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まだ夜の明けないころ
街は少し壊れた
機械の匂いがする
昨夜からの断続的に降る雨が
いたるところ電柱にも
あたっている
いくつかの窓の中には
ささやかな抵抗と
使い古された ....
 
 
あまりに静かなので
どうしたものか
耳を澄ますと自分が
階段になっていることがわかる
踊り場には
温かい春の光が落ちて
多分そのあたりに
思い出はあるのかもしれない
遠くで ....
行方不明の洗濯機が二番線のホームで脱水していた


振り返ると家電フロアーの主任が裏口でまだ手を振ってる


今日もレンジの平和を願う君が両手でものを温めている


「いつも利用する ....
犬が休んでる
まるで僕のように

背筋が足りない
何かを継ぎたして
少しずつ毎日の
起立がある

どうしてだろう
お父さんになってしまうのは
瞬間は確かにあるのに
どんなに積み上 ....
 
 
寝台車の匂いが
掌にする
腕はまだ
距離を測っている
残されたものを集めると
骨の近く
きしきしして
初めて靴を買ってもらったときの
恥ずかしい喜びしか、もう
いらない
 ....
ポケットが汚れ始めている
待合室は朝から眠たい
何かの整備工の人が
口を動かしている
語りかけるように
沈黙を選ぶ言葉があった
目を閉じようとすると
少しばらばらになる
水が優しい濃度 ....
 
 
やさしみの
さかなが
しずかに
みなもをおよぐ

やわらかな
さざなみは
しあわせなきおくを
みたそうとする

やきつくされたあさ
さいれんがなりひびく
しきはまた ....
はさみ
兵藤ゆきより
大きなはさみを
買う
ポケットには入らないので
背負って
帰る
兵藤ゆきですら
背負ったことないのに
道が市街地に向かって
少し車で混んでる
子供の頃
兵 ....
51

手に速度が馴染む
坂道は距離のように続き
俯瞰する
鶏頭に良く似た形の湾に
昨晩からの雪が落ちている
ポケットに手をつっこめば
速度はあふれ出し
また新たな速度が生成され ....
41

市民会館の大ホールを
ゼリーは満たしていた
屋外では雨が
土埃の匂いを立てている
観客の思い浮かべる風景は
みな違っていたが
必ずそれはいつか
海へとつながっていた


 ....
 
 
31

世界が坂道と衝突する
アゲハチョウの羽が
誰かの空砲になって響く

内海に
大量のデッキブラシが
投棄された夏

遠近法のすべてを燃やして
子等は走る

 ....
21

カレンダーを見ると
夏の途中だった
日付は海で満たされていた
子供だろうか
小さな鮫が落ちて
少し跳ねた
恐くないように
拾って元に戻した



22

フライパ ....
11

ジャングルジムの上で
傘の脱皮を手伝う

またやってくる
次、のために

海水浴の帰り道
人の肌が一様に湿っている



12

ピアノを弾くと
鍵盤がしっとり ....
「序詞」

ゆりかごの中で
小さな戦があった

理不尽な理由とプラントが
長い海岸線を覆いつくした

けたたましくサイレンが鳴り響き

その海から人は
眠りにつくだろう
 
 ....
雨やみて雲雀の飛んだ水たまり

何を見て驚いたのか鯉のぼり

紫陽花がたくさんのいろ人みたい

桃をむく香りと北へ寝台車

空目指し向日葵たちが背比べ

アリが来てわたしの足を ....
 
バスに乗る
名前だけが剥がれていく
何かの間違い、というより
むしろ略式でも正しいことであるかのように
良かった、わたしたちは
バスに乗られることがなくて

席に座り
バスの一番 ....
 
 
水底に
動物園はあった
かつての
檻や
岩山を
そのままにして
いくつかの動物の名は
まだ読めたけれど
散り散りの記憶のように
意味を残してなかった
あなたは月に一度の ....
 
小さなバス停を飼った
小さい割にはよく食べた
それでも店員の言ったとおり
あまり大きくはならなかった
一日に数本小さなバスが停まった
行先はどこでもよかった
夜、明かりを消して床に着 ....
つぶれたステーキハウスの駐車場に
制服を着た男の子と母親らしき人が立っていた
二人でじゃんけん遊びをしていた
昨日も同じところにいるのをバスから見た
違う遊びを楽しそうにしていた
毎日あ ....
 
