夕立や子猫の腐る竹林
重き夜や夏に狂うて血のちぎり
うたも絵も美しくあれ夏の闇
病んでなほざくろの花は輝けり
筆先に落つる泪や花ざくろ
しづけさやプールに沈む我がいのち
....
素でいたい そう思うのが 人の常
薬指 伸びた先には あなたの手
目を閉じた赤子の笑みに触れる花
ひとひらをくちうつしする涙かな
赤子の手何を語るや散る桜
とどまらぬ光の糸をたぐる花
名づけても名づけきれぬ日花 ....
降り積もる音がないのも
雪の音
木々が手放した年老いた葉と共に
寂しい気持ちを夜は夜風にのせて連れて来る
街頭が照らす暗い道を駆け足で逃げても
冬が手足に冷たい息を吹きかける
逃げ込んだ扉の向こう
君が温かな体温をくれる
ときおりすぎて
ゆるんでゆく
ほどけては
また もちなおしながら
むすび なおす
くりかえし
くりかえす
わたしは
そんなにつよくはないから
ふと、とおくをみて
しかい ....
雲ひとつなく秋晴れの空
父の運転で越えていた峠も
いまならば
自分の運転で越えられる
アクセルの踏み加減でスピードを調節
ブレーキなんか踏まない
でも
思いの外カーブは厳しい ....
まっすぐな姿勢で、書きなさい。
こんな忠告とともに、身体の歪みを矯正して
くれる機械があったら、私はそれに従うだろ
うか。椅子の背もたれの部分に備えつけられ
たセンサーが、座っている者を背 ....
ぼくが
みぎひざをいためたら
すかさず
ひだりひざをいためてみせる
ぼくが
あたまに
未破裂の動脈瘤をつくったら
すぐに
6センチの脳髄膜腫を
つくってみせる
きみの負けん ....
妻と相談して
家にエレベーターを取りつけることにした
けれど、取りつけた後で
この家には二階も地下室も無いことに気が付いた
ボタンを押すと
チーン
と音がして扉が開く
上にまいりませ ....
その黒ずんだ石塀より
実は君のほうが長く生きている
みにくさのまま立っていよ
朝一台も居ないパーキングは晴れやか
力尽きるまで
ひとりで立っていよ
2003/0 ....
今日も朝から夫婦喧嘩が始まった。
たしかに私も悪かったかもしれない。
でもあそこまで怒る必要は無いと思う。
キッカケはコーヒーだった。
私達夫婦は毎朝コーヒーを飲むのが日課だ。
甘党の夫 ....
久しぶりの電話や会話で
「なんか」という接頭辞だけを繰返して
うまく喋れない
話しがしたいのに
言葉を紡ぐことが出来ない自分が
もどかしくって涙ぐんでしまう
僕 ....
今日もまた夜が明けて
「死」に一歩近づいた
刻々と「死」に向けて
時が刻まれていく
シワが刻まれていく
体が衰えていく
今日もまた夜が明けて
「死」にまた一歩近づいた
はたしてこのまま ....
二十数年前
大量の醤油を飲んで自らの命を絶った科学者がいる
それが私の父だ
いったいどれくらいの醤油を飲んだのか
警官が説明しようとすると
母はそれを遮り
私の手を引いて長い廊下を歩き ....
ピッ…ピッ…ヒュー…ヒュー…
乾いた機械音と共に響く微かな吐息
横たわる寝顔を眺める
変わり果てた姿
それでも不思議と変わらないこの想い
あなたの生命を奪い去る力の存在なんて認めない
....
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