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電車は学芸大学を過ぎた
橙の薄日が
くすくす眼を射り
わたしは数年前に
逃がしてしまった犬の事を
茫洋と考えていた
毛並みの良い犬だった
ルクスと云う名で呼んでいた
或る日鎖をひき ....
私
こんなことできるんだ
腹の底から
あんな絶叫
後の痛みを考えず
打ち付けた拳
流れたマスカラ
振り乱した髪
ペンを投げ
グラスを割り
イスを振り下ろした
....
今日という日が来るまでに
いったい人はどれだけの涙を流したのだろう
ふと、考えたある日のバスの中
団体さま四十数名を乗せたのりもの
その中でたくさんたくさん泣いた
きっと、この団 ....
何を忘れたかったのだろう
街に一つしかない小さな駅で
男は窓の外に向かって手を振った
無人のホームでは鉢植えに植えられた
カモミールの花がゆれるばかり
やがて男を乗せた列車が発車すると
駅 ....