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書に少し重ねて
僕の筆跡とは異なる
朱色の字が書かれる
僕の黒の否定
朱形の強要
求められるのは
誰が書いても同じ字
僕の書は大出血していた
仕事を教えてやるよと
レトロな喫茶店に連れていかれた
ノートパソコンより新聞が似合い
年上の人ばかりがいた
テーブルに置かれた
丸い占いのマシンに百円玉を入れると
丸まったおみくじみた ....
戻りたくない
しかし別の道が見つからない
道無き道へ行く勇気の欠乏
メモリはエンプティを指しかけている
手に汗
考えろという自分と
考えることを拒否する自分が
睨み合ってどちらも目を逸ら ....
いつもと同じ道を歩くと
強い向かい風が押し返してきた
風に負けて逆方向へ行くと
風が背中を押してくれた
いつもじゃない道を歩いて
知らなかった景色を見る
背中の風を失わぬよう
流れるよう ....
ブラックコーヒーをもらう
飲めば喜ばれる
その代わり自分の時間はなくなる
油断すれば尊厳さえも
わかっていながら
最初はチビチビと
やがてゴクゴク飲み干す
今では自らブラックコーヒー ....
ひとりの平穏
夢想だけなら無事
一度足を踏み入れたら
無数に埋め込まれた地雷を踏み
砕ける
飛び散る
元に戻せない時間
変化する景色
欠けてひとりに満た ....
前日はマイナスイオンを浴びて
木漏れ日の中で夢を見ていた
翌日になれば儚い過去
抱きしめていたもの
腕の中から消えて
ゴツゴツした現実の岩を
指先と爪先の感触だけで登る
投げ ....
雲行きが怪しい
鳥が低空飛行で横切った
ハンドルにしがみつくようにして進む度に
空は暗くなってゆく
正しいとか間違いとかはきっとなくて
ただそういう所にいるだけ
わかっていたって
心をコ ....
公園の池の際に母子がいる
母は子供にパンを渡し
子供にパンクズを池に投げさせた
池の鯉は競って大きな口をパクパクした
傍には鯉に餌を与えないで下さいの看板がある
通り過ぎる人々の視線が母子を ....
恍惚の人となっても
一番愛していたことを覚えているとしたら
自分にはどんな記憶が残るだろう
愛に似たようなものはあると思うが
今はまだわからない
歳をとって色々なものが抜け落ちた後に
光る ....
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