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調律が合わなくて
ピアノが港を発ってゆく

小さな港で
すばらしい音楽を奏でていた
そんなピアノが

指先から音がした
触れてはいけなかった
白と黒の鍵盤に
わたしの小さな罪 ....
 
そらのどこ
とぼくがたずねると
きみは
そらのとこ
とこたえるのだった

だからぼくはまた
そらのどこよ
とたずねてしまうからきみは
そらのとこよ
とこたえつづける
いつま ....
 
かくしごとなんて
はじめからなかったはずなのに
生きてると
知られたくないことの
ひとつやふたつあるものでした

できることなら
椅子に生まれて
何も思わずにただ生きて
人を支 ....
 
つたわらないのは
ことばなの
あるいはぼくの
そんざいなの

あなたは
残り香になって
いつもここからいなくなる

この初雪みたいに
かたちもなくとけてゆく
てのひらのなか ....
 
満月が
おおきくくちを開けて
新月になる
夜空をひとつ
噛み終えるまで

いくつもの時を食べつくし
それでもなお
夜はおとずれる

無数の星は彼らの目だ
今日もどこかで
 ....
 
釣りは飽きてしまったようだ
さかながいないからしかたがない
父さんだけが夢中になって
往生際がわるかった

ふりむけば
木のベンチで息子がねむってる
一億年前から
そうしていたよ ....
 
指先から入る
表面張力の
弾力にはじかれて
はじかれるうちに音もなく
入ってゆく

指の骨の
白い洞窟のすきまから
声が降る
あの声もその声も
白く堆積する

カルシウム ....
 
ひとさし指で手紙を書く
砂のうえに
潮が引くときだけ
ゆるされる

返事が来る
潮が満ちるときだけ
あなたから
光と光の
波にさらわれる

こぼれた文字の
貝殻をひろう
 ....
鼓動する
線路上の心臓の
信号ではじまる旅
信号で終わる旅

点滅する
信号の果てにある
命の駅

信号は
出会いの青だから
別れの赤だから

動脈と静脈が
行き交う街に ....
にごり水のすきまには
とてもせまい空席が
すみわたる空の波の間で
ゆりかごのように待っている

にごればにごった水のまま
にごる理由もわからずに
残されたその空席を
赤子のようにゆら ....
盆地を走る列車に乗って
窓から景色を眺めると
かつて僕の世界には
奥行きと幅
高さだけがあったのだ

あの山の並々に
目指す高さがあったのだ

今はその山の向こうの
知らない海が
 ....
春が黙っている
鳥の声だけが響いている
遠くで何かを売る車の音が聞こえる

ひさしぶりに二階の部屋に行った
冬が黙って死んでいる
そのあたりにも春が訪れている
橋はもうないのに
人は渡っていくのだった

橋の向こうには
もう誰もいないのに
それでも会いにいくのだった

いつからか
橋を渡り終えると
振り向く癖があるように
橋の上を
こどもたちが
笑いながら歩いてる
橋の下を
川が笑いながら流れてる
あんなに笑顔で溢れていた橋が
今は静かにこわされてる
橋の向こうに
笑うひとが
いなくなったために
プロポーズの日
私たちは海老フライバーガーを注文した
三分ほどお時間がかかりますが
そうお店の人が言って
後ろの方では段ボールの中から
冷凍の海老フライパティが取り出されていた
トレイの上 ....
目の前で
ひらりと舞い上がって
足跡は空高く飛んでいった

あのひとの足跡も
ひらりと舞い上がった
慌てて両手でつかまえて
背中に隠したけれど私はすべてを知った

行き ....
たりぽん(大理 奔)さんの小川 葉さんおすすめリスト(16)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
航海- 小川 葉自由詩1009-2-28
そらのとこ- 小川 葉自由詩1009-2-18
椅子- 小川 葉自由詩21*08-11-30
初雪- 小川 葉自由詩408-11-21
夜を噛む- 小川 葉自由詩8*08-11-4
一億年前の休日- 小川 葉自由詩2008-11-2
指先- 小川 葉自由詩408-10-22
人指し指から、お願いします- 小川 葉自由詩12*08-10-20
鼓動する信号- 小川 葉自由詩4+*08-5-19
水の空席- 小川 葉自由詩4*08-5-13
盆地- 小川 葉自由詩7*08-5-10
二階の部屋- 小川 葉自由詩408-3-16
- 小川 葉自由詩808-2-23
- 小川 葉自由詩907-7-10
海老フライバーガー- 小川 葉自由詩17*07-6-3
足跡- 小川 葉自由詩1107-6-1

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