飲み切れなくなった
ジンジャーエール
心には屋根が
あると知ったから
もったいないけど
流してみようか
海は誰も
いない方が綺麗で
炭酸の泡に
傾ける音を
波だと思って
....
一人、枯野を駆ける
つまり、
蛇の心を、知るか?
おそらくその心に
なんの悪意もなく
あすに向かう希望の光が
灯っているにしても
一人っきりでは生きられない
愛すること ....
星を指さし
星座をなぞって
ふわり歩いてゆっくりと
冷たい空気を吸って
白い息を空にかける
月の巣のように
雨の一滴が右手の甲に 落ちた
ズシリと 重たかった
ミシリと 胸の空洞が鳴った
私は慌てて滴を振るい落とした
軋む胸が一瞬、
張り裂けそうになって
丸い蕾が一つ開くたび
匂う夜風が迷子になる
今夜はどの子と眠ろうか
三日月にリボンを結んで
どの子に引いて降りようか
光にむけて祈るあなた、おとなしく、おとなしく、草のようにほほえみかわして吹かれてゆくあなた。海まで望めない草原に、光源のようにひとり淋しく立っているね。
あなた。紫陽花とあざみの花をにぎって ....
巫女が旋頭歌を月に歌う
紫の花を付けた韮が
秋風に踊り聞いている
何度足を運んだこと
少ない言葉をつなげて
あの人は過去を捨てると言う
歌い終わりに巫女は茎を折る
韮の香りが紫色の雲 ....
大根は足で
白菜は体
生まれて間もなく
捨てられた子供
口があったなら
哀しみの言葉
誰よりも早く
覚えたのでしょう
陽の当たる場所に
いられる命が
人と同じように
....
だとすればこれは暴力だと思う
冷静さを保とうとする僕を尻目に
身体はぶるぶる震えているんだ
寛容でありたい
あらゆるものに優しくなりたい
気持ちに素直になれないなんて
感情を静かに探ろうだ ....
こころを
からっぽにする
意識して
からっぽにする
悩んだり
こだわったりしないで
こころを
からっぽにして
無心になる
弓で的を射るように
ひとかけらの
邪念もない
ただ
....
頭の中にポツリ、ことばが生まれた。
意味などなくて、ましてや心の叫びでもない、
ただ、ここで生まれた言葉。
あの人も、この人も、いろんな事を言うからわからない
どれがホンモノ?これはニセモ ....
注がれて、熱くなって、割れちゃった
苦い液体をよくわからないまま漏らしている
シャリシャリ割れながら天井を見回したわたし
あなたはふわりと電気を消した
静かだ
ああ 静かだ
やっと夜の深まり
落ち着く己の神経が
闇の奥処に潜む
何かに触れる
のっぺらぼう
何処までいっても
平坦な始原の異様、
茫漠と広がる匿名性
静 ....
遠くへ行ってはいけないよ
ゆっくり行くんだよ
雲のお母さんは
小さな雲を心配そうに見送った
雲の子とカラスは
街へ出かけた
あの赤い雲は何?
あれは綿飴だよ
すごいよ口から ....
芸術とは鳥の巣なのだろうか
考えているうちに
卵がかえり
生命がアートになっていく
蛇が鳥のひなたちを
こっそり襲って食べた夜
気づいた月のウサギが
批評について語り始める
果 ....
そこは見わたすかぎりの平原
誰もいない
誰も来ない
その平原のまんなかに
円い緑の丘
そしてその上に観覧車
誰もいない
誰も来ない
のに
ただ静かに回り続けている
観覧車は ....
ぶどうの粒を
潰して戻らない
それは昨日の
命の音だけが
弾けて飛んでく
種みたいな夢
指の真ん中で
舐めて笑った
転がるうちに
皮を脱いだのなら
振り返るなよ
きっ ....
うずうずうず、のみこまれそうになる
うずうずうず、ぐるぐるまわる
ながされる、くるくるまわる、
どこにいく、わからないまま、わからないまま、
ながされる、くるくるまわる、
どこにいく、わ ....
すべてが終わったと思ったのは
ありえない夢を見て憐憫な感情と
寂寥感に押しつぶされた朝
傘もさせない晴天の空の下
会社に向かう電車の中で
再び閉じたまぶたに夢を願ったとき
過去と現 ....
もしもこの雨が
痛みを強くする
ものだとしても
ブラックコーヒー
苦くシメた胸
盾になるような
武器が欲しかった
ひとりでは寂しい
電車の中で
窓と巡るのは
四角い思いさ
....
ころん・ころん。と揺れる小さな頭
母の背中でねんねを始めた頃合で
父はそっと孫を抱き上げ
つつーっ。とタレ堕ちそうな顎周りの涎を
愛用の手拭いでさっと拭き取る。
すーっ。すーっ。と寝 ....
ぶらっと寄らないかあの店へ
忘れられないひとが待っているかもしれないから
すずなり横町とライブハウス
本多劇場と誰も歌わないあのうた
ロングバケイションとお気にいりのロケーション
計 ....
眠れない夜のオフィーリア、
貴女は死に向かって歩む?
{ルビ水面=みなも}に映える白詰草には、
僕たちの{ルビ記憶=おもいで}が散りばめられて。
貴女は、夜へと歩き去るオフィーリア、
....
誰かがいて
誰もがいなかった
隠れんぼのように
取り残された
神社の鳥居に
ブランコはない
バチが当たるのか
風が当たるのか
日常のノイズ
白く飛ばした
青春はまだ
....
透明な夜明けの
水たまりを
踏んで
波紋の中に
映る
歪んだばかりの
僕の顔
風の音は
小さな吹子で
耳に渦巻いて
意識を攫う
笑い声
雨は降らないって
手にした傘を
....
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