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夏雲がゆっくりと渡ってゆきます
手をかざしても よくは見えないけれど
僕らの記憶は 眩いあのあたりで
いまも青空にまみれて 遊んでいるんです
あたりじゅうすべてが蜃気楼と化してしまいそうな
夏の午後
裾の長い木綿の部屋着に包まれ
籐の長椅子で微睡む一個の
流線型の生命体
窓からのゆるい風が
肌にときおり触れて過ぎる
ほの甘くあ ....
そのはじまりからすでに
鋭く亡びに縁取られているのが夏で
青空と陽射しがどれほどあかるくても
そのあかるささえ不穏なのが夏で
蝉が鳴き騒いでも
祭の喧噪が渦巻いても
濃密な静寂が深々と ....
緑の並木道
とおり過ぎてゆく人たちと日々たち
僕は空中歩行
さりげなく浮かぶ雲
消えては生まれてゆく
自由みたいに
風の声に沿って歩いてゆくと
いつかまたあの丘へ
そして遠くか ....
病んだ春がせまい庭の片隅で
青ざめて弱々しい翅ばたきの音をさせている
だから
溜息しか出ては来ない
通りの向こうの古びた窓には
どこか見憶えのある白い顔
うすら笑っているような
うす ....
君にプリズムをかざして
分光する
白い壁に映るスペクトラムは
すべての色がほのかになやましく青らんで
僕をいつまでも
見つめさせている