水と響き
木立 悟
夜の雨を燃す火があり
風をつかみ
家を鳴らす
屋根のかたちが
曇に映る
明日の水を知る花の群れ
遠い音を見て動かない
鼓動と鼓動のつながりが
水平線を巡っている
雨はそのまま朝になる
すべてをさらす朝になる
冷たい夜のにおいとともに
水の柱もまた燃え残り
空をずらして揺れている
上下する朝 花びらの裏
切り忘れた爪のやわらかさ
喉のかたちに添えられた指
つぶやきの終わりにつまびかれ
弦を緑の泡に満たすもの
心に生えた指だけが
わずかに砕けたふるえをすべり
誰かに憶えられることを拒みながら
奏で 奏で 奏でつづける