生まれた事が嫌だった
父はギャンブル狂で
女にもだらしなかった
雨漏りと床が抜けたあばら家に住み
幼稚園にも行けず
ろくに食べることもできなくて
何時も腹を空かせていた
学校では給食費も ....
私の頭の中のかわいい小虫

私の水たまりにぬれた太陽で游ぐ小虫

固い脳の幹がこんなにも目を詰んでは

住めなくなると申し訳なさそうな小虫たち

雷に撃たれた電信柱の記録

なんと ....
レタスがいのちをもっている。
わたしなんかより。
小さく千切られた彼のほうが
みずみずしく、麗しく、愛くるしく。

レタスにフォークを突き立てる。
ドレッシングの不純さが、
少しだけここ ....
眠りから醒めた夢が
空の中に溶けていく

名前も形も知っているのに
呼べないまま
その弱さでも
鳴らせるものが欲しかった

花が散る時に
ひらひらと聞こえるように
最後まで美しく
 ....
もうその土地は更地にして
地主さんへ返したそうですが

礼文の古い家 元は漁師の 父方の親戚の家には
ものすごく腰の曲がったおばあさんが
何年ものあいだ 一人で住んでおりました

私の母 ....
  *

ねじれた果実の熟すころ
死は昨日のように訪れた
時間の底に焦げついた
小さな獣の影
かどわす風にいま黒い水を渡る

古い橋の真中から
栞を落とす子ども
その萎えた手の甲か ....
  一


面取のない
三角定規で引いたガクガクッ
こころもとないあの日の線
それ宙の果にただようガスの森

誰かが時を人と無理に結ぶため時を隔て
違う誰かが拡がる空間を国家としてな ....
                     月に葉隠れとはいうけれど
      そぞろ虫の影におびえる酩酊者 

道端で眠る小地蔵が倒れて 
 まだ青い無花果の実が零れ落ちている 

 ....
すずめを追ってヒヨドリは
桜の色葉をくぐりぬけ
共に素早く弧を描く
糸でつながったみたいに

 *

落葉が元気に駆け回っている
ヌードになった街路樹の
先っちょでわずかな枯葉が千切 ....
おはようを言わない朝もある

おやすみに似合わない夜もあれば
留めておきたくない風景もある
鉄塔を怖がる鳥もいる

拾われて来た子のまま育てられた
白と黒、光と闇、どちらの味方もしなかっ ....
それは彼方からやってきた
アントニオ猪木ってやつだ
とても大きな塊で
サンプラーザでの生誕祭
ぼくは警備員だった

客席通路のまんなかあたり
猪木は全速力で走ってきた
ぼくは猪木とぶつ ....
友だちは欲しかったけど
仲良くなると怖いから駄目
正しいことは知っているけど
息が苦しくなるからお終い

薬じゃ治らない恋をした
私から私へと手に手を握って
大丈夫だよと言って欲しかった ....
イルバ赤坂ラウンジ是枝様

いつもお世話になっております
早速ですが手短にご報告申し上げます
先日の英雄ひよこ脱走の件につきまして
この度は大変ご迷惑をおかけ致しました
まさか一匹に留まら ....
理由もなく濡れるのが嫌で
だから雨が嫌い
蔑まれてでも私を救ってくれた
その人から逃げ出して
遠い軒の下
晴れ間を待っている

だから世界に雨が降る
だから世界は濡れたがる

今日 ....
結局のところ、残されたのはがらんどうの部屋のみだった。北に空いた窓から、曇りがちな今日の午後の光が遠慮がちに忍び込んでいるだけだった。気づかなかったけれど、午前中には少しの間雨が降ったらしい。窓か .... 一斉に発信される音を
受信したラジカセで変換し流す音楽が

ドアも窓もない部屋で飽和していき
ベッドの上で潰れそうになるから

カセットテープに録音してはつめを折って
レターパックへ入れても宛先が ....
愛した人よ。僕は光さんざめく山道を歩いている。
霜が溶けて濡れた土の匂いが、僕らの約束を祝福している。

