すべてのおすすめ
陽も暮れきった午後六時
買い物メモを持って靴を履く
切れているのは醤油
それから時計に入れる乾電池
八時には夫が帰宅するので
急がないといけない
台所にはやりかけのパズルが広げてある
電 ....
・
午後四時
青の上から
橙や赤や紅色が
塗り重ねられてゆくのを見ながら
大急ぎでベランダのシーツを取り込む
あのうつくしい仕事をしている人が
どんな人だかは知らないが
時折
ゆるめ ....
・
夫があまり鋭く見つめるから
わたしはしだいに削れてゆく
夫と婚姻関係を結んでからのわたしは
もう余程うすっぺらくなったらしい
強く手を握られると
きしゃり と指ごと潰れるから
か ....
・
朝
凍ったような青空の中を一艘の船が
西から東へ進んでゆくのを見た
おそらく西に沈んだ月を
東の定位置へ戻す船なのだろう
さざなみが白く航跡を描いて
航跡はそのまま雲になり
ま ....
・
衣替えが近いので
冬服を夏服に入れ替えることにした
天袋の奥にしまいこんでおいた段ボール箱をおろし
夏服を一枚ずつ箪笥の引出しにおさめてゆく
最後に
去年の夏によく着ていた
さくらん ....
・
からだじゅうの隙間という隙間に
硝子の欠片を
ぎりぎりと押し込まれているような気がして
目が覚めた
いつの季節でも
朝の光は鋭く皮膚を切り裂いてくる
光が当たって切れてしまったところ ....
・
十月も末になるとパソコンが
鼻をすするような音を立てながら起動するようになる
動作もどことなく鈍くて
悲しいつらい気持ち悪い
という類の言葉は迅速に変換されるのに
楽しい嬉しい気持ちい ....
・
どういうわけかうちのごみぶくろだけ
いつもあけられてしまって
中身がまき散らされているの
ある日曜の朝
母が困惑顔で言ったとき
それはきっと妹を狙う肉食獣の仕業に違いない
とわた ....
・
職場で必ず着用するエプロンには
大きなポッケットが付いています
わたしはその中に
いろいろなものを放り込むのが癖です
ポッケットが膨らんでいないと
落ち着かないのです
膨らんでいて少 ....
・
私の本当の名前はスマコというらしいです
だけど父も母も兄弟もみんなスマと呼ぶので
いつの間にか私はスマになってしまいました
ときどき本当の名前について考えます
コというのはどういう漢字な ....
・
幼いころ
妹はお風呂が嫌いで
兄は爪を切られるのが嫌いで
わたしは歯を磨くのが嫌いだった
だからそのころのわたしたち三兄弟ときたら
妹は髪から極彩色のきのこを生やし
わたしはのどの奥 ....
わたしが無職だったころ
茹で卵と塩むすびだけはんかちに包んで
毎日河原へ出かけていた
それしかやることがなかったのだ
アンケート用紙とかに
無職
と書くのが厭だったので
仕事を探してはい ....
風邪 いちにちめ
体のなかはあついのに
皮膚の表面はつめたい
俗に云う風邪なのだと気づいてからは
ずっと布団の中でグレープフルーツを齧っていた
昇ってくる陽にそっくりな果実は
わたくし ....
・
ポストには請求書ばかりが届き
携帯電話の受信フォルダは
迷惑メールでいっぱいだ
履歴書を書けば誤字脱字ばかりで
修整液はとうに使い切ってしまったし
紙屑ばかりあふれる部屋で
どう ....
「口さけ女」
{引用=
耳元まで、口が裂けて広がっている女性噂妖怪。
幅の広いマスクで口を隠しており、道行く男性に、「私、綺麗?」 と尋ねる。
答えた男性には、マスクをはずし、口を見せ付け ....
寒かったから
多分冬だった
カレンダーの数字が青かったから
きっと土曜日だったろう
その日わたしは
当時勤めていた会社のチラシを
マンションやアパートのポストに挟み込む
所謂ポスティ ....
・
小さい頃
コーヒーとは
空色ののみものだと思っていた
すくなくとも
母親が眠れない夜にいつも作ってくれた
ミルクコーヒーは
曇りの日にふと覗く
青空の色をしていた
それなのに ....
この頃は
新聞の死亡記事を切り抜いて
町内の電信柱に
べたりべたりと貼り付けることにしている
今日もこんなに沢山の人が死にました
毎日毎日人は死にます
これだけの人が死ぬ中で
わ ....
雑踏で喫煙をしていると
衛生的な感じの服を着て
酸素マスクを付けた人たちが
群れを成してやって来て
あなたはどうして煙草を吸うのか
と言う
くちごもっていると
健康の為に今すぐにやめ ....
・
初夏の山は
いいにおいをしたものを
たくさん体の中に詰めて
まるで女のように圧倒的な姿で
眼の前に立ちはだかってくる
たまに野良仕事をしている百姓が
山に見惚れていることがあるが
....
