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まめクジラの水槽には
売約済みの札が貼られていた
まだ幼いのか
さざ波を飲み込んだり
小さな噴水をあげては
くるくる浮き沈み
はしゃいでいる
こっそり水槽に指を垂らすと
あたたかい ....
{引用= あのひとの記憶がしずむ海は、いつしか防砂林で見えなくなった
越えられない高さに、すこし安心した}
砂が、降って
深く深く沈んで 底まで
皮膚 ....
破って、あげるよ。
きみのたまごのいいとこ、みたいなその声で、
わたしは目隠しされているのです。日々、わた
しはわたしが嫌いで、でもきみのことは好きで
わたしは目隠しされているのです。何も ....
赤ちゃんが乗っています
世間でステッカーがはやりはじめると
和泉町3丁目にある零細ステッカー会社の社長はへそまがりだから
赤ちゃんだけ特別扱いするのはおかしい と言い出し
次のような亜種をどん ....
わたしはこれから あなたに
あ行の言葉ばかり伝えようかと思います
ひどいことを言ったわたしに
あなたは 笑いながら電話をくれましたね
遠いところにいるあなただからこそ
わたしは、少しでも ....
「す」よ、住め
「や」よ、住め
す すめ、も や すめ、も
あたたかし。
「す」よ、澄め
「や」よ、澄め
す すめ、も や すめ、も
....
フリマの一番隅の方で
いなくなったままの父が
お店を出していた
犬がいっしょにいた
名前をペロといった
父が好んでつけそうな名だった
お店には小さな靴が一足
子供のころ私が履いて ....
錆びついた鎖
軋みながら揺れる
勢いをつける度
鉄が擦れる音が響く
繰り返し繰り返し
同じ早さ 同じ速さ
変わらない風景
足場を失った大地
ぼやけた地平線
茜に染まる街路樹
....
学校は早退届がないと帰れないらしい
鋭い目
眼鏡の奥で、光っていた
あたしは結局
学校から何時までたっても出られないらしい
身体は毎日帰る
でも心は
毎日置き去り
いつでも、い ....
視線をゆきます。
ひっそりとした
鋭角な色のない
告白にも似た存在の道
とぎすまされた意志の果てには重く輝く種子が宿る
涙で
洗われた深い瞳
そこに秘密を映す
答のない ....
葉擦れの赤錆は
はじめは
軽い混入だった
冷たい赤い陰影を増してゆくのは
葉擦れの色として微かに現れた感情の
冷たいことを、赤いことを
葉が何度も抱擁するからだ
それでも ....
「幸せな夢を見たわ。それは、とてもとても幸せな夢」
幸せな、夢よ。
私は何もない世界でたった独りぼっち。
何かを叫んでも声にならない。だって訴えかける人がいないもの。
耳をすましても何 ....
目に見えない時を読めるようになったのは
あのひとと次の約束をするためだった
等間隔にきざまれた目もりを
瞬間の目印にして
大きな流れの中でも
わたしたちがまた、手をとりあえるよう ....
ストックした一限は賞味期限切れで
難しい顔でぼくは懐柔された
いつだって子供じみたきっかけに
チープなカバーをかけてるだけ
ふやけた愛とかくれんぼするたび
数えるのをやめようとおもうのに
シチューに ....
線路脇に建つ家に生まれて
ずいぶんと長い間 そこで暮らしたせいか
今でも 5分おきに
からだを揺らしてしまう
そうやって揺れているうちに
いつしか わたしは
窓ガラスの
3メート ....
贅肉のついた比喩を乗りこなして
ぼくの頭は蛍光灯に刺された
きみをミリ単位では計算できない今宵
骨に染み付いたほほえみ
知り合いもしくは友人らしきひとに
強要される愛想なんて5円くらいか ....
メールでは返信を促しているようで
そんなことを期待しない今日の私は
便箋に走らせてみようと思うのです
書き出しは、季節のことや天気のこと
やわらかに二人がつながっている
なんてことを ....
改札口にて
お待ち申し上げております
行き先を
詮索したりはいたしません
どうぞ
ご安心を
あなたがここを
通過してゆく事実のみ
確かめさせて頂きたいのです ....
この部屋の中心はどこだろう、
その質問も今はもう
何の意味も無い、
答えを知っても
何も変わらない
そんな現実のほうを僕は
憎んでいたのかもしれない。
例えば川沿いの道の
小石を手 ....
さかさまつげ と診断され
父に手をつないでもらって
眼科に通って いた頃
診察してくださった先生は
遠くをみつめなさい と言った
遠くの山の緑 遠くの景色を
とても 眼にいいか ....
1
あのお姫さまみたいにうそぶくあなたのその声の中では
死んでしまった方が、良いのですか
初めてそんなことを思いながら
今日もピンを刺します
このピンでは、手のひらを
1センチだけ ....