空っぽ だよね
歌うために

まぶしい緑の
そのはざ間から
降り注ぐ 生きる意味よ
せみの命よ

蜜を吸う
歌うために

その
けたたましい鳴き声の
中にまぎれて

誰か ....
 *灯台

   かすかにまだ
   光っている
   間違えたままの、
   やさしい思い出
   わたしの幸福な思い違いを
   あなたは
   そのままにしてしまったから
 ....
早朝
周囲があまり静かなので
ちゃんと他の人が生きているかどうか
確かめるために
始発の電車を見に行く

路上に
昨晩お酒をのみすぎた人が
うつ伏せに倒れている
マネキンみたいだ ....
寒かったから
多分冬だった
カレンダーの数字が青かったから
きっと土曜日だったろう

その日わたしは
当時勤めていた会社のチラシを
マンションやアパートのポストに挟み込む
所謂ポスティ ....
私は売る
大切なもの
私の
私だけの

世界は
最初から決まっている
レアメタル
危険水位

少ないもの
限りあるものに
価値が
人がひれ伏すのなら

私には
あるじゃ ....
わたしの棲む場所を流れる川に
水はない

誰かが
橋の上から捨てた言葉を
灰色のさかながついばんでいる


     *


夏の暑い日、わたしは
忘れてしまいたい過去の過ちと ....
{引用=
(光を常に浴びて変われ 
  きみという緑の輝きの)

(そのうすい葉脈のすみずみまで満たせ 
  それがたとえ何かを)


おぼろなる
季節は過ぎて

五月
つつ ....
いくつもの読点で、あなたを区切って
体内へと運ぶ


元のカタチを、思いだすこともできないくらいに
細切れに、咀嚼していく
小指の爪から、過日の砂が落ちて
潮の匂いがした


 ....
じょうずに結えない髪の、かきわけたその奥に、
海が広がっている
黒い底は伸びて、光を吸いこんでいる
あなたがその闇へと、手をのばしては
救おうとする影を
あてずっぽうに踏んで、遊ぶ


 ....
高速道路を二〇倍速でガン見する
引きずられた眼球の中でミトコンドリアが舞っている
土人たちを夢想して浮かぶ偵察衛星‐姉
荒ぶる箒を止められない苔の虚ろに耐えて詠む誰か坊主を燃やして。
雑踏で喫煙をしていると
衛生的な感じの服を着て
酸素マスクを付けた人たちが
群れを成してやって来て
あなたはどうして煙草を吸うのか
と言う
くちごもっていると
健康の為に今すぐにやめ ....
枝分かれしていく 夜の
長く、しなやかな腕は
わたしを覆いながら それぞれ
しだいにたわんで その先端からやがて
着地し、朝に触れる



不必要なほどに震える あなたの
声と、指先 ....
思い出を
重ね
重ねて

私たちはつながっていく

ことばと
身体

私たちは許される


強く生きる
その一歩に

あなたを甘く
重ねる


ミルフィーユ
フ ....
ガタピシのワゴン車でぶっ飛ばす
モップの台車にバケツたちへ
さっきからずっと唸っている
スピーカーから流れてくる
ぼやけたこうだくみの声は
もう一生分聞いた


螺旋状の道を青白い光り ....
  やさしいのか
  やさしくないのか
  雨の日のあなた


  約束の時間に
  遅れたわたしに
  何も言わないので
  カフェオレを頼んだきり
  わたしも黙って俯いてい ....
 


(もう来ない、幻の一秒。)



まるで消えたりない愛のようね、
あたしとあなた。


ふたりの距離をなにで縮めよう、
永遠のいっしゅんをあなたとかいまみよう。 ....
朝日は頬をたたくように照りつける。
ぐしゃぐしゃの髪をさわると、
よく頭を撫でてくれたあなたが想われる。
素敵な朝は、さみしい気持ちでみたされる。

顔を洗って、太陽に引っ張られた頬 ....
さよなら、さよなら、


記憶を解き放って 
遠ざかる夏の
四角く切り取られた 空


枠からはみだした場所では
かなしみによく似た顔の
ぼくたちが
今も、酸欠になっている

 ....
  君を愛する
  と告げるとき
  その言葉にわずかに
  哀願の響きが混じった



  それを嫌ってか
  いつからかその言葉を
  告げなくなった恋人に
  それでも愛して ....
音楽室の
Yちゃんの真新しい椅子の後ろに
Yちゃんの埃を被った椅子
その後ろに
Yちゃんの足が折れた椅子
その後ろに
ばらばらになった
Yちゃんの椅子
その向こうは
床が崩れて
そ ....
夜がほの蒼いのは
雪が舞っているから

すこし窓を開けて
吐息が白く夜気に放たれ
雪と交わるのをながめる

手を延ばせば舞いおりて
けれどその冷たさは
触れるまもなく掌に溶け ....
うすずみ色の空はひくく 
ピアノ線を地におろし 
哀しみという歌をかなでる 
さえずる鳥さえもいない 

こんな午後は 
暴かれてしまうことをおそれて 
いくどもたしかめた肌の  ....
  やさしさと、            
  いつも呼んでいた
  傷つきやすいその心を
  やさしさだと、
  呼んでいたあなたの
  傷つきやすい心


  秋の終わりの
  ....
長い夜の
ゆめとうつつの狭間で
わたしたちは
何度もたしかめあって
疲れはてて
耳元で
あなたの鼓動を聴いて
おなじ速さで脈打つ

長い夜だから
そんな時間がふえて
すこし持 ....
秋の胡蝶の薄い羽は 
微かな風にうち震え 
先細る命に慄く 

あえかな花の行く末は 
胸騒ぎがするから 
花占いの刑に処す

 命あるものの極みは地に堕ちて 
  蠢くものの餌食と ....
脳をまさぐると
まるでさっきまで
そこに在ったかのように
断片が輝きを放っていた

思い起こす
笑顔のような表情
涙声と数々の溜息

隙間を広げた綻びから
記憶が流れ去っていく
 ....
いまは更地になっている
高校の前から自転車で少しいったところの
あの荒廃した土地には
昔ジャスコが建っていた
しみったれた汚い店だったが
中にはフードコートもスーパーも
一応あ ....
季節はもう冬支度なのに
たんぽぽの綿毛になるんだと
あなたは言った
過ぎ去った日々を惜しむかのように
ひとびとは
大きな樅の木の下に集いだす
そんな季節に
たんぽぽの綿毛になるんだと
 ....
錯綜している視神経の
からまりあった編み目の間に
ちいさい魚が
かかっている

つめたいつめで
そっとつまんで
涙腺の中へ
放してやろう
水草があれば尚いいが
涙腺の底には
 ....
受験を控えた少女が
堪えきれずに道端で
脱皮を始めた

その横をダックス・フントが通る
かれは短足を気にして
朝夕ぶら下がり健康器を
使っているのだけど
伸びてゆくのはもちろん
足じ ....
和歌こゆみさんのおすすめリスト(153)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
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