可愛いそにさんの分子時計は
停止する日時を予め設定されている

そにさんの胸にぽっかりひらいたやわらかい窓は
重力に晒されなかった不定形の唇
ヒトの内部で心だけカンブリア紀を生きのびた証
 ....
この白い画面から
各々の人たちが夏の思い出に何色が入ってるかを見ている
あたりまえに過ごすこと 羨望で願望しかなかったこと
夏の思い出はすきじゃない

病棟へ出入りするぶ厚い自動ドアが、こど ....
ついに、
投下されてしまった、
夏、
という爆弾の、
じりじりとアスファルトが焦げ付いてゆくような、
そして、
その熱波をさらに助長してゆくかのような、
せわしない、
蝉たちのなきごえ ....
白い貝殻たちは
海にさらされた
うつくしい骨
空につるされた
ほねとほねは
風にゆられてぶつかり合い
連れ立って
清んだ音を生んでいる

望めば
とぎれることがないように思える
 ....
図書館へ続く石の階段
日陰には
きのうの命がただよっている
雨ののち
ひごとに深くする手鞠花の青
カタツムリは絶滅したんだろうか
遠い子守唄
世界に向けて閉じられた手提げの中はやすらかに ....
きみという結晶は脆く傷付きやすい
透明な薄緑を纏った蛍石のようだ

ぼくは鈍重な鉛ようなのに
何故か妙に気が合った

初めて出逢ったのは渓流で宝石の魚を釣った夕暮れ
低温で溶けるぼくは直 ....
ひとりが好きな傷つきやすいあなたは
ある日突然
真新しい窮屈な制服を着せられて
教育者たちの話はうわの空で
たくさんの見知らぬ同級生と整列し
汗ばんだ手を握りしめる

十年後の四月
堅 ....
{引用=   我が友、田中修子に}



時折西風が吹く
そして天使が笑ふ
するとさざ波が寄せ返し
沖を白い帆が行き過ぎる

砂に埋れた昨日の手紙を
まだ浅い春の陽ざしが淡く照らす ....
パウンドは「アルタフォルト」で、中世プロバンス、アルタフォルトの城主ベルトラン・ド・ボラン卿の誠に血の気の多い性格を実に生き生きと描写しているが、私が興味を持ったのは、ボラン卿の逆鱗に触れる事なく、無 .... きるからころから
 きるからころころ

キラキラした音が耳の夜に
温かい雨のように
降りしきってくるのを幾らでも 溢れるまで
宝石箱にしまおう

こぎん糸を 祖母とほどいて巻きなおした ....
夜風
白銀色の月光り
かじかむ指先の、爪に落ちて、ちいさく照らし返す

甘い潮の香

はなうら 花占 花占ら
月明りの浜辺に咲き
揺れている花々を
一本一本摘んでは花びら千切り
時 ....
眉毛は太くて下がってて 
一重瞼の団子鼻 
唇厚くて しもぶくれ
良いトコ一つも無いけれど
語り口調は可笑しくて 
さっぱり分からぬ話でも
話下手でも どもっても 
心の綺麗な人だから ....
宇宙の切れ端にメモがある
さまざまな筆圧で記された
瘡蓋のような言葉が無数に揺らめいている

宇宙の切れ端は君の真ん中にある
それに気づくとどういうわけか俺は眠くなり
君の真ん中で赤子のよ ....
つま先にあたった石ころが

ころころ

ゆるく転がって川に落ちる

何の音もしない

七年前

職場のわたしの歓迎会は

小ぎれいな洋風レストランに皆集まった

こ ....
果てしない空にいる
姿なきしゃにむに
あるときは
つまづいて転がっていく石ころ
あるときは
風が止まったやにわに交わすキス
ときどき現れては
影だけを残して
もとからいなか ....
かれはすごい 
てんかんの発作で
鼻の骨が見えそうな傷を負っても 
支援学校の上級生に引っかかれ
ほおに血を流しても

夜、パパが家に帰り 
ドアを開くやいなや
百万ボルトにまさるほほ ....
巣から落ちて干涸らびた雛鳥の
虚ろな目が空を見ている
とっても綺麗だから
イヤリングにしたくなるね

ねえ、そんなに見つめても
決して辿り着けないよ?
それとも小さな魂だけは
この惨い ....
ひとの形をしている友は
寒い寒いくにへ行って
そのまま凍えて雪になった

