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久しぶりに洗車する
マスカラが涙で落ちたような数本の薄汚れが
泡とともにコンクリートへ流れていった
この数日
見て見ぬふりをしていたものに決着をつけてほっとする
助手席に乗せた犬は真顔で少し ....
亡くなった犬が鏡の中から
わたしを見ている
わたしの手のひらに隠している
おいしいものを知っているのだろうか

名前を呼ぶと返事のように尻尾を揺らす
黒い鼻はしっとりと濡れ
いかにも健康 ....
もうひとつの夜の街が動き出す
灯火はみな偽蛍
背筋を伸ばした猫は
糸を池に垂らしてザリガニを釣り
夢遊病者たちは公園に集い
おとがいを比べ合う
看板描きの落としていった
無邪気な絵筆は
 ....
柘榴をお目当てにやってくるヒタキは
ながら、の達人
羽ばたきながら実をついばむ
秋を経て
冬へと持ち越され
艶を無くし
死んだようになったその実は
つつかれて
したたるようなルビー色の ....
まぶしいのは
ずっと目を閉じていたから
そこは優しい闇に似た架空世界で
行こうとさえ思えば深海にも
宇宙にも
過去にだって行けた

あのスカートはどこにしまっただろう
青い水玉模様
 ....
朝が来たらしい

いつのまにか雨の調べは遠ざかり

ぼんやりと明るい
そして
うっすらと温かい

光が温かいのは
きっと誰かが決めたこと

光が遠ざかれば また
冷たい闇に抱か ....
月までは案外近い
いつか行き来できる日もくるかも、と
あなたはいうけれど
それが明日ではないことくらい
知っている
人は間に合わない時間が在ることを知っていて
間に合う時間だけを生きてゆく ....
いちじくがなりすぎて
おしうりされて
いやになる きみの
ことがだいきらいなわけではないけど
だいすきなわけでもない
いっそきらわれたほうがましとでもいうように
そのみはすこしわれていて
 ....
露天風呂に
注がれる湯を見ていた

細い竹筒を通って
それは 私のいる場所へと
落ちてくる
水面に触れるだけで 
透明だった湯は
たちどころに白く濁る

真暗闇なのに
ほのかに明 ....
【乾期】

鉢植えが日ごとうらぶれていく
朝顔はもう咲かないだろう
ふたたび未来をつなげる種だけを残して
それでいいじゃないかと
乾いていく
ほんの少し私も そこで
足踏みしている
 ....
母の手作りする洋服は
大体において
あらかじめ寸法が大きかった
未来が足されていたから
子どもはすぐ大きくなっちゃうからって
それは言い訳というより
有無を言わせない印籠のように掲げられた ....
「ママ、なんでみどりなのに、あおっていうの?」
信号を指さして
そう問う
まだ乳くさい我が子を
天才だ! と思った遠い日

わたしは
なんと答えたのだろう

仮に
みどり、と名づけ ....
ひらがな、が落ちてくるように
迷いながら雪が降ってくる
日本にちりぢりになった
あ、い
どれだけのあいの組み合わせが
あるのだろう

やがて
あ、と、い、は
溶け合って境界線をなくす ....
仏壇がはなやぐことよ
ようきんさったなぁ
帰省した一族らぁが
各地の土産を並べていくけんど
こがーに食べられんでのう、おかあさん
おとうさんはビールがありゃあ良かけん
ほいでも黄色い菊と白 ....
雨の日に
西瓜をノックすると
入ってます、と声がする

ぽこん

西瓜まるごと持つと
かなりの重量感があるのに
成分はほとんどが水なんだってね
ふうん、そうなんだ
果物を食べると
 ....
家族が皆
湯を済ませ
私が入る時には
既に それらは力なく
先ほどまで
あんなに
意気揚々と
張り切っていたのに
すっかり
ぬる湯めいていた

湯の中の粒子は
もはや
血気盛 ....
足が痛む時
私は足の存在を感じる
手が痛む時
私は手の存在をみつめる
心臓が痛む時
私は心臓の在処を想う
痛む時は
普段忘れているものたちを
思い出させる
誰かからの電気信号なのかも ....
松岡宮さんのそらの珊瑚さんおすすめリスト(17)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
助手席に犬を乗せる- そらの珊 ...自由詩10*24-2-10
鏡よ、鏡- そらの珊 ...自由詩15*24-1-2
よるのぜんまい- そらの珊 ...自由詩11*23-10-10
小鳥な日々- そらの珊 ...自由詩13*23-2-10
燕よ- そらの珊 ...自由詩1518-5-9
柘榴の国のお姫さま- そらの珊 ...自由詩13*17-9-29
秋窓- そらの珊 ...自由詩25*17-9-8
いちじく- そらの珊 ...自由詩18*14-9-8
白骨の湯- そらの珊 ...自由詩1113-11-9
秋の待ち伏せ(ツイッター#pw秋組参加作品)Ⅱ- そらの珊 ...自由詩19*13-10-28
ぶかぶか【詩サークル「群青」九月のお題「音」から】- そらの珊 ...自由詩22*13-10-2
【仮にみどりと名づけてみる】群青五月のお題、緑から- そらの珊 ...自由詩20*13-5-25
ひらがな- そらの珊 ...自由詩28*12-12-20
盆にぎわい- そらの珊 ...自由詩7*12-8-16
雨の日に- そらの珊 ...自由詩17*12-6-16
ぬる湯- そらの珊 ...自由詩5*12-1-23
痛む時- そらの珊 ...自由詩12*11-12-6

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