いっそのこと
そこで死んだりなんかしたら
もの ....
トミノ、
トミノ、
かわいいトミノ。
おまえの眼玉の裏側の
冷たい炎の燃えさかる
ちいさな地獄の真ん中で、
真っ朱な花がただ一輪
いまゆっくりと綻んだ。
トミノ、
トミノ、
かわい ....
盲目の道化がひとり
ごった返す真昼間の往来を
踊るような足取りで歩いてゆく
それを指差して嘲笑う子どもたち
囃し立てるように
手を叩いて大騒ぎする
皆がそれに気を取られている隙に
....
真夜中に喉が渇いて目が覚めた
暗闇の中をキッチンに向かって
手探りで歩きながら
父と母のことを考えていた
父と母には
そろそろ死んでもらいたい
彼らのことを
とても愛しているから
....
ねぇ、奥さん奥さん、見て、あの窓際の席に座ってる男の人。さっきから独りで喋ってるのよ。「ごめんね、ヨーコ」とか、「おれが悪かった」とかなんとか……なんだか彼女に謝ってるみたいだけど……最初は携帯で喋っ ....