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陽は少し高く登り、白さが緩み始める
まだ静かな住宅街を歩いていく
土手を登って見えるのは広く穏やかな河川だ。
「川と言えばこんな感じだろ?」
買い替えた自転車の試し乗りには遠すぎるサイクリ ....
積もることのなかった雪のせいか、
風景はあの日の朝を思わせた。
空気は冷たく、地面はツルンとして見える。
吸い込んだ息は、鼻をツンと刺して痛くする。
そうして流れた涙は生理的現象だ。
....
神様は宇宙にいる。
そう聞いて、二階にのぼり、屋根にも登った。
ビルの屋上、山の頂、飛行機にも乗った。
そうして、できるだけ近くで祈った。
だけど、ロケットには乗らなかった。
いつか乗っ ....
無数の足音が、不規則に並ぶ。
どれが自分のものなのか、
問うことに、意味もない。
流れ、仕分けられるように
ゲートをくぐり、
乾いた機械音に安堵を求める。
それは大衆の安堵だ。
....
大小様々な硝子に反射した朝日
何処からか集まってくる多種多様な人々
誰が何処に行くのか、
何をするのか、
その予測不可能性。
黙々とゲートをくぐり、列を作る。
そのまま同じ方向に進 ....
新しく買ったカップには、
海が描かれてる。
これはイルカかな?
ーーああ、残念。シャチだった。
皆楽しそうに泳いでるね。
ーーそうでもないか。
食べたり、食べられたりするんだろ ....
閉じた目は漏れる朝日を見ている。
そう、始まりが来たのを知っているんだ。
意識は閉じたふりをする。
虚無が訪れたのを悟っているから。
目玉焼きの爆ぜる音、白味噌が甘い香りを漂わせたら…
....
君を思い出したくないんだ。
「寒いんだから良いじゃん」
腕を絡ませて、もたれるように歩く。
寝返りも打てない距離で眠る。
散髪(美容院?)に行って、
髪がないと騒いだり、
風呂場の ....
体ほどもある真白な画用紙。
指先ほどの6色クレヨン。
そいつで幾つも石を積み上げていく。
色を変え、形を変え、飽きもせず。
賽の河原みたいだね。
ーー違うよ、お城だよ。
できた ....
誰かの暮らしが灯る
中途半端な暗闇を眺めていた。
それは突然眩むほどの灯りをたたえて
あっという間に通り過ぎた。
一瞬見えた、ただ白さだけが広がる空間。
崩れていく風景の中で、浮かび上が ....
終末に、荷物はいらない。
僕も、君も、後悔もーー
わずかに残した喜びさえも。
すべてが消え、
漂う自己さえ認識できないその世界で、
すべてが混じって、黒になる。
僕は僕に解けない問題を出して、
髪の毛を掻き毟って、頭を抱えさせる。
たとえばこんな声がする。
「君は誰?」
「どこから来たの?」
「偽物って何?」
「本物はどこにある?」
「君 ....
時間の叫びの中にいるせいで
目が眩んでいる。
手足は地面に吸い寄せられ
すべてが重くなっていく。
ぼやけた視界に映るものたちは
重力に耐えきれない為か、
叫びから逃れる為か、
ただ静 ....
少しずつ景色は冷えていく。
眺めた窓から見える景色は
徐々に白く靄がかったように曖昧になる。
凍えるような街の空気に
誰もが逃げ出そうとしている。
彼等は何処に向かうんだろう?
そ ....
君の黒と見紛う蒼に、
僕は何処までも沈んでいった。
君と同じ色しかない世界。
音さえもゴウゴウと沈んでいく。
思い出せ。
宇宙(そら)を見通すような青を。
彼方まで続く陽光の一筋を。
....
二人ベットで退屈なニュースを見てる。
「腕枕した手が痺れるのは、
ハネムーン症候群っていうんだぜ。」
君はそっけない返事、頭をどける気配もない。
ニュースは温暖化現象の話題。
コメン ....
僕の髪は癖っ毛だ。
手入れもしないから、キューティクルもなくうねり、
絡み、解けることなく、摩耗して千切れる。
だからという訳では無いが、
君のウェーブがかった髪が好きだった。
退屈そう ....
自分でも信じられないけど、
もう家には帰りたくないんだよ。
君には信じられないかも知れないけど。
この狭くて汚い部屋が、
君が帰ってくる場所だと信じてるんだ。
惨めたらしくね。
今 ....
後悔する事はたくさんあって、
自分の存在、それそのものが下らないと感じる。
自分にできたのは、児戯に等しい、愚にもつかない事ばかりだ。
たくさんの人で混み合った空間を孤独に感じる。
存 ....
君がいなくなった部屋で
休む為に独り体を横たえる。
孤独の為に体を横たえる。
どちらが本当か確かめに行く。
人間になり損なったピノッキオは
流されて海へ出た
潮の流れにぐるぐると頭の向きを変えられ
漂う彼を波が見つけて粉々に打ち砕いた
コ
ナゴ
ナニ ウ ....
妄想に心踊らせ眠る。
それが僕の日課
踏まれた跡が残る革靴も
ワイシャツの背中についた誰かの口紅も
隣室のカップルが歌う流行歌も
二階のオッサンが吸うタバコの煙も
雨が激しく降 ....