すべてのおすすめ
食べるのならあげるけど
おそるおそる声をかけられた
手に持っていたのは 漬物のようなお菓子
中国の方から戴いたものだという
仕事がらみのおみやげで
自腹でせっかく持ってきてくれたものだけ ....
かぶとの木と呼ばれていた
通学路沿いの
道から少し滑り降りて入る草薮の中の
真ん中がくり抜いたようなくぼみのある木
樹液が蜜のようで 夏にもなると
かぶと虫や ....
目覚めろと夫が言う
育てた花から種をとり
今年蒔いたものが発芽した
花はいい
はやく お前も目覚めろ
水と陽射しを気にしながら
隣りでいう
と それは
パソコンに向かってる私が
....
寝苦しい夜 はみだした足が
そろりと風を止まらせた
畳の上を這う 小さな羽虫の陰
名札をはずしたつもりになっても
はずれたくない場所がある
どこからもひ ....
体に雨があたり続けると
冷えていく寒さに
体内に取り込めば力となる水の
私とは相容れない歩みを知る
宿り木のような両手の指を暖め
握りしめる手の甲を濡らす雨と
向かい合っている体内を巡 ....
洞窟が歩いている
しっぽがついてる
持つと 取っ手だ
時計のおしゃべりで
眼が咲いていく
片側通行の車線へ
ながれ星がころんでくる
焼き海苔で包まれた過疎地
望遠鏡のような振袖 ....
ひくく香りは 風の帆を駆け上がり
瞑っているもやの巣の中
はやく運ばないと
息を つのらせてしまうから
どこかに隠れていた
泡の綿帽子が
ささやきを運んでいく
取っ手は行ってしまった
バイクの音がかすれた墨汁を片足で飛ばす
埠頭の上でバケツは
なわばしごの底にくるまれた
千鳥足の洞窟を
掘り起こすため釣りをしていた
エンジンのトマトは酢を ....
腕時計をすると
その下に洞穴ができて
取っ手のないバケツが
ピチョン ときた時のために
埋め込まれている
なげ槍の中に住み込み
解毒剤の研究をしているスルメ
永遠の若さって 日干しね ....
ドラムカンの 外にはみだしてくる
火の勢いに のまれてく
窓から見下ろした 交差点
流し込んだ 健康飲料水
一回 千円のカットだけの看板
マラソンの金メダルのテレビ放送
セルフサー ....
介添えの眠るお天気雨
ふくらませたかかと
眼を覚ませば
占いのためにだけ
花を摘めない人がいる
なくした言葉を入れる
風の器は すぐに壊れ
花の行方に問いたかったのに
ここ ....
なだれゆく 曇天の鱗
きりぎり 虚空にさす枝先
絡めた糸で 傷付けるから
鳥は 近づいてはいけない
どこにもいらない花のように
身を潜めて
散る花の中へおちていく
踏む先に ....
きれた風が コップの中
五つの渦を 見上げている
行きつけの船の舵取りにしか
読めない星雲
人指し指をやめない
子守り歌は
コップのガラスをまわり
砂丘におちていく蝶の
石 ....
早朝の五時から受け付けをする
眼科の玄関の前には
五時前から人が並ぶ
診察は八時からだけど
みんな 少しでもはやく見てもらって
仕事や生活に戻ろうと
ガラス戸が開くのを待っている
....
なをかけ
そらす
わにゆれ
くいる
つつしむ
よるに
こびんの
はおと
すめない
つちに
とべない
かぜに
まつうた
うたう
はなれぬ
はると ....
ひからせや あかく
つれゆく ねごもり
ほうらせ かたせに
おとなう みにおう
きりあめ とかれて
ゆきいろ ぬかるみ
おりこむ みついろ
枕の高さの分だけ
浮いてる孤独
しわのように
なみが 追いかけてくる
向きを変えたいけど
やっと こもってきた熱だから
隙間に入り込む外の風を
力なく拒む
しろくにごる ....
さんびどおもってらば
まだ ゆぎっこ ふってくるおだおの
まぢの たんぼだば すてっときえで
ながぐつなば はずがしして
みせっこさ よ ....
折れた枯れ枝に添ったまま
消えていく水時計を持つ土色の葉
陽射しを後にした地の床への風くぐり
通りの方から聴こえる小声
渓谷は乾き こぼれた石
切れた羽に 埋め込まれ
飛ぶ ....
枠に閉じたら 絵だと
逆らわなかった息づき
飛べたものが 石の中
墜落もできずに
鎮火を待つ間
まだ 蝶でいる
地殻に居眠りする風の群れ
襟元合わせれば
擦れた羽音
すり抜けた鼓動の列の空
眠らないと 届かない宙
ひたった真昼の花の蜜 逝き
寡黙をあぶる眼に しゃがれ
かがみこんで握り ....
猫の鈴が暗い緑を揺らす
さわりのない ぺたんこの靴と
長くて白い靴下
じゃんけんで負けたように肩を落としていましょう
まだ 存じません
鳴るかも知れません
唇をつきだして
ふふふ ....
せとものが 乾いていく
洗った水を流す
手のとどかない
光源からのぬくもり
雇われたわけでもなく
息を 野に延ばす
図の中にいる血脈
末端を一巡り鼓動
いつか影を潰し
完 ....
凍えてしまえば
つもるものに
かけられる冷気にも
なれてしまって
記憶をなくしていくことだけが
自分へのやさしさ
ぬくもりにさえ 気を許さなければ
白い唇のまま 冬に 終えたのに ....
いえでします
と書き付けて机に置いた
小学校に とりあえず向かう
誰に叱られてだったか
何故か知っていた 家出というものを
はじめて決行した 小学一年生の時
きょろきょろみた ....
結婚が決まって 指輪を買いにいった
おもちゃみたいなアクセサリーばかりの私
緊張して店員さんに 結婚指輪をと言うと
いろいろみせてくれた
自分の指のサイズも まともに知らなくて
次々に ....
爪の丸みさえ
新しい希望のように
削った続きは 荒々しく
ひかれて こなごななのに
刃向かいきれない
小ささえ
隠し持てる 最大の武器にして
地図のいらなくなった
なつ ....
倒れたからって
いつか倒れるんだから
なんの問題もない
みえなくなっても
いつかみえなくなるんだから
逆らわない
動かないのか
動けないのか
はっきりしろ
寝たままで
....
とってのこわれたカッター
囲まれたからおとなしく
折れたら折れた先で
汚れていく
自分と自分以外の事
時々 ねだるように
捨てられないだろうと
机の隅で 灯りから
はみでる
....
月の 蜂つぼ
ねかせられた
宿のない小石
そらんじた沈黙
からかうような
漆黒の 隙間
吹き矢に痺れる
鈴の壊れそうな
苦みになく小声
外堀の端に 蝶が あら ....
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