美砂

君なら
しっているよね

赤い鳥居をくぐるごとに
空気
ひんやりしてゆくこと
しっているよね

お城の石垣にのぼる理由
そこから落ちるときの
一瞬の長さ
しっているよね


わたしがズルしたから
わたしの手の平を
鉛筆で思い切り突き刺した


君はもう
わたしのそばにいるわけじゃない
大人になって家庭をもって
働いて、土日もバイトいれて
慌ただしい都会のさなかで
通勤用の自転車盗まれたりして

君、君に刺された
芯のあとがまだ皮膚に
透けてみえて
わたしは誇りのように
だれにでも
みせびらかしてしまうの
まっすぐな君が
この傷跡に
ひそんでいるようで
ながめては
愛でる







自由詩Copyright 美砂 2007-08-27 22:22:37
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