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誰かと笑い転げる日々を過ごす私
仮面を一枚{ルビ捲=めく}れば
誰の手も触れ得ぬ「もう一人の私」がいる
あたりまえの幸福は
いつも手の届く場所にあり
浜辺へ下りる石段にぽつん ....
開店時刻の前
Cafeのマスターは
カウンターでワイングラスを拭きながら
時々壁に掛けられた一枚の水彩画を見ては
遠い昔の旅の風景を歩く
*
セーヌ川は静かに流れている ....
一月前
長い間認知症デイサービスに通っていた
雷造さんが88歳で天に召された
だんだん体が動かなくなり
だんだん独り暗い部屋に置かれる時間が多くなり
ある日ベッドで瞳を閉じて横 ....
一
昼休みの男子休憩室の扉を開くと
新婚三ヶ月のM君の後ろ姿は正座して
愛妻弁当を黙々と食べていた
「 おいしいかい?
結婚してみて、どうよ・・・? 」
と買ってきたコンビ ....
仕事帰りにくたびれて
重い足どりで歩いていると
駅ビル内のケーキ屋に
女がひとり
微笑みを浮かべて立っていた
ガラスケース越しに
ふと{ルビ眺=なが}めるささやかな幸福
その{ ....