すべてのおすすめ
白い春の夕暮れ
浅い眩暈が意識を通過する
柔らかな距離がゆるやかに傾き
西に沈む誰かの声 遠い声
傍らの抽斗の中で
淡い儀式の記憶が疼く
それはやはりある春の夕暮れの
古い棟のうらさ ....
淡いピンクのチューリップがいけられた
硝子の花瓶のそばに
罅の入った銀色の金属製の心臓が
取り外されて置いてあった
彼はその代わりに
肋骨の中に脈動変光星をひとつ
納めようとしていた
昨 ....
そのはじまりからすでに
鋭く亡びに縁取られているのが夏で
青空と陽射しがどれほどあかるくても
そのあかるささえ不穏なのが夏で
蝉が鳴き騒いでも
祭の喧噪が渦巻いても
濃密な静寂が深々と ....
桃いろをうつす銀 青をうつす銀
たちどころにいりまじり 夢心地
息づく闇の何処かで
黒髪の 解かれる気配
ほのかに 立ちまようのは
知らない花の香と
やわらかな水の ....