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そっぽを向いた鏡をなだめて
今日も自分は
この世に映る
夜のほつれ ほとつのあいだ
横に走るいなびかり
音もかたちもないいなびかり
森に隠れた生きものの息
道にあふれ 坂を流れ
滝のように崖から落ちる
すぎるもの す ....
鏡の前のふたつの影
光をよこぎる
見えない種の重なりの影
何かを被せられた石は
何かを被せられた人のように倒れ
雨のなか打たれ はためいている
灰にひろがる白の ....
{ルビ鉱=いし}は水に落ち
布になり
底へ底へ
飛び去ってゆく
名前は流れ
誰もいない日
空を映して
さらに流れる
影をなぞる影がいて
壁のそばから道を見 ....
左まわり
やいばの先
痛みは光る
膝上の花
陽の差さない夕暮れに
何かがこぼれ 生まれる水紋
うすく うすく
つらなる水紋
誰も何故かを問わない日
醒めた ....
旅が
かすかにかしいでいる
分かれゆくかがやきの幾つかが
道に沈み 泳ぎ去る
家の陰に落ちてくるのは
わずかに早い 未来のまばたき
午後を閉じては
またたかせている
....
淡く背に触れ
手は消える
ふとふりかえり見るそのときに
手のひらの街
晴れ伝う水
まだらのひと
かけちがえた
ひとつのボタンだけが支えのように
光ともうひと ....
雨水と目
異なる振れ
そよぎ そよぎ
添えられる手
建てかけの家が揺れている
手にすくわれた水の底
見つめる息と
同じ色をして沈む音
そこに ここに
残る ....
曇が曇に臥せ
金いろは
やわらかなひとりでいる
沼には醜い魚がいて
釣られては放され
土になる
石は
緑の向こうの水に気づかず
石ばかりを見つめてきた
....
蛾に生まれたかったものが紙に生まれて
灯りのそばにじっとしている
葉の波が
聞こえては消える
嵐は水の鳥のあつまり
道の先にいる空は
蒼にむらさき
森と同じ背 ....
陰に傾く風の段
昇る背のうた 色の段
去る朝に向け振られる腕に
空に光にたなびく水旗
棄てられた明るさの街を駆け
風に剥がれたかけらを歩み
曲がり角の影の息を踏み
置 ....
丸い生きもの
閉じかけた
小さく細いまなざし
右よりも左が大きい
風で傷んだ
艶の無い肉体
自分のための四肢を失い
うるおいだけがあふれんばかりの
何も感じず
何も見 ....
家のまわりをまわるうた
窓は朝に消えてゆく
窓は蝶になってゆく
壁に隠れ
また現われる
蝶は鳥になっている
蝶になった窓たちが
左まわりに空をまわ ....
鳥が くわえたたましいを
離すたびに緑は深く
深く 深く
枝は水紋
土に落ちた花が集まり
さかしまに笑む紫陽花もいて
水は灯る
水に 灯る
鏡に映る鏡の奥で ....
し と
くちびるに露をあて
朝の光を遅らせる
草の根元の幽かな揺れに
応える静かな笑みがある
雨の日
葉を持ち
あふれるうたの指揮をする
道のうた 流れに映るうた
....
蝶の花 蝶の花
土の下へ
飛び去りゆく輪
蝶の花
塩の火 塩の火
燃えつきぬ糸
人の色でなく
向かうものはなく
甘いにおいは風に消え
ただふるえだけが降り ....
片葉だけが聞こえ来るとき
片葉は片葉の前にいる
片葉は見えず
片葉はふるえ
片葉は片葉と片葉の重なり
羽の目から流れるひかり
左手にたまり 鉱になり
手のひらから手の ....
風のなかを
水がそよいでいる
遠い水
互いに見えない ふたつの水
濃い影 薄い影の重なり
音は溜まり
低く連なり
夜の道を速くする
やわらかな菓子
指 ....
夜の雨を燃す火があり
風をつかみ
家を鳴らす
屋根のかたちが
曇に映る
明日の水を知る花の群れ
遠い音を見て動かない
鼓動と鼓動のつながりが
水平線を巡っている ....
青銅の扉の
息に合わせて
風はふたつの挨拶をした
返事のないまま
なかへと消えた
粉の光
夜に沿い
まぶされてゆく
錆びた光
消える光
朝になり
窓になる前の窓の ....
ふたつの火の間に
煙は消える
いとおしさ
うなづく いとおしさ
風のない日の
指をすぎるいとおしさ
見るまに変わりゆくものの
とどまらぬ今をたしかめるように
せわし ....
壁の花から落ちた花びら
雀たちがついばんでいる
ふちどりを想う
くちすいを想う
かがやく魔
飛び去る影を見つめるもの
四方を壁に囲まれた
庭という名の底にうたう
....
屋根と空
ふたつの雨が話している
風の色は 庇に重い
遠い音 遠い文字
木々をふちどり またたいている
線の光が
線の光に出会い 途切れ
分岐に蒼を残し こぼれ
遠 ....
布の風が樹々を伝い
夜の空を見つめている
蜘蛛のかたちをした声が
枝をめぐり すれちがい
会話ではない会話を残し
夜の空を昇りゆく
雲に映る歪んだ輪から
光と言葉の鳥 ....
蝶を見た朝
森から森へ
子はひとり織る
銀の声
緑をつらぬく小さな音
つらぬかれた跡の揺れる音
つらぬいたものが緑に染まり
水の底から空を見る音
銀が重なり ....
雨から雨へ
飛びつづける声
かすかにまだらに色褪せながら
遠く遠く張られる弦に
願いのようにふるえ伝わる
にじみ ひろがり
蒼く猛り
たわみ ゆがみ
灰にさざめき
ひ ....
曇りの幌につつまれ
ふたたび生まれ ふたたびねむる
陰に刺さり
縦にかがやき
空のろくろ
空のふいご
枝々を巻き
高く きしむ
ひかりが動き
動きがひかり ....
窓と壁のはざまから
水のような顔があふれ
外を見もせず消えてゆく
風が光に 光が風に
裏切りの等価を与えるとき
狭いところ
熱いところ
いたらぬ波をくりかえす舌
輪 ....
満ちていたものは見えなくなり
いたのかどうかさえわからない
かたちはかたちを保てぬほどに
すばやく色も無くすぎてゆく
影のなかに潜む影から
うつろな虹がさまよい出でて
....
つづくふるえ
つづくからだ
水紋は光に変わり
散ってゆく
何かを燃やす夢からさめて
手は緑にくすぶっている
灰のなかに芽吹くもの
誰が蒔いたか知れぬ影
金の ....
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