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松本さんが転室してきた
彼は対人恐怖症と潔癖症で他人とは話せないのだ
今朝散歩に行きませんか？　と誘ったら
ダウンジャケットを着込み
無言で頷きにっこり笑顔で眼を見開いた
病院近くの土手を歩　.... 例えば誰にも振り返られなくても
一粒しかない命を投げ出すことは出来ますか
妻子に捧げるのならあり得るでしょう
交差点ですれ違った人に大切な命を差し出すのは
そう簡単にできることではありません
　.... 私は私で

他の誰でもない

通じない言葉に疲れて

スマホを放り投げた朝の散歩道

きみは私を処刑しようと決めた 消えそうで消えない{ルビ数多＝あまた}の古傷が

今夜は特に{ルビ疼＝うず}いている

闘いに明け暮れた若き日々

今宵はフラッシュバックに襲われて

モノクロ映画のような夢を観るだろ　.... 眠いのに眠れない
こんな夜は琥珀の水を飲み干せば
血液の流れがさらさら流れ
失くした夢も戻ってくる
だが琥珀の水は此処には無い

右に行こうか
左へいこうか
真っ直ぐに行こうか
夢は　.... 何処までも続く白い路

きみと二人なら怖いことなど何もない

雨の日も

風の日も

手をつなぎ歩いてゆこう 白いシーツに午後の陽射しが映る
暖かなベッドに横たわり
刹那に消える夢を観た

アイス珈琲を飲みほして
虚ろな時をやり過ごそうとしても
うつら　うつらと首を振る

至福はすぐそばにいっ　.... そう　きみと二人
菜の花畑の向こうに碧い海を眺めたね
遠く水平線には洋紅色の貨物船が浮かんでいた
固く手を握りしめ
明日の行方を占った

きみの{ルビ華奢＝きゃしゃ}な肩を抱きしめながら
　.... 磨かれた廊下に深海魚たちがゆらり
ゆらゆらとゆっくり泳ぐ
深い眠りに就いているのか
夢をみているのかわからない
天気予報では明日は雷雨
深海魚には予報も関係なくて
廊下をゆらゆらと泳いでる　.... 柔らかな陽射しの中庭で
ぽつりとベンチに座っていた
ぼんやりとした記憶の狭間に
きみの面影が通り過ぎてゆく

あれから何回秋を繰返しただろう
水溜まりに突っ伏して夜明けを待ったあの日
ぼ　.... 鳥になれ
輝く太陽をめざして
大空に羽ばたけ
自由な翼で何処までも
青い空に染まりながら
悲しみの地平をあとにして
やすらぎの風を受けて
成層圏の彼方まで飛んでゆけ
さあ　鳥になれ
　.... こんな冷たい雨降る夜は
夢を見ないことがある

こんな冷たい雨降る夜は
とても寂しく人恋しい

濡れたアスファルトに街灯が映り
水溜まりのありかを教えてくれる
傘をさしては手のひら擦り　.... 彼女はゆらゆらと深海魚のように
磨かれた廊下を歩く
手のひらに握られたピースがあまやかに香った
休日の病棟はとても静かで
耳を澄ましてみても無音の廊下は揺るがない
空気は澄みわたり
光の廊　.... 想いは遥か

西のそら

朧月夜が美しい

聞かせてください

愛の歌 涙の夜に沈んでしまいました

何かを伝えようにも声がでません

銀盤の月だけが頬笑みをくれました

冷えた肩を抱き締めながら

暗い{ルビ闇路＝やみじ}をたどります 人は無量大数より多くの素粒子からできています

その刹那の明滅があらゆる行動となり

言葉も生まれます

解き放たれた言葉は素粒子を振るわせ

共鳴しながら滅びては生まれ

新たな　.... 北の湖の{ルビ畔＝ほとり}に

{ルビ春楡＝はるにれ}の大樹が唸るように{ルビ聳=そび}えている

その根元にきみを置いて写真を撮りたい

そそぎこむ小川には姫鱒の求愛激しく

やがて　.... 午前３時に家を出て
ゲン担ぎのバイオリンソナタを聴きながら
捕らぬ狸の皮算用
今日で渓は閉ざされる
渓は水量が極度に減っていて
秘密のポイントも浅瀬になっていた
ピクリともアタリは無かった　.... 琥珀の水に溶かされ

明日も荒野を独り行く

この肝臓は悲鳴をあげない

今夜も静かに刃を研ぎながら

明日を切り裂く夢をみる 駄目ならば

それでいい

ドン・キホーテのように

命を賭けて

突き進む 深海に沈む大和よ

３０００余人の骸とともに

静かに　静かに眠りたまえ

ぼくらは甘い蜜を吸いながら

日々を過ごしている ぼくはクラス委員をしていた
グレーのＴシャツにジーパン
下駄を履きショルダーバッグで登校していた
小学校からの出で立ちだ
或る時教育委員会の人が聞き取り調査に来校し
ぼくの身なりを注意した
　.... ネアンデルタールは愛を知っていた
葬列を組み
亡き人に花束を捧げ
そして葬った
クロマニヨンとも愛し合い
子孫を残した
それは考古人類学でも証明されている
すがたかたちは違うけれど
彼　.... 明滅する｛ルビ生命＝いのち｝の不思議

魂が魂を呼んでいる

前世の約束を果たすまで

追いかけっこを続け

明日を夢みる ネアンデルタール人は亡き人に花を抱かせ葬儀を行った
死んでも花に包まれ
あの世に幸あれと祈ったに違いない
生の世界と死後の世を観ていたのだろう
そこには既に信仰があったと思われる
人類学者の　.... 灼熱の

陽射しに晒す

我が肌は

焦げ茶に染まり

ひとり旅ゆく 夜のスーパーは人影少なく
ゆったりと買い物ができる

入口を入ると野菜コーナーでアスパラとエリンギが眼に飛び込んだ
明日の朝はベーコンと一緒にバターソテーにしよう
このスーパーでは半額シール　.... 酔い酔いて

独り旅ゆく

我が身かな 人として生まれたのならば
死を迎えるまで
強靭かつ　しなやかでいたい

この世をすべて理解しているわけではないのだから
真っ白なキャンバスのように謙虚でありたい
この歳になっても好奇心はい　.... 渓に静と動あり

静は岩

動は水

森はそよぎ

小鳥がさえずる
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タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
【病棟日誌】＿散歩道- レタス自由詩7*24-12-14
殉愛- レタス自由詩7*24-11-25
五行歌＿＿冤罪- レタス自由詩7*24-11-22
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五行歌＿彼方へ- レタス自由詩5*24-11-13
白日夢- レタス自由詩7*24-11-8
ドボルザーク＿母から教え給いし歌より- レタス自由詩11*24-11-3
繭- レタス自由詩15*24-11-1
面影- レタス自由詩8*24-10-31
天空をめざせ- レタス自由詩8*24-10-30
雨の夜- レタス自由詩9*24-10-29
病棟日誌- レタス自由詩5*24-10-27
五行歌＿＿Far_away- レタス自由詩11*24-10-17
五行歌＿哀歌- レタス自由詩9*24-10-15
シンフォニー- レタス自由詩8*24-10-11
五行歌＿秘密の渚- レタス自由詩10*24-10-8
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人種を超えて- レタス自由詩6*24-8-30
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真夏日- レタス短歌4*24-7-27
夜に蠢く- レタス自由詩8*24-7-24
別離- レタス俳句5*24-7-16
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五行歌＿【渓流】＿- レタス自由詩7*24-7-5
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