たくさんの鳥

そして少しの懐かしい人を乗せ
他に何も無いような空港から
飛行機は飛び去って行った

覚えていることと
忘れていないことは
常に等量ではない

夏の敷石の上で ....
書庫の扉を開ける
水の中になってる
たぶん海なのだと思う
昨日まで資料や本の類だったものが
魚みたいに泳ぎ回っている
手を伸ばして一冊つかまえる
ページを開くようにお腹を指で裂くと
文字 ....
一番線のホームを
羊の群れが通過していく
海の近くに
美味しい牧草地があるのだ
その後を
羊飼いの少年が
列車でゆっくりと追う

夕暮れ近くになると
列車に羊を乗せて
牧舎へと帰る ....
 
採石場の跡地を
ヒトコブラクダが
ゆっくり歩く
かわいそうな気がして
コブをもうひとつ
描き足してあげた
耳の奥を覗くと
夜が明けるところだったので
慌てて帳面を閉じた
 
  タクシーに乗って
  道を歩く

こんな時間までお仕事ですか?
運転手が尋ねるので
ええ、まあ
と答える
今日は暑かったですね
暑かったですね

  本当に暑かったのだろうか
 ....
お父さんが紙をつくってる
つくった紙を僕が並べていく
それがお父さんの廊下
なんだか淋しいところだね、と言うと
お父さんは土を持ってくる
足りないので
何回かに分けて持ってくる
だからお ....
帰宅する途中
コーンスープの匂いがする
家の前を通りかかる
中から男女の諍いの声が聞こえてくる
少年が一人
玄関の外に立っている
ドアにもたれてただうつむいている
どうかあの少年が
私 ....
寒い、と言うと
あなたはわたしの肩に
そっと
うなぎをかけてくれた
 
ぬるぬるして
うなぎも鳴くのだと
初めて知った
うなぎのさばき方を
教わったのも初めて
 
大人の恋は
 ....
道端に表札が突っ立っていた
YAMASITA、とだけあった
YAMASITAさんとはぐれて
困っているようだった
家までの道順を教えてあげたが
わかりにくいところもあったので
いっしょに行 ....
朝、自転車に侵入された
ちょうど起きようとしているところだった
カロロと卑猥なペダルの音を耳元でさせ
とても恥ずかしかったが
俺は初春のように勃ち
自転車は器用に車輪をたたみ侵入してきたのだ ....
男は体育館の裏に
女の歳の数だけ
星を埋めた

女は男のために残しておいた
夏の一番柔らかいところを
まだ寄木細工の箱にしまってある

詐欺師の家では
換気扇がゆっくりと壊れて
ま ....
ピクルスさんのたもつさんおすすめリスト(90)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
拝啓、君は元気ですか- たもつ自由詩36*07-10-11
返事- たもつ自由詩28*07-10-3
家電- たもつ短歌2107-9-22
休息- たもつ自由詩507-9-18
寝台車- たもつ自由詩1807-9-12
その海から(理由)- たもつ自由詩1607-9-2
その海から(やさしみ)- たもつ自由詩40*07-8-28
はさみ- たもつ自由詩707-8-24
その海から(51〜60)- たもつ自由詩1307-8-18
「その海から」(41〜50)- たもつ自由詩1407-8-4
「その海から」(31〜40)- たもつ自由詩1107-7-27
「その海から」(21〜30)- たもつ自由詩20+*07-7-23
「その海から」(11〜20)- たもつ自由詩2207-7-20
詩群「その海から」(01〜10)- たもつ自由詩31*07-7-17
雑季- たもつ俳句13*07-7-16
ひきつづき- たもつ自由詩1807-7-12
動物園- たもつ自由詩2907-7-9
- たもつ自由詩1307-7-3
じゃんけん- たもつ自由詩707-6-29
綴じ代- たもつ自由詩2607-6-21
書庫中- たもつ自由詩3407-6-19
行程- たもつ自由詩1907-6-11
- たもつ自由詩2407-6-10
- たもつ自由詩1607-6-6
スケッチ- たもつ自由詩1207-6-3
粘度- たもつ自由詩1307-6-2
大人の恋- たもつ自由詩23+*07-5-29
言い訳- たもつ自由詩1007-5-27
侵入- たもつ自由詩1407-5-23
あしたのわすれもの- たもつ自由詩907-5-20

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