男は長い間カバンの中に住んでいたが
ある日旅をすることにした
もちろんカバンを忘れなかった
昼間は旅を続け
夜になるとカバンの中で寝た
朝起きると同じ場所にいることもあったし
誰かの手 ....
右も左もわからなくなったら
手のひらをみればよい
右の手にはひらがなで
「て」と書いてあるから
そうやって教わった
あの頃まで振り返る
何かこの先に進むための
ヒントがあるよ ....
あなたの胸で
私の名前が
今にも
消えそうだったから
蛍光ペンで
名前の上に
きゅっと明るい朱を入れた
それも
いつかは消えるから
名前の回りをぐるぐると
ボールペンで囲ん ....
僕の口から出るあれは
すべて出す必要はないのだろう
締まりのない思考が
余分な脂肪のように
ぶくぶくと脳ミソにつき始める
これ以上
頭でっかちにならないよう
必死に余計な言葉を
....
壁にある画鋲の穴が小さく目立たないってことは知ってる。
新しく買った掃除機が昔の黄緑の掃除機に比べて音が若干低いことも知ってる。
あの人の友人Kさんは食事の後に自分でタバコを作っていることも知って ....
このメガネについて来い なぜなら私も妄想派のアキバ系だったから
このメガネについて来い なぜなら私もユニクロが永遠にトレンドだと思っていたから
このメガネについて来い なぜなら私もアニメだけ見てれ ....
わかりあえない
という
隙き間を
麻痺させるために
キスを する
まぶたを閉じるのは
酔いしれるためでなく
誰かを
明確に思い出すため
ある種の昆虫は
だ液と漆 ....
「女の体が羨ましい」と言って笑った
何故?と私が聞くと
「体を切らなくても定期的に血が流れるから」と答えてまた笑った
なんとも彼らしい発言で私も笑った
えーと、そうじゃなくて
定期的に血 ....
はっぱをめくればなめくじ
みんなにきらわれて
しおをまかれたりする
おまえなめくじ
うまれてからずっと
からだじゅうでないている
おれだっておなじ
みんなにきらわれて ....
わたしはどうしていきてるの?
おんなのこがおかあさんにききます。
わたしはどうしてうまれたの?
おんなのこがおかあさんにききます。
おかあさんはゆうはんのよういをしています。
....
誰からも好かれるような
人間になりなさい
ごめんなさい
それは
私には無理でした
約束も破ったし
嘘だってついた
できもしないことを
できるっていった
ことばより先に
キス ....
家焼けた 寝タバコしてたら なくなった
タバコ吸い 何の得もなく 家もなく
毟られて ちぎられ巻かれ やってくる
タバコには 罰・罪もなく 妻が泣く
ごめんなさい それ ....
そこいら中に溢れる言葉が
私の角を削り取っていくよ
奔流に晒された丸い石ころ
転がる石はロックじゃない
貴方に言いたかったことは
いつだってのどの奥に蟠る
何時から貴方と私の距離は
....
何がきっかけで雨が降るか分からない
いきなり雷が落ちてくる事もしばしばで
いつも晴れているといいのにな
なかなか当たらない天気予報みたいに
どれだけ予想しても当たるわけでもなく
君の嵐み ....
神戸っていうのは、不思議な街だね。
洒落たウォーターフロントと、にぎやかなショッピングモール。
混沌とした中華街までもが、通りを挟んで混在してる。
ほらさ、自分って海ふりーくですので、こ ....
何気なく
そこにあるけど
実はあなたはとおいところからやってきたんだ
はるかい国の
森のおくから
たぶんそこには鹿や狐や
鳥や虫なんかがいっぱい暮らしていて
川の魚もまぶしいくらいに泳い ....
スーパーでも。
デパートでも。
コンビ二でも。
君が好きだったあの曲が
ゆうせんの他の曲に紛れて
普通に聞こえるようになるまで
僕は生きてやるんだ。
そう思って
玉葱を買う ....
いろんな気持ちを煮込んでいたら
すっかり煮詰まってしまった
僕はふつふつと夜にとけてしまいそうになる
お腹もすかない
最後に口に入れたものは何だったか
そんなことを思い出す気力もない
....
− 素子へ、特別版 −
子供の頃は戦後のモータリゼーションが
発展し始めた時期で
うちの車は初代パブリカのデラックス
その頃は車のグレードと言った ....
忍者になりかけてから
将来が心配になったので入ったのが大学でした
ここにはもう
学者はひとにぎりしかいないみたいで
あとはみんな
商社とか出版社とかに行くようです
父が忍者だったことを思い ....
耳を塞ぎ
目を閉じ
口を噤む
何も僕の心を汚染しない
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