あんたが生きたかった毎日を
死にたい死にたい言うて生きてる人もいて
そんな人と命の交換ができたら
どんなにええんやろうと思うよ
うちが生きることしかできひんなったんは
あんたが ....
五月のかぜを渡るとき
遠いひかりは
よみがえる
あおたちの名の
車輪のなかで
一斉に
いま
みどりはかえる
日にかわる
かじかむばかりの
指だったのに
いつ ....
責められた
ぼくは何も
言えないよ
最初にであったのは
いつだったのだろう
隣りにいた気がする
気付いた瞬間の反応 ....
夕暮れ色の飛行船、
たくさん空に浮かんでいたけれど
空と一緒の色だったので
誰にも気付かれないままでした。
*
毎朝、起きたらすぐに顔を洗います。
....
なんてざまだい
どれだけ偉そうにしたってどうしようもないことはどうしようもないのさ
おどおどしやがって
みっともない
何を額に冷や汗たらして、おいらは馬鹿かい
情けない
何にも出来やし ....
夏の夜空はアンタレス 赤く輝いてる
思い出すのは あんたです さそり座の一等星
浴衣姿のべっぴんさんが金魚バチを眺めてる
部屋の隅では黒猫が泳ぐ金魚を狙 ....
芸術的だ
なにもかも芸術的すぎて
私は、おもちゃになっちまったみたい
この地球の上に
宇宙よりも遥か上に
人間よりも賢い何かがいてさ
見えない糸で
全てを操っているのかもな
人間の心まで操ることがで ....
あんたの部屋に入ったら
嗅いだこともない香りが鼻についた
こんなんあんたがつけるような匂いやない
どこぞの女が残した匂いや
せやけど、ええ匂い
あんたに抱かれてるとき
....
あしたは
会社にあたらしく導入するシステムの
最終の打ち合わせだった
今夜は
行政がしている工業会の会合だった
おとといは
突然のトラブルで
それに対処する資 ....
最悪やなじぶん
才覚やなきみ
性格やなじぶん
正確やなきみ
どんだけ追いかけはしっても
おいつかないなぁ
きみ
だんごむしみたいに
マイペース
....
水の上に
ひとひら落ちた
花びらのように
月が
夕方の空に
浮かんでいる
流れているのは
雲だろうか
月だろうか
それとも
この私だろうか
何を拾っているの
幼いほうの少年が訊ねると
人の骨を拾ってる
と半ズボンの少年は答えた
初夏の海辺を二人は歩いていた
緑色の半ズボンを履いた少年は
白い砕片だけを選んで拾っていた
― ....
背中が守られている
抱擁でなく
囁きでなく
いつも見えない後ろが
守られて温かい
そんな気がしている
口元が護られている
くちづけでなく
言い付けでなく
冷たい言葉が洩れない ....
五月晴れの匂う
青い空の下
潤いの粒がキラキラ光る
生き生きとした緑の葉っぱたちが
風に揺られて
カサカサと何かお喋りをしていた
何だろうと聞き耳を立てても
わたしは人間なので
うまく ....
月光をすくい、すくって
髪を洗い
ほっそり
とうめいな櫛を曳く
鎮まってゆく肌、肌に
しみこんでゆく
流麗な調べ
{引用=
呑まれても
ひとひら
抱きしめても
ひとひら
....
窓際に並べた氷がとけていくのを眺めていた
わたし以外に誰もいない
広い部屋の中で
ひざをかかえるように小さくなって
息を潜めて
日が落ちて暗くなっていく
とけた雫か
わたしを伝って流 ....
地下鉄はきらいだ
そとは暗い
こんな朝に
あいさつを
したいのに
*
このうすいからだの皮膚に
染みだしたような
うわずみのような感情が潤んで
それを掬おう ....
蜘蛛の巣──繊細に張りめぐらせたレースの装飾
怖いもの知らずの蝶が飛び込んで
ゆれる ゆれる
蝶の羽も絡まる糸も光っている
ゆるやかな午後の陽に なお光を保ち
メッキで金色にぬられたボタンが
雪の中に落ちていた
ボタンの周囲には
動物の足跡が転がっていて
灰色に溶けた雪が
鉄を鳴らす音で雪自身を撹拌していた高音も重低音も抱きしめながら駆け抜けて ....
道に数々の華が咲いて
水たまりに輪が広がってゆく
外に降る雨は
私の{ルビ心=なか}にも しとしと降る
そんな時は 心も身体も凍える
雨 雨 雨・・ ....
瞬き
シャッター音
フラッシュ
隣できっと笑っている
これでずっと幸せな一枚
暗室
光が漏れぬようにと
時代遅れなデジタル処理
影まで
きっと綺麗
ずるいぐらいに
大好き
抱き ....
.
笑う事をやめた月
わたしはそれを
悲しみと呼んだ
いつからかわたしたちは
色を忘れてしまい
光を失ったまま
月と一緒に
やせほそっていく
ここは
あの人のいない ....
本をひらけば詩人が語り出し
テレビの中では
ミュージシャンが愛をうたう
みんながぼくの中に
理想や空想をむやみに植えていく
まだ種であるぼくは
なに色にでも染まるよ
アサガオでもねむ ....
夢をみてた
とおい世界の
雨の日
夕暮れは
どこも同じように訪れるのに
朝が
朝の闇が
いつまでもおわらなかった
夢は
おわるまでおわらなくて
ぼくはいつまでも
朝の闇に ....
僕は涙の意味を知らない
それは
僕が犬だから
寒い夜を
独り迎えても
僕は涙を流さない
僕は悲しみを知らない
それは
僕が犬だから
満たされてゆく
....
書けなかった詩の断片が
ちぎれた草になって
風に舞っている
いのちは永すぎる未完
死してなお
始まりにさえたどりつけない 未完
私の夜はいつもと同じ旋律を
内側の街路にまきち ....
アザラシが
浜辺を 這っている
私に 声をかけてきた
「目の周りに砂がまとわり付いて鬱陶しいので洗ってくださいな」
快諾
ゴシゴシ
ゴシゴシ洗って
ザンブラ
ザンブラ ....
最近《なんとなく猫》がよくウチに来る
なんとなく猫は一匹ではなくて
その日によって違う
茶色もいれば黒も白もいるし
大きいのもいればまだ子猫なのもいる
なんとなく猫は何となくウチ ....
北の郷にも
春は来て
紅やら白やら
梅が咲きました
梅の香とは
どんなものかと
高くもない鼻を
差し出してみれば
黄色に染まった鼻を見て
笑う君
ほころぶ梅に
負けず劣らず
頬そめ笑み咲き誇る
....
私は酔ふ
私は私を酔ふ
私は月を酔ふ
猫は私を酔ふ
私は本を酔ふ
夜は私を酔ふ
私は恋を酔ふ
あなたは私を酔ふ
私は酔ひそのものであり
酔ひは私そのものであり
夢は私を ....
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