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忘れられた言葉
終わりもみつけられずに
さまよったまま
静かに痛んでゆく紙のうえで
呼吸をつづけている
あのひとの、
いつかひらめいた
あのひと ....
君なら
しっているよね
赤い鳥居をくぐるごとに
空気
ひんやりしてゆくこと
しっているよね
お城の石垣にのぼる理由
そこから落ちるときの
一瞬の長さ
しっているよね
....
もう、すっかり
昨日とちがう
風
まだ背中が熱いのに
太鼓の音が耳に
こびりついているのに
黄色い法被の色が
ちかちかするのに
そんなふうに
頬を冷たく
なぜてゆかない ....
私たちが校舎で出会うのは
おばけなんかじゃない
それは
だれかの通り過ぎていったあと
だれかの
いちばん子供だったときの
いちばん光に満ちた
いちばん軽やかな
いちばん無防備な歩み
....
わたしは生まれてはじめて
暗い海の上を帰ってきた
海は、波は、そのたえまないざわめきは
常に舟をとりかこみ
あたりまえのようでありながら
のぞきこむと
そのたびに
あまりにも
おそろし ....