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教科書だけを頼って
知らず知らず
顔を失っていく
巨塔にエスカレーターで
上っていくの
顔はわからない
でも名刺はあるの
肩書きの交差点
顔なしたちが渡り歩く
心配はないの
皆同じ ....
石が焼ける臭いがした
八月
原爆ドームや資料館
鼓動が早くなる
平和の鐘を鳴らすと
ずっと胸に響く
夕暮れドームの見える河原で
言葉にならない気持ちを
何度も何度も巡らせていた
薄暗 ....
藍に満ちた
心のグラデーション
だんだん濃くなってゆく
晩御飯の残り
冷めたまま出した
いつもと違う気配
神経張り巡らせて探す
藍色の夜更け
背中を向けながら
じっと見つめて ....
熱せられた窓をガラッと開けた
外気がもわっとなだれ込む
蝉の声が木々に繁っている
グラスに入れた氷がカランと崩れる
エアコンの呼吸音が大きくなった
独り泣きたい夜
傍にいるのは鴉だけ
思い出すのは
存在の温もり
差し伸べてくれた手
何も返すことなく
振り切ってしまった
あれから遠くまで来た
塗り替えることのできない日々 ....
帯の背中に団扇を挿して
下駄を鳴らす
屋台が並ぶ道は
人が溢れて賑やか
すみません、
ぶつかった人を見上げて
耳の先まで熱くなる
先輩、
よぉ、と言って
和かな所作で ....