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夫があまり鋭く見つめるから
わたしはしだいに削れてゆく
夫と婚姻関係を結んでからのわたしは
もう余程うすっぺらくなったらしい
強く手を握られると
きしゃり と指ごと潰れるから
か ....

衣替えが近いので
冬服を夏服に入れ替えることにした
天袋の奥にしまいこんでおいた段ボール箱をおろし
夏服を一枚ずつ箪笥の引出しにおさめてゆく
最後に
去年の夏によく着ていた
さくらん ....

夕飯のあと
残した刺身を生姜醤油に漬けて冷蔵庫へしまう
こうしておいて翌日に
焼いて食べると美味しいというのは
母に教わったことだ
そういえば結婚して引っ越す当日に
母がお餞別と言っ ....
早朝に剃刀を買うコンビニで 剃髪用です 袋いいです


昼下がり主婦がミシンを踏む音は 人を撃ち抜く練習に似て


夕暮れが鼻血のような色してた 鉄のにおいが漂って、冬


 ....

空が晴れていると
どこへ行ってもいいような気がして
ふらふらと遠出をしてしまいたくなる
そんな時はスーパーへ行って
掌にちょうどおさまるくらいの大きさの
果物をふたつ買って帰る
右と ....

仕事帰りの街灯の下
夜がひたひたと打ち寄せている
その波打ち際に立ってふと
えッと吐き気を催した
げぼッと咳き込んだ口から足元へ落ちたのは
幼いころのお友達だ
あの頃いつも遊んでいた ....
わたしのバッグは黒色で
いつもぷくっと膨らんで
それで非常に重たいです
いつも利き手で持つ為か
右腕だけがだらりと伸びて
地面に付くほどになりました

バッグを持っていないと均衡が取 ....
ミミという女の子がいて
今もどこかで生きています

彼女は
ゲームセンターのUFOキャッチャーで
お母さんにキャッチされ
取り出し口から生まれてきました

生まれたての彼女は
背 ....

ポストには請求書ばかりが届き
携帯電話の受信フォルダは
迷惑メールでいっぱいだ
履歴書を書けば誤字脱字ばかりで
修整液はとうに使い切ってしまったし

紙屑ばかりあふれる部屋で
どう ....
雑踏で喫煙をしていると
衛生的な感じの服を着て
酸素マスクを付けた人たちが
群れを成してやって来て
あなたはどうして煙草を吸うのか
と言う
くちごもっていると
健康の為に今すぐにやめ ....
深夜の路上に
空き缶がひとつ
ぽつりと立てて置いてあった
こおん
とけっとばしてみると
そこいらじゅうから
わああああ
と逃げてゆく子供らの声がして
にわかに恐ろしくなったものの
わ ....

コンバインが
おもちゃのように点々と
そこここに配置され

軽トラックが
ちゃかちゃかと走る

収穫の秋がきた

辺りには喜びが
薄い金色に色づいて漂って ....
老朽化の進んだ体育館は
二階に観客席が付いていて
死んだ蛾や蝉がたくさん落ちていた
わたしは
つま先の赤いうわばきで
それらの死骸を踏み砕き
空へ近づこうとするかのように
一人でそこへの ....

家を出ると
道端に
無数の舌が落ちていた

赤信号が
誰ひとり停められなくて
途方に暮れているような真夜中だった

舌たちは
うすべにいろの花のように
可愛らしく揺れなが ....


わたしの住む町にはトンネルがある
トンネルはぽっかり口を開いて
雨の日にも晴れの日にもただ
怠惰そうに横たわっている

トンネルってなんだか産道みたいだ
トンネルを通り抜けるとい ....
小学生のころ
仲が良かった友人の家の
お父さんは雨男で
お母さんは雨女だった

家に行くたびいつも羨ましかった
彼女の家の中はいつも雨で
じゅうたんにも床にもトイレにも  ....
本を読む人の眼は
例外なく真っ黒い色をしている
それはもちろん
眼が活字のインキを吸収してしまうからである
本を読みすぎて
白眼まで真っ黒になってしまった人が
こちらを向い ....


好きと嫌いが
ギアの上で揺れていました
わたしはちょっと迷いましたが
結局どちらとも決められないまま
右手で好きも嫌いも
すっかり覆い隠して
細心の注意を払い
 ....
年明けからこっち
どうも調子がよろしくない
いったん種子から出たやわらかな芽が
地上の冷気を恐れて
土の中でぐずぐず躊躇うような感じで
段々衰弱してきたのである

それは君に逢わなかった ....
左手しかポッケットに入れられないのは
右手で傘を持っているためで
少し泣きそうな顔をしているのは
暗くなると君を思い出すからである

急ぎ足なのにけして駆け出さないのは
帰り道の途中に墓場 ....
街灯の
周囲に孤独が群れる夜
耳をすませば犬、遠吠える


鳥たちが
十字架のように羽根ひろげ
薄暮の空に貼りついている


雨天こそ
こころ華やぐべきでしょう
赤い傘さしスキ ....
毎年この時期になると
瞼が退化するので
夜は
眼をあいたままねむる
口をあいていると
小さい生物の死骸が入るから
歯はくいしばるようにしている

深更
瞳孔がうっとりとひらき
 ....
日を追う毎に
わたしの頭は
軽くなってゆくようです
わすれていくのだろうか
こんなにも容易く

赤信号が青に変わり
裏路地は繁華街になり
たった今あったものが
次々と消えてゆき
 ....
たりぽん(大理 奔)さんの吉田ぐんじょうさんおすすめリスト(23)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
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スーパーにて- 吉田ぐん ...自由詩3808-11-17
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_ミ_ミ_- 吉田ぐん ...自由詩1908-7-21
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喫煙者- 吉田ぐん ...自由詩3207-12-21
かんけり- 吉田ぐん ...自由詩1407-12-8
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赤いうわばきとたいくかん- 吉田ぐん ...自由詩2507-9-7
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