いつのことでしたか
忘れてしまいましたが
絶句したその無言の先に
あの日がちらついていたのは、確かです
日溜りの微笑む
静けさのなか
涙は花ひそめ
無表情に泣いていました
それはか ....
ふたりは出会う
雛連れの野鴨憩う山郷の水面は茜に染まり
ほら手をつなご
これから暫くふたりして
同じ水脈を流れ行くのだから
ふたりのささ舟は
透き通る冬の気象 ....
距離にたたずむ私の{ルビ首=こうべ}は
ついに飛び去ることはなく
天と地を結び
{ルビ収斂=しゅうれん}を{ルビ咽下=えんげ}している
星々がめぐり連なる
境界
ひとり立ち姿
死んでいるように
つぶやく灰の後ろに映る
星の塔が旋回してから
七色のアーチをくぐり
一瞬する視界の腐蝕する太陽へと身を焦がす
失えるものなら失ってみなさいな
零の ....
彩るうたを{ルビ口遊=くちずさ}む
こんな命があるかしら
{ルビ水=み}の{ルビ面=も}に蝶が浮いている
ちらともせずに浮いている
こんな命があるかしら
あすを知りえず浮いている
....
月が冴えわたる冬の夜
田園の雪の波が
月光に青白くきらめいて
をんなの肌に深く映ります
あぁしんど
酔い醒ましにちょいと表に出てきたけれど
伏し目がちな月影は
わかばにマッチをすっていま ....
ちろちろと燃える黒い火の
生ぬるさに黒く嘔吐する
塵灰と火種に
胸は重く焦れて
真空を穿つと
はらはらと零れる灰の
薄く瞬く
かすかな衝動を反射して
静止する
膨張の瞳の奥に
光は ....
枯れ落ちる
葉の上に声を震わせて
蒸散することのない深さ
やがて機能しなくなるであろう涙の透けた色に眩暈して
ああ雨の夜の崩れゆく{ルビ慟哭=どうこく}
スローモーションの叫ぶ先に
....
鏡
鏡に沈む
愁いは波紋となって
私を揺らす
深さの計り知れない底から
ひきあげて
ひきあげて起し
唇に秘密を添えて
黒髪を噛み薄ら笑う
見苦しくはないかと
歪なのは私 ....
生きていることの生きていくことの貪欲さを君はおしえてくれた。
真夜中におみずをちゃぷちゃぷのんだね いっかいだけ わたしの てに 身体を もたせかけてくれたね。きみに やれたことは なにもないけどき ....
末端の夜で
日常にある
輪郭のない
さびしさを
手繰り寄せる
その顔は
か細くゆがみ
青白い灯火に
照らされて{ルビ寝=い}
さまざまな角度で欠けている
ほおいほおい
呼 ....
遠のいていく
夢の終りの予感
連続する瞬間の
寓話的イノセンス
遠のいていくわ
雨
音楽的無添加な透過
指の形良く
挟んだ煙草と
くゆる
正視の冷却
覚めてゆく未知数
....
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(42)
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