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黒いものがだいすき
黒い服がだいすき
黒い鳥が
黒い夜が
黒いものが
これ以上悪くならないみたいだから
隠れていられる気がするから
そんな気持ちで座っています
黒い夜に黒い服で ....
文字はやかましくでしゃばりだ
強引に目にねじこまれ
目を閉じた後も暴れまわる
あなたの暴言なんかまだやさしい
文字にはかなわない
なのにどうしても文字がほしい
しるしのような
明 ....
大型ショッピングセンターの
トイレでは制服の女子高校生がお化粧をなおしている
口笛をふきながら
占領している鏡を
だれもなにも言わない
私はその前を足をひきずりながら歩いた
白い顔をして歩 ....
僕はまっすぐ歩いているのに
人にはまったくそうは見えない
足をひきずり
右へ左へ
だけど僕はまっすぐ歩いてる
だれかが僕を評価する
価値が無いとかおかしいだとか
僕はそれでもまっ ....
高い山に登った
高いところにいても空は遠かった
のぼってのぼってのぼってゆくと
どんどん自分が小さくなった
どんなところにも人がいた
どんなところにも人が住んでいた
真っ暗な道 ....
その女は髪を切ったぐらいで
身軽になったという
なくなった後ろ髪の
あった部分に醜い昨日をみる
そうだね
かわいくなったね
みんなは言う口々に
その女の去った後には
少しの ....
さかむけをちぎりながら
ちょっと反省しています
嫌味言ってごめんね
罰みたいなさかむけが
全部の指にできています
あなたの悲しい目がちくっとさしてきます
あなたにはわからない
な ....
おじいさんは祭りは大切だという
おとうさんは仕事が大事だという
僕は今があればいい
おじいさんは伝統というのがすきだ
おとうさんは義務というのがすきだ
僕は言葉がすきではない
おと ....
お医者様は私の悪いところを切る
いらないでしょうと切る
あっさり縫い合わされた私はまた
外見だけはかわらない
そのうちどんどん軽くなって
それで空へのぼってゆくのでしょう
切れ ....
いちごには
まっかなものがあるんだね
白いものもあるんだね
びっしりついた黄色い種に
だれかをふと重ねました
いちごはいつでもみんなで売られています
たったひとつではなく
そ ....
家族でテレビのクイズをみました
それぞれわかった!といいました
まだ言うな
おとうさんがいいました
わかった?
おかあさんがきいています
おばあちゃんは
なんにもいいません
ち ....
朝の鳥はうるさい
昨夜のことを話し合っている
方向性をきめている
どっちの空が安全なのか
そんなことではない
朝の鳥はいそがしい
こどもが親の後ろを泳ぐ
どこにえさがあるのか ....
テレビをみる
みんなでみる
箱にむかってすわる
少し話す
テレビの話題で話す
ちくり
とする
だれのことでもないはずの
話はときどき人を刺す
箱にむかってすわりながら ....
パラリンピックをテレビでみながら
すごいなあすごいなあと感心する
ないものをみようと凝視している
あし 腕 視力
だれだっていつかは衰えてゆくんだけどなあ
そっとつぶやく
満杯 ....
障害があるおまえと一緒にはなれない
それならそれでいいけれど
すきだけで泳げない
うみはふかくふかくどこまでもふかく
なにもかものみこんでゆく
そのせいでくらい部分も美しい
足 ....
あなたが死んでほしいと思ってきたけど
あなたがなかなか死なないから
早く自分が死ねたらいいと思うようになりました
だから
きれい好きになったし
いろんなものも捨てたし
死ぬまでにするこ ....
重ねてゆくとひとつになる
どんなにたくさんあっても
重ねてゆくとみえなくなる
どんなに綺麗なものでも
重ねてゆくしかない
流されたまま
ここからうまれ
どこへもゆかず
重ね ....
トマトが赤くない
それだけでためらう
夏じゃないことを知る
売り場にて
おひとり様むけのパックをつかむ
日曜日に家族の群れの中を泳ぐ
ふいにこどもの泣き声がする
おかあさんの ....
いろいろ怒っていたから
夕焼け雲も眉間のしわに見えました
優しくなんかないよ
夕焼け空も
あたしも
自転車をこぐこぐこぐ
このままどこかへ行きたい気持ちで