赤い車は麓に捨ててきた。君をいつも助手席に乗せていた。
僕らは片時も離れ難かった。君の ....
ジグソーパズルに迷い込んだ
僕の愛だけ見つからない
空には無数のマシュマロパイ
僕ら楽しい遊びをしてただけ
少し夢中になっただけ
長い睫毛の未完成な君
開かない筈の門が開いた
さよならの ....
色は黒いが蝿ほどは大きくはない
主菜の皿の傍らで翅を休め
じっとしている
我が家はドアも窓も締め切ってはいるが
何処かの隙間から匂いに釣られ
入ってしまったのかもしれない
もしくはきっと見 ....
地下駐車場に止めてあった高級外車にガソリンをかけて火をつける
三つ又の銀色のエンブレムがボンネットの先端についている
メルセデスベンツぐらい、クルマに興味のないおれにだって分かる
炎が上がり、熱 ....
欲しいものがなくても
コンビニまで走った

あの人の好きなものを
まだ知らないから

お酒も煙草も
ガラスの向こうで
光って見えた

いつかは
扉を開けて
渡せるように
少し ....
私が走らせた蒸気機関車は、よく知る町を通り抜け
床屋の駅を出発し、歯医者の駅を通過して
商店街が途切れた所で、踏み切りとぶつかった

動けなかった
驚いて見上げた先に
もっと大きな蒸気機関 ....
なり損ねたものがあるなら
駅の売店でアイスでも何でも買って
座る席も無いから
しばらくは開かないドアの手前
流れる景色を見送りながら
さよならとも
うんともすんとも言わないで

ああそ ....
会いたい、が間違いなら
会いたい、じゃなくていい
アインシュタイン、が間違いなら
愛したい、に換えていい

病気だと簡単に言われ
理論だってわかってもらえず
悔しいから面積求めた
苦し ....
耳から咲いたうつくしい花の声たち
眠っているときだけ、咲く花がある
あなたはそれを観る事はないだろう

生きた証し、誰かの
言葉に耳を傾けた証し
母さんの声は咲いているか
愛しいあの娘の ....
そうだね、
戦争があったんだ。たしかに。

私の血の中に流れる色のない祖母の声は、
終戦の真っ青な夏空をしている。

春はどうだったろう。そういえば戦争の春のことを
聞いたことがない。春 ....
「雨」

夜の雨の音がする
夜の雨の音の匂いがする
いや
夜の雨の音の匂いの音がする
ちがう
夜の音がする
うん
そういうことだ


「朝」


朝のくらさがある
ま ....
剥いた蜜柑の爪跡が地球の裏側に勃っている
朝と見間違うかのような崩落
焔は零れる砂となり
紐を抱くとも数式の最後尾に綴じられる

消えそうな会釈で靴を脱ぐ
前室は輪郭に満たず、水没した鏡に ....
あなたみたいにゆっくり生きられたなら
そう呟きながら
その細い指先摘まんで額に押し当てる
ひんやりとした感触が
あなたの優しさなんだとわかる

私の指はどうやら幸せを掴むためじゃないみたい ....
菊西 夕座さんのおすすめリスト(29)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
半生- レタス自由詩13*24-5-13
わたしの小むし- soft_machine自由詩8*24-4-5
レタス- 印あかり自由詩11*24-3-19
エアリアル- ミナト ...自由詩6*24-3-17
漁師の家_うつくしい硝子- 自由詩9*24-3-17
逝くまで書いて- ただのみ ...自由詩9*24-3-2
- soft_machine自由詩7*24-2-22
いやおい- アラガイ ...自由詩14*24-2-18
見上げてごらん空耳を- ただのみ ...自由詩5*23-11-11
正午- 妻咲邦香自由詩4*23-10-27
めーとる- 妻咲邦香自由詩4*23-10-14
虹のスープ- 妻咲邦香自由詩4+*23-10-13
街路樹のある風景- 妻咲邦香自由詩3*23-10-10
私とマドリ- 妻咲邦香自由詩7*23-10-6
がらんどうの部屋の抜殻- ホロウ・ ...自由詩3*23-9-27
ラジカセ- wc自由詩9*23-9-24
愛した人よ。- 印あかり自由詩423-2-11
トゥーピース- 妻咲邦香自由詩223-2-7
糸切り鋏- 妻咲邦香自由詩3*23-2-6
イマ腎- ゼッケン自由詩322-9-19
- ミナト ...自由詩1*22-9-17
廃線跡- 妻咲邦香自由詩222-9-17
フィドル- 妻咲邦香自由詩322-9-5
アインシュタイン- 妻咲邦香自由詩422-9-4
たまゆら- 帆場蔵人自由詩12*21-3-6
春の花- 田中修子自由詩16*21-2-27
ついーと小詩集- 道草次郎自由詩6*21-2-23
カーネーション- 妻咲邦香自由詩321-2-6
ペイスリー- 妻咲邦香自由詩9*21-1-27

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