すべてのおすすめ
裏山で雪に潰され 折れた枝を集める
曲がった杉の木に足をかけて
土と雪を這い上がり 山道に出ようとすると
蝉の抜け殻が
木の根元 小枝にまじってあった
雪溶け水の下る
山道 ....
寒い時 防寒着をかしてくれた人が居た
都会の職場へ戻る夜行列車の戸口で
切符の予約をとらなかった甘い自分を悔い
朝まで立つ気で汽車に揺られるさなか
途中の まだ雪の見える駅から乗り込み
戸口 ....
白く降り止まぬ豪雪に立ちつくし
枝は のしかかる重みにバリリと折れ
春の澄み切った青空の下
まるたんぼうになって
根はネズミにかじられ
もう売り物を実らせない
切り倒され処分される ....
蝶の羽根を持つ馬の
たてがみは 毛糸で編まれている
影絵の後ろ 電池の照らす
いななきが 廊下の溝土を蹴る
さなぎに 芽生えてしまった馬は
何もかもが理不尽で
本当の蝶より 大きく美し ....
フリルの青いふちどり 透明な金魚鉢
陽だまりに腰掛ける 丸く揺れる水
雲の尾びれが覗き込み ひとくち
指に 甘くて白い 隙間が 落ち
金網を越えて 草の上 風枕にのぼせた
黒い小石を ....
飛行機が頭上を飛んで行く
被災地へ向けたものなのだろう
カタカタと揺れる余震が十日たっても続く
少しくらいでは慣れて逃げなくなってしまった
今年は大雪で 果樹 建物 いろんなものが倒れ
....
朝 出勤すると 数名の社員が玄関にいる
余震のため建物の中に入らず待っている
そろそろいいんじゃないの いいよね
いざ 建物の中に働きに行く
普通の会社の建物が凶器になる
リストラ 賃金カ ....
おい いくらだ
会社帰りのバス停で 偶然会った女友達と
ご飯を食べて帰ろうという話しになり
田舎から上京して道もよくわからなかったが
あまり混んでいない小さなお店で食事を楽しみ
会計 ....
どうして足に板をつけて
高い所から窮屈な格好で滑走して
なんにも持たないで ジャンプ台から
身 ひとつで
空 めざして
飛ぶんだろ
バランス崩したら落ちて
怪我して死ぬかもしれな ....
びゅう と風雪の中 てくん てくん
雪ん子は 雪を踏まずに てくん と
滑って 凍らせながら歩く
やがて 着いたのは 雪の露天風呂
白くてキラキラした柔らかな雪が
やさしく降りそそいで ....
骨の中を蛇は行き来する
赤い舌を つなぎめからだして
どす黒い血を舐め
爪の間から じっと獲物を捜す
ねずみを 虫けらのように
孤独を 小鳥のように
飲み込んだまま 頭蓋骨まで ....
雪づたいに屋根に登れる
大雪の林檎畑は真っ白け
ペンペンと枝の先が雪の上に見えるのみ
どこに木があるのかもよくわからない
横に伸びた枝が雪の重みで裂けて
林檎の木が全滅してしまう
父は ....
テレビ放送を後にして
二階の部屋から そっと屋根に上がる
両手を組み合わせて
ベントラー ベントラー と祈る
星空の彼方から
ユーホーが くるはずだった
それは極秘情報であり きたとし ....
仕事をとられたといっても
それはポジションをとられたって事で
経験をとられたわけじゃない
継続が終わっても持続する力
相手はあなたであってあなたではない
与えられたポジションはいつかは消 ....
用事で呼び出されて実家に行くと
車を外に出して 車庫に雪を入れている
雪の階段を五段 降りて玄関に入る
家の前のパイプとトタンでできた車庫は
軒下の雪を登って 屋根に登れる
家の ....
雪をかきこみ スノーダンプを押す人が
車道で 私に向かって来る
降りしきる朝の通勤時間帯
信号で渋滞しては 諦める日々
安全運転しかないのだけれど
ねえ私の車に なんで真直ぐ向かってくるの
....
三年は居ると思ったのに一年で帰ってきて
高校を卒業して都会で寮生活をしながら働いて
帰りたくて故郷に帰ったけど 親は怒った
だからお前には無理だから行くなと言ったのに
どこまでも行くと ....
カラの待ち雪 棘のソリ
押し花テープ 濁す香り
えんぴつトンネル 炭のスス
あいら ぶゆう
べきっ
猫も寝ず
ネジも
春 じゃがいも種の 底
芽 トタンですべって コ ....
届かなかったと
落ちた空 みつめて
眠りこむ 雪を
春が 起こして連れて行く
ここにも そこにも
次の夜が朝から待っている
影で隠している
風の遊び道具
石に座っていた凍り ....
りんご畑の中にある家は
白い雪にくるまれて
ここから見えるのは
車庫の屋根の雪下ろしは
小学生の時の楽しみだった
冬休みともなれば一階を埋め尽くす積雪に
よじのぼり一人前にスコップを
....
寮生活をしていた頃の事
玄関に来てくれと伝言がきた
同じ部屋の同期入社の子が大変だという
数名のいつものメンバーが見に行くと
大きな台車に 彼女がぐったり横になっている
歩けずに 意識も ....
彼の家というものに誘われたのが
初めての クリスマスの夜だった
家族に紹介するというので
料理など持参してみたり
めいっぱい緊張して気を使って
ぎくしゃくと挨拶をすませて彼の部屋に行くと
....
向こうの外にある空から
根を切られて絶えた花達が
小川のように 流れてくる
一本ずつだった者が
根を捜して彷徨って流れ歩く
土を忘れるように
水を与えられ
雨の届かない屋根の下
....
よしたあとでみつめて
うつしそびれたのどかなあおを
石の空にこすりつける
指が汚れて
しかたないとふきとる
雨が来ない
ぱちと さえぎる
空腹の火種
湿りに破れていく草 ....
センスが凄いんだよ と嬉々として言う
十九歳の甥は トロンボーンに夢中
目標にしている人もいるらしい
学校時代は吹奏音楽一色で
働きながら地元の楽団で演奏するという道を
まっしぐらに歩んでい ....
匂い袋を破っても匂いは漂うように
お守りの使えない事に
包む掌は頷いていた
待っている続きにしか
使えない守り
薄めれば薄めるほど
きかなくなる
でも どこまでも薄まる事に
耐え損 ....
今年最後の林檎もぎの日は晴れて
山に建つ我が家では霜が降り冷たかったけど
生まれた家の近くの林檎畑に長靴で行くと
陽気で 草露になっている
十月の葉取りから会社の休みには手伝い
雨の日は ....
やすりをかけ
ちりちりと落とした窪みに
たたずめば 格子が黒く
白い障子が ざわざわと打ち寄せる
張り紙に のびた犬歯
月の輝きが あぶりだす獲物
小鳥は眠り
....
叫びながらカラスの群れが飛んできた
初雪も消えて見えなくなった秋の空
会社に向かう朝の空気が緊迫する
運転しながら ちらりと眼を向ける
トンビが小さな鳥を追いかけている
死に物狂いに逃げ ....
終わりの果てだと 葉っぱのふち
緑の雲を浮かべた陽気
体を掠めて靴の先で紐をとく
小さな精密が一生懸命
育てた木は また残る
根元に散らばる慈しみと親愛が
腐りはて かさかさに乾い ....
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