囓る
足の指を囓る
囓る
猫の額を囓る
囓る
柱の傷を囓る
囓る
カレンダーの空白を囓る
囓る
固まった真実の躯を囓る
囓る
惚けたふりをする耳を囓る
囓る
駅のホー ....
七月の雨、
アルバイトの休日、
自らの髪をかきあげる。
爪から指の間に、流れる。
部屋には、青い光の点滅がある。
わずかに開けた窓からは、水の音がする。
身体を曲げて、寝返りをうつ。
手 ....
ねぇねぇ 今すぐ夜空をみあげてごらん!!!!
すごく すごく 月がきれいだよ!!!
すごく すごく 大好きなんだ
ねぇねぇ 今すぐ夜空をみあげてごらん!!!
ただの丸なのに すごくすごく美しい ....
全力で君のことが好きでした
全力で君の笑顔が好きでした
全力で君の真っ直ぐな瞳が好きでした
全力で君の書く字が好きでした
だから
全力で君を笑わせようと思いました
全力で君との時間を過ごし ....
生きるために必要なものは、多すぎる。
死ぬために必要なものは、もっと多すぎる。
初めて
彼女と手をつないだ日は
心も繋がったように思えた
それがこの上なく幸せに思えた
それだけで幸せだと思えた
モノを置かないでください
と張り紙のあるところに
モノを置いた
そんな些細なことがきっかけで
そんな些細なことの積み重ねだったのだろう
「いつもの」
そう修飾された朝は
あっ ....
バスの回数券を一枚ずつ切り離す
私たちの遊びは既に失効している
終わりがないプレイルームで
延々と始まりだけが続き
つまるところ距離が無いという意味の部屋で
初めて見た虹を汚らし ....
乗り出した半身
月の明かりは
雲にさえぎられていて
それでもこんなに明るい夜
君だけを
見ていられない
本当なら
目をつむったら
飛べるような気がしていた
窓を開 ....
ネジを食べる
硬い
ネジ、硬いね
君も食べる
時々軟らかいのがある
不良品なので捨てる
そろそろご両親に挨拶に行きたいのだけど
言いそびれていた話を切り出す
君が嬉しそうに微笑む
....
かくすためだけの
キャミソールに飽きて
このごろは いつも
はだかで過ごしている
夏はまだ
わたしの腰の高さで停滞している
午後4時をすぎると
夕凪に 夏がとけてゆく
....
わたしのこと
愛してなんかないんでしょう?
帰途につく助手席に
憎しみは騒ぎたつ
さざなみのように
答えのないまま
FMはゆく
たとえばくちびるで
確かめあえたら
あなた ....
ふと遠いところへ行きたくなる
通過電車に手をのばせば届きそうで届かない
本気で身を乗り出すと本当に連れ去られてしまうから
「危険ですから、黄色い線の内側までお下がりください」
というアナウ ....
曇って
見えない夕陽を
さがしていると
さびしかった時間が
今と重なる
ひんやりとした母の顔
ギザギザにみえて
夕陽道を歩いている
学校の校庭は
黄色い砂漠
ひとり歩く
重い ....
あの頃、君に告げられなかったことを今
***
ねぇ、君
冷やし中華を誰よりも早く始めたいの、とはりきる君の姿が僕は好きだったんだ
ねぇ、君
扇風機の首フリに合わ ....
頭の中
遠い野原
夏の粒子がさらさらと
光の加減でモザイクを並べる
都合の良い再生
無意識の補修が優しく波打つ
振り向いた少女のワンピースは
夏じ ....
今日が終わる
その少し手前で
ひとつ足りないことに気づく
いつものように
君を送りとどけた駅で
「またね」でもなく
「さよなら」でもなく
「ありがとう」でもない
ひとつ ....
なにか とても
からっぽになったので
そこらへんから
どうでもいいものや
くだらないものを
いっぱい ひろってきて
つめこんでいます
きらめくものや
たいせつなものは
ひろうたび ....
輪郭だけをのこしたまま
あのひとがいなくなってしまったので
いつまでもわたしは
ひとりと半分のからだで過ごしている
明かりの消えた部屋で ひとり
アルコールランプに、火を点ける
ゆ ....
焦らずに生きよう
吸い込んだ空気の味を確かめるように
君は口の中でその言葉を噛み砕き
ため息に混ぜて吐く
空のむこう
酸素のない宇宙空間に
君の知らない自由があるとしても
そ ....
果ての見えない白の上に
君に用意された四角い枠があったとして
君はそれを少しはみ出すくらいに自画像を描くとする
君はそのうち
枠の中に絵を収めなきゃいけない気がして
はみ出した部分を消そ ....
触れることも触れられることも
拒んでいた手
そんなことすら
忘れてしまった手を不意に繋ぐ
温かさ
そんな空想が
思考の隙間に挟まって
消え
誰も
何も知らない私を
存在させ ....
夢へと落ちてゆく瞬間
貴方を想う
サワレナイという女の子がいました
何を贈られてもそれに触れないでかなしそうに笑うので
そう呼ばれていたのです
サワレナイはある朝、さみしい夢に目を覚ましました
そして、毎朝そうやって起きていた ....
「不思議だね、みんな死んだらいいのにね」ってビルの65階の夜景
もう少し待って 60年くらい経てばさみしさが死因で死ねる
{引用=6月、梅雨 ....
十二番目で
いつも言葉を間違えてしまう君は
その次の交差点では
左折ばかりを繰り返している
東京
狭い夕暮れで
夢から覚めたばかりの抜け落ちた体を
ついでのような角度でドアの隙間に潜り込 ....
世界のどこかで
一秒あたり二人死ぬそーだ
あの人もその一秒の二人のうちの一人にすぎないわけだ
「自分が死ぬ瞬間に、どこかでもうひとり死ぬ」
それは少しだけ優しいトリビアな気がする
そ ....
{引用=
空から
ぶら下がっている
スイッチの
紐を
一緒に
引こう
月が
常夜灯の
ように
琥珀色に光って
僕たちの
最期を
しばらく
映 ....
どうしようもないくらいの
空の返還が
わたしに帰ってきた
わたしの唇は青いことでいっぱいになる
空に着歴がある
それは長い長い数列
雲は遠くの蒸気と会話したりするけど
やがて話が尽き ....
あなたからの手紙、
「。」が全部ミジンコで
「、」が全部ゾウリムシ
だったよ
どうでもいいから
早く会いたい
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