遠去かる陽がうなずいた草の輪にやがて降り来る雨のふちどり
痛む目となだらかな背を持つものは皆それぞれにぽつんとしている
ひとりだけ此処に居ること奏でれば返る応え ....
ふでばこを開けると
アフリカの草原が広がっていて
夕日に向かって一人
お相撲さんが
四股をふんでいる
何故あの日
僕はふたを閉じてしまったのか
守るべきものなんて
まだほんの少しだ ....
知らない足音がわたしたちを追い越し
立ち止まっていることに気づく
群れるものたちのすべてが
居場所を持っているように見えて
小さな声でいることに
少しだけ疲れて
彩られた樹木たち ....
すべてが終わると
その町にも銃を担いだ人たちがやってきた
彼らはこの国の言葉や
この国の言葉ではない言葉で話すものだから
町の人々はますます無口になった
少年は喧騒と沈黙でごったがえ ....
街の上で
朝を 投げている
小さな 丸い 飛沫が
きらきら ころがりながら
あふれかえる
夜よ
よき 友人よ
くりひろげられる
問いの多くを 吸い取り
泣きな ....
斜体
滑空する
地平は沈黙したままの
全くの木蓮
光/グライド
焼けだされる
きれいな、
春を
{ルビ廻輪=くるま}の中で幸せだった
花の匂いがしていた
四方八方が ....
− 素子へ、特別版 −
子供の頃は戦後のモータリゼーションが
発展し始めた時期で
うちの車は初代パブリカのデラックス
その頃は車のグレードと言った ....
はずむように近づいてくる
あなたの息は白くない
コートは着てこなかったよ
と言って肩をすくめる姿は
想像よりも少し小さく見える
はじめましてとはじめましてがぶつかって
どういたしま ....
かのん、は
「入院」がだいきらい
だから高熱で白目をむいて
こんなにも
「あつくてさむいよお」ってふるえているのに
「いきたくないの」って
ベッドから起き上がっておかあさんにしがみつく ....
標識は錆びていて
わたしたちはそこでよく待ち合わせた
林檎のかたちの金属につまづいて転んだ
ときにできた傷がちょうど膝のところにある
おちくぼんだそこをなぞるのが癖だったのだけれど
きみの指 ....
手のひらの中に
そっと星を隠していたら
夜になって光りだし
銀河系宇宙であることが
ばれてしまった
それは蝶のように
よぞらをかざって ....
焼けた町に流れる町内放送には暗号があります
シヴァー、する、
傾いたトーテムポールの影にはゆふゆふする群れ
浮力です、それは、黒からの、
パンの中のさかさまになった木の実は甘酸っぱいも ....
空から
ぽろぽろ
ぽろぽろ
きっと神さまが
天国で
消しゴムかけてるんだ
虹を見つけるコツは
こまめに空を見上げること
雨のたび
忘れず雨上がりに期待すること
四つ葉のクローバーを見つけるコツは
誰かのために探すこと
本当は自分で見つけないと意味がないん ....
虹を ばらばら に します
少し きららん を ふって
指の隙間から 消えていこうとした
お祭 の 花火 で
かりん かりん
心持ち 軽く いためます
虹は い ....
デートの帰り道
疲れて大あくびをしたら
そのまま体が裏返ってしまった
あわてて元に戻すと
君が泣いていた
ごめんね驚かせて
もう大丈夫だよ
と
言おうとしたら
君がく ....
庭につながれて退屈そうなので
犬をふくらましてみた
ふわふわと
ゆらゆらと
風船のように退屈していた
彼女と喧嘩して
いい加減にしろ
と怒鳴るつもりが
いい加減にすれ
と言ってしまった
こらえたがやっぱだめで
吹き出してしまった僕の
少し後に吹き出した君
ふたりで涙を流して ....
まけじゃんけんというものをおそわりました
さきにあいてがだしたてに あとから
わざとまけるてをだすじゃんけんだそうです
ぱーには ぐーを
ちょきには ぱーを
ぐーには ちょきを
ま ....
雲のない
ブルー・スクリーンを仰ぎ見ても
語るべきものなど何も残されていない
サイレント、ひとつ
崩れながら包み込まれる
ネイティブ・アメリカンに
インディアン・サマー ....
青きを踏んで
真っ直ぐなひこうき雲
簡単なようでいてなかなか難しい
綿ぼこりを握りしめていた
お乳を飲むときおっぱいを押した
初めの一歩バランスを取るために前にのばした
泥まんじゅうを作った
じゃんけんをした
桜吹雪のなか母の手に包まれた
ハナハトマメと書 ....
今
君が飛び立つ理由を僕は知らない
君が微笑んでいる理由も僕は知らない
なあ エンキドゥ
この世でやるべき事は僕よりも多いはずだし
この世で愛されているのも君の方だ
....
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