ひとの形をしていない友よ
くちは利けずとも まだ
わたしの隣にいてくれる友よ
心臓などなくても
温かい友よ
 ....
足で漕ぐのは
オルガン
という名の舟

音符の旅
息でつなぐ
ときおり苦しくなって
とぎれる
生きていたという波の上
気配だけになった猫
ふんわり鍵盤の上を渡る

秋の日は
 ....
波の跡が
空に残って
だけど
いつのまにか風が消していく
秋の雲はことさら
はかなげで
明日にはもう
冬のものになってしまうだろう

空は
海のなれのはて

今はもう絶滅した海 ....
 とある街で

金木犀が香る
だけど金木犀はみあたらない
探しているうち
何年経ったろう
すっかり風向きは変わってしまった
行きついた先で
仕舞い忘れられた
軒先の風鈴が鳴った

 ....
羽が落ちている
本体は見当たらないから
誰かが食べてしまったんだろう
羽は食べてもおいしくないだろうし
さしたる栄養もなさそうな
だけど
錆ひとつない
無垢な部品

ない、みたいに軽 ....
小さなサイコロが
ころがっていく

平坦に見えた道に
傾斜がかかりはじめたから
なにもかもが
かろやかに
だけど
のがれることはできない

さよなら

さよならも
すなつぶも ....
たまに夢に出てくる居酒屋があって、さっきもそこに行ってきたところ。大勢の手品師が町外れのソーラーパネル建設について話す中、自分はうつむきながら卓子を拭いている。あそこには昔からきれいな花畑があって、う .... 去年は虫に苛まれ
今年は長雨に泣く

愛するものを持つことは
憂いを抱え込むということ

悩みは執着から生まれ
拘りはただ惑いを育む

そんな中にも時折煌めく
微かな喜びを拾い集め ....
小さく尖った歯で
骨付き肉に喰い付くと
遠い昔がよみがえる
自分がまだ産まれてもいない
遠い時間の記憶が

タイムマシンはまだ発明されてはいないけれど
かたちのないタイムマシンはいつだっ ....
浴衣を着て歩いていたのだ
電柱を何本かやり過ごして
花も歌もないままに通っていくと
いたるところに空き地がひらけ
荒地野菊の群生や
廃屋を匿している竹藪が現れ
わけもなくただただ悲しいだけ ....
 パリ、モンマルトルの享楽街の中でも、ひときわ輝く大きな劇場があった。
 名を『ムーランルージュ』という。

 彼らはそこで活躍する芸人だった。
「ねえジャン、あたしたちがコンビを組んでもう ....
雨の音のくぐもり
かえるの声は少し哀しい
遺伝子を残すために
自分とは違う誰か
或いは
自分と同じ誰かが必要なんて
生きていくことは
素敵で
残酷だね
結ばれない糸は
螺旋を繋げず ....
朝から珈琲をぶちまける。おそらく私が無意識にテーブルに置いたカップは、テーブルのふちから少ししはみだしていて、手を放した数秒後引力の法則によって、まっとうに落ちた。……なんてこった。一瞬の気のゆるみが ....
宮内緑さんのおすすめリスト(130)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
そにさん- soft_machine自由詩524-8-6
しろく永い思い出- 唐草フウ自由詩12*24-8-5
平和公園- 本田憲嵩自由詩1024-7-15
浜辺便り- そらの珊 ...自由詩12*24-7-14
素足にサンダルをはいて- そらの珊 ...自由詩17*24-6-25
きみに- レタス自由詩5*24-5-30
四月の杞憂- ヒロセマ ...自由詩6*24-4-2
告別- 石村自由詩28*21-11-10
吟遊詩人- 非在の虹自由詩121-6-5
星を縫うひと- 田中修子自由詩1121-1-22
はなうらら- 田中修子自由詩21+*20-11-8
びびんちょの唄- 板谷みき ...自由詩3*20-9-5
宇宙の切れ端- 相沢才永自由詩5*20-9-3
_重い紙袋- 自由詩12*20-8-1
しゃにむに- 自由詩11+*20-5-17
電球のひと_――ダウン症児の息子に――- 服部 剛自由詩1120-4-8
飛翔- もとこ自由詩24*19-1-26
わたしの冬- 唐草フウ自由詩7*19-1-8
秋の部屋/えあーぽけっと- そらの珊 ...自由詩2218-11-5
思慕- そらの珊 ...自由詩17*18-11-1
ダイアリー- そらの珊 ...自由詩16*18-10-5
ひとひらの落とし物- そらの珊 ...自由詩16*18-9-18
夏の入り口へ- そらの珊 ...自由詩2018-7-15
蓮華草- 春日線香自由詩118-7-6
満開の花園にしつこい雨が降る- Lucy自由詩10*18-7-3
野性の夜に- そらの珊 ...自由詩13*18-7-2
荒野へ- 春日線香自由詩218-6-28
ムーランルージュのふたり- そらの珊 ...散文(批評 ...718-6-27
まっさらな海へつながる- そらの珊 ...自由詩1218-6-19
不運も幸運もすべてシャッフルしたような雨上がり、ひとり洗濯機 ...- そらの珊 ...自由詩1218-6-7

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