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二号館には
幽霊がいる


獅子のような尾を持った犬が
檻の内側から近づいてくる
わたしが檻の中にいるような
錯覚が怖くて目を逸らした

左側の夕焼けが
セキレイの羽音を焼き切る頃 ....
{引用=

『たん純にさ、

 考えすぎなのかもよ。

 しん呼きゅうしてさ、

 だれかのうでに甘えてみるのも、

 たまにはいいんじゃないの?


 あんがい近いところに ....
振り返ったら
影法師しか
あなたの名残は落ちていなかった


雷雨が滑りこむ昼下がり

四角い白い箱の中
些細なことで
笑う
二匹の赤い鈴
あの日
パスタの蝶々結びが
{ ....
沙漠から取り寄せた砂を
僕たちは浴槽に撒く

言葉に塗布された意味を
一つずつ丁寧に
酷くゆっくりと落としながら
シャボン玉を
空間を埋めるために飛ばす

乾いた砂に埋もれた言葉を
 ....
わたしはうさぎになって
寂しさを抱いて、眠った
よく晴れた朝を迎えて
腫れぼったい瞼に苦笑いを零す
鏡に映る姿は
うさぎというより
醜い何かで
涙が眼球を傷つけていく
ことん、と音がし ....
眼鏡を外し
全ての輪郭を奪う
青色の歯ブラシも赤橙色のオイル瓶も
銀色の蛇口も
緩やかに溶け出して
水の流れに混ざり

排水溝が渦を創り始める
わたしはその様を
掌に縋る抵抗で知る
 ....
{引用=
いいえ、あれは太陽ではなく
古びたシャンデリアの明かり


起立、
今日という善き日から逃げ出して
梟の首を廻す
大海原ではマストが立ち始め
皆が合図を待っている
黒い波 ....
父がくれたブタさん貯金箱に
思い出を詰めていく

新しい家に
わたしの部屋はない
巣立つ準備を婉曲に促されて
寂しさの余白が
無愛想なブロック塀で隠されていく
その白色は
この手で汚 ....
たくさんの雨が
パンドラの筺の、その奥底から降ったような夜
咳が止まらなくて
眠れなくて

今朝方ツクシが顔を出し始めました
と、一筆箋に書き始める

生物表記には片仮名じゃないと落ち ....
うにゃーとか
ごろにゃんとかで生きてみたい
そう云うあなたはナマケモノ



ハイエナが
悪者だなんて酷すぎます
一生懸命生きてるんです



ラブレター食べさせられても困りま ....
夜、
左の肩甲骨に
小さな傷が生まれた
羽根でも生えてくるのなら
わたしはきっと毟り取ろう

朝、
柔らかい霧雨が降ってきて
わたしは傘を捨てた
強く責めるなら抵抗もしたけれど

 ....
母は優しい
兄貴より遥かに出来が悪い俺は、
絵が好きで詩が好きで、なんだかいろいろ中途半端で、
でも、
生まれてきてくれて本当に嬉しいのだと
臆面もなく言うから
俺はいつもあなたの目を真っ ....
名前はやはり記号なのでしょう
存在を証明する 一番純粋な記号

大人に近づくにつれて
何となく 自分の名前さえ空ろになって
記号なのだと 証明なのだと、
眠る前に言い聞かすのです
そうし ....
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