冬になったら
彼が凍ってしまって
まるきり目を覚まさなくなったもんだから
やさしく体を開いてあげたら
ふたつあるうちの腎臓の
ひとつが石化してしまっていた
両手で上手に取り出し ....
二十三年間生きてきたのに
おめでとうのひとつも
満足に言えない
そのことについて
頬杖をついて考える
一人で
室内で吐く息は白い
ストーブは足元ばかりを熱くする
家 ....
たまねぎを刻むと涙が出る
それにかこつけて
少し本気で泣いてみる
そうして
矢張りわたしは
要らない子かも知れないと思う
だけど午前の台所は
悲劇ごっこをするには明るすぎるし
誰かを想 ....
☆
そろそろ着陸する
と云うので
五人の宇宙飛行士たちは
めいめい
色鉛筆や携帯電話や文庫本やマニキュアなどをしまい
いやいやながらも手をつないで
着陸に備えた
しかしそれ ....
左手しかポッケットに入れられないのは
右手で傘を持っているためで
少し泣きそうな顔をしているのは
暗くなると君を思い出すからである
急ぎ足なのにけして駆け出さないのは
帰り道の途中に墓場 ....
・
ずいぶん昔
わたしたちは恋人同士だった
あんなにも完璧に
理想的な形で
つながっていたのに
満月の夜だっただろうか
わたしが
あの柔らかな部屋から
いとも容易く
追放されてしま ....
就職支援センター
と云うところに
毎月行っている
無職だからである
就職支援センターは
仕事を紹介してくれる訳ではない
担当の人と
色々お話をして
最後ににこにこと
頑張ってくだ ....
・cigar(葉巻)とsugar(砂糖)
あ、
煙草をやめようかな
と思った
手を伸ばしたとき
箱の中に一本しか残っていなくて
でも寒くて
買いにゆくのが面倒だったから
五分間
....
つまさきが冷えるので
靴下を買おうと思って
鳥の格好をして表へ出た
別に態とではない
暖かそうな上着を着て
マフラーをきちきちに巻いたら
鳥の格好になってしまったのである
ためしに玄関マ ....
▽
どんなに長く電子メールを送信しても
恋人は七文字程度しか
返信してくれないのである
業を煮やしてメールを送信するのを止めると
次の日から
矢文が届くようになった
頬を掠めてすこん
....
恋月 ぴのさんの吉田ぐんじょうさんおすすめリスト
(57)
タイトル
投稿者
カテゴリ
Point
日付
船に乗る
-
吉田ぐん ...
自由詩
25
11-9-9
美術用品のある日常
-
吉田ぐん ...
自由詩
33
11-2-21
dissimilation.
-
吉田ぐん ...
自由詩
49
11-1-6
褪せてゆく秋の或る一日
-
吉田ぐん ...
自由詩
22
10-11-15
家事をするけだもの
-
吉田ぐん ...
自由詩
21+
10-5-24
モーニング・モーニング
-
吉田ぐん ...
自由詩
10
10-5-17
冬支度
-
吉田ぐん ...
自由詩
12
09-10-30
世の中がどんなに変化しても、人生は家族で始まり、家族で終わる
-
吉田ぐん ...
自由詩
53+*
09-10-2
アルバイターと海
-
吉田ぐん ...
自由詩
30
09-9-10
或る少女の生涯について
-
吉田ぐん ...
自由詩
26
09-9-3
わたしたち三兄妹
-
吉田ぐん ...
自由詩
31
09-8-25
わたしが無職だったころ
-
吉田ぐん ...
自由詩
49*
09-8-4
かぜごゑ
-
吉田ぐん ...
自由詩
8
09-7-29
花と戸棚と着信音
-
吉田ぐん ...
自由詩
18
08-7-19
都市伝説
-
吉田ぐん ...
自由詩
24
08-7-7
ポスティング業務のこと
-
吉田ぐん ...
自由詩
10
08-6-13
お台所の話
-
吉田ぐん ...
自由詩
16
08-5-3
自殺志望の友達へ贈る詩
-
吉田ぐん ...
自由詩
20+
08-2-3
喫煙者
-
吉田ぐん ...
自由詩
32
07-12-21
初夏
-
吉田ぐん ...
自由詩
43
07-5-17
彼の腎臓の秘密
-
吉田ぐん ...
自由詩
14
07-3-11
おめでとうの仕方
-
吉田ぐん ...
自由詩
24
07-1-12
午前十時のクリームシチュー
-
吉田ぐん ...
自由詩
29
07-1-11
家族制度(又は宇宙旅行)
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吉田ぐん ...
自由詩
13
07-1-9
種々の理由
-
吉田ぐん ...
自由詩
21
07-1-6
断片集
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吉田ぐん ...
未詩・独白
13
07-1-2
就職支援センターのこと
-
吉田ぐん ...
自由詩
43
06-12-30
似ているもの
-
吉田ぐん ...
自由詩
12
06-12-25
靴下売りと指人形
-
吉田ぐん ...
自由詩
10
06-12-20
恋人とのわかれ
-
吉田ぐん ...
自由詩
27
06-12-19
1
2
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