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覚えているでしょうか
始まりはとても深い海の底
それよりも少しだけ明るい窓辺の椅子
の上に、小さい体を完璧な球体に近づけようとして
息を止めていた、午後の

そこでは、君と出会った

 ....
もう、ここも夕暮れて
短い夢のあと
ひとつ、ふたつ、みっつと
呼吸を数えていく
世界はまっすぐで、明日へ向けて良好で
目覚めの後の、定まらない視線で
遠く見えない、海を見ている


 ....
帰り道に迷うのは
せめて僕のほうだったらいい
通りすがりで、そっと交わす言葉からは
いつだって真ん中のところが零れ落ちていく


駅の階段を
夏に降りていく
君は一つの呼吸で
手を振 ....
いくら温めても孵らない夕暮れに
灯りはじめた明りが視線にぶら下がっている
帰り道を間違えた私は
街角を覆う木の下で傾くようにして
蝉は鳴かない
明日への蓄えを手のひらに溜めるようにして
燃 ....
ところで
夕暮れはもう間近に迫り
みんな精一杯に迷っているので
その足元を照らす明かりも
その足で踏みしめているものも
記憶は近さも見せないくらいに
空で燻るものだから
こうやって今日も ....
十二番目で
いつも言葉を間違えてしまう君は
その次の交差点では
左折ばかりを繰り返している
東京
狭い夕暮れで
夢から覚めたばかりの抜け落ちた体を
ついでのような角度でドアの隙間に潜り込 ....
また、ここに夏がやってくる
僕の広げた手のひらの内側
少しうつむきがちな背中にも
広げた葉っぱのトンネル
その先の坂道は空へ消えていく
青い青い夏、遠い遠い世界
少しずつこの街からは何かが ....
六月、朝は煙の中から浮上していく
昨日積み残してきたものは
もう何処にもないかもしれないと
溜まってしまった風の中に体を傾けて
もう一度目を閉じていく
泳げない朝に見る夢は
煙った街から突 ....
忘れない
高い小さな窓から覗き込んだ時間を
校舎の隅、零れていた笑い声の隙間に混ざった寂しさを


夏だった
世界がゆっくりと溶けていくまでの時間を
知らない、知ることもない
あと少し ....
昨日までは夢だと言う
あなたは夏に向けて静かに融解していく
水をたっぷりと含んだ世界で
それはとても自然なことのように


梅雨の中にいる
紫陽花が咲いた


午後にゆっくりと傾斜 ....
残していったものが
背中でまだ疼いている
一日の始まり
蝶のような揺らめきで飛び立っていったのは
形にならない荷物を抱えた人
遠くへと呼びかけた
朝の挨拶をすり抜けて


ここで何か ....
何度目かの電話の奥で
口笛が聞こえた気がする
鼻歌だったのかもしれないけれど
もう遠くて追いつけない

近づいてくる海岸線からは、遠くは見えない
近くなら、というとそうでもない
指先はど ....
やがて、それはゆっくりと始まる

誰も気付かない視点の高さ
から、夜は上昇していく
もう僕らは沈み込んでいる歩幅
もがくよりも深く落ち着いたリズム
呼吸はあちこちで燻っていて
平面に広げ ....
帰ろう
と何時でも君は言うので
何処へ、とは聞かない
ヘッドライトが線になるまで
ただ通り過ぎるように

覗くことをしない
触れるなら静かに
斜めになった窓から
射し込んでくる光が
 ....
溶けるまで
眠れそうな遠くの日々が
溶けていくまで
深々と、動かない部屋で
指を折る
指を折る


ありきたりな言葉では
追いつけなくなりそうで
街灯がつくまでの時間を
静かに歩 ....
空の割れた日は
なんでもない午後の水面が
微風にそっとゆらいだくらいの
静かな頃で
お気に入りの帽子を
どこかに置き忘れてしまった
隙間から、パリンと
音を聞いたのは私だけかもしれない
 ....
現れては、消える
どこか遠い宇宙で
星がはじけるように、生まれるように
現れては、消える
深い
深いとだけ言える心の水面の縁に腰掛けて
切るようにしてつま先を遠くへと投げ込めば
それは確 ....
その名残はもう届かない位置で
懸命に手を振りながら明日に挟まれていく
折り重なり、押し寄せる毎日の隙間
風化する
足跡はもうどこにも残っていないから
辿ることも
手を伸ばすこと、も

 ....
踊ります




夜に住む影のその柔らかなライン
生活の歩き疲れた縁取りを
可能ならば手を取り合って
繋がり合うつま先を
ほんの一瞬の隙間で避け合いながら



過ぎれば、朝 ....
それは どこですか
滑り込むような夕凪ですか


平坦な気持ちを
乗り継ぐようにして目覚める朝には
透明なコーヒーの
一番底にある苦味を
噛み締めるようにして始まりになる
遠くない窓 ....
おはよう
で、今日も誰かが溶けていく
それでも、空を見上げることを止められなくて
いつの間にか、あちこち穴だらけになっている


使い古しの気持ちを手紙に残して
あなたもすっかりと溶けて ....
フラスコの底
丸底の
光がたまって
揺らいでいること
誰も覚えていないから
朝焼けの色にも出会えない
そんな窓際の

暖められている
アルコールランプの触れる
沸騰直前の光が
ぼ ....
よく風邪をひいた子供時代に


待合室はゆがんでいた
大通り沿いの小児科で
トラックが通るたび、がたがたと揺れた
松の並木の奥で待っていた
古ぼけた洋館のような建物は
いつだって静まり ....
たちばなまことさんの霜天さんおすすめリスト(23)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
群生- 霜天自由詩1306-10-29
なにもない、海- 霜天自由詩1005-8-10
浸透圧- 霜天自由詩1105-8-2
その日から七月は- 霜天自由詩1805-7-26
水底の、走る船の- 霜天自由詩1205-7-19
トーキョータワー- 霜天自由詩4305-7-12
ただいま、に向けて- 霜天自由詩1105-7-1
泳げない朝に- 霜天自由詩1105-6-30
あの日、飛び越えた五線譜を- 霜天自由詩705-6-24
そこから溶けていくあなたの- 霜天自由詩1305-6-12
着地点- 霜天自由詩1105-6-7
- 霜天自由詩905-5-31
遠浅の日々- 霜天自由詩1505-5-25
帰宅- 霜天自由詩705-5-21
モノクロームの窓辺から- 霜天自由詩805-5-17
空の割れた日- 霜天自由詩1405-5-17
日々のゆらぎ- 霜天自由詩1105-5-10
僕らが消えてしまったころに- 霜天自由詩1305-5-2
今夜、シルエットの内側で- 霜天自由詩205-4-25
波浪- 霜天自由詩805-4-8
水溶性の、誰かの- 霜天自由詩2905-3-29
フラスコ- 霜天自由詩404-12-18
待合室- 霜天自由詩204-12-16

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