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自らを
奮い立たせる
{ルビ焔=ほむら}を胸に
我が道を往く 
朝、起きる前の布団の足下に 
ダウン症児の息子が入ってきて
妻がぱちりと、写真をとる 

頭上の壁には
ミレーの「晩鐘」
(一日の労働を終えた夫婦の祈り)

窓から朝日をそそがれて
 ....
この街に
人はたくさんいるのに
なぜ、ふいに
ぽつんと独りいるのだろう

読者よ 友よ
この紙の向こう側にいるきみよ
わたしの音の無い声は
その耳に届くだろうか?

願わくば
今 ....
     少年と少女
     青年と恋人
  おじちゃんとおばちゃん

       
       今

 
 世界のいたる場所から聴こえる
     くちづけの音に
     ....
今日もふらふら
音のない家へ帰る男の背中は
言葉にならない寂しさを{ルビ醸=かも}し出す  

〈人生はひまつぶし〉と嘆く男の一日は
二十四時間ではなく 
長さの計れぬ夜なのだ 

こ ....
背後にひとり立つ木の葉群から 
夏の終わりの蝉の鳴き声…ふりしきる
路面を歩いていると
ふいに 涼しくなった

見知らぬ誰かが
水をまいた道だった

私は、気づいていたろうか
いつの ....
鼠が地面に落ちた
餌を食べる 午前〇時の新宿

家の無いおじさんは
幸せそうな笑みを浮かべ
北風に凍える僕の傍らを通り過ぎ
バケツの残飯を探す臭覚のままに
繁華街の路地へと
消えていっ ....
私は、とある田舎の
ガソリンスタンドの部屋に
長い間 置かれた
ストーブです

日々まばらにも
旅人が給油にきては
この部屋を訪れ
目の前の椅子に 腰を下ろし
両手をあてて はあ…  ....
流れてゆく
流れてゆく
二度と無い今日が
流れてゆく

僕は今夜ここで
(小さな舞台で朗読する
 新宿ゴールデン街の老舗「ひしょう」で)
何を待とうか

星の無い夜空を仰ぎ
あて ....
一枚の額縁に収まる
植木鉢の紅い花

蕾だった奥に
花を咲かせるものがある

私の奥にも
私を咲かせるものがある
長い間 探した虹は見つからず
今日の行方を、風に問う

僕の内面にある
方位磁針は
今も揺れ動いている

風よ、教えておくれ
ほんものの人の歩みを
日々が旅路になる術を

群衆の ....
ゴールデン街の飲み屋には
色褪せた「全員野球」のお守りが
ぶら下がり
小窓のぬるい風に、揺れていた
妻が財布を買ってきた
古い財布と、中身を入れ変える

小銭と幾枚かのお札を、入れて
レシートの束を、捨て
ポケットの空洞に
旅先のお寺で買った
お守りをそっと入れる

その日から
 ....
三日前、一度だけ会った新聞記者が
病で世を去った
一年前、後輩の記者も
突然倒れて世を去っていた
彼の妻とは友達で
今朝、上野の珈琲店にいた僕は
スマートフォンでメッセージを、送信した
 ....
なぜ人は歩くのか
なぜ人は長い石段を登りゆくのか
息をぜいぜい、切らせ
鳥居の向こうの呼び声に
引かれながら
このがらーんとした
人っこ一人ない
田畑の
さびしさは何だろう

家の無い人のように
風呂敷包みを手に、ぶら下げ
虚ろな目は
まっさらな青空を視る

遥か遠い黒点の
翼を広げ、浮 ....
――誰もが探しているものは何?

ふり返ればずいぶん
{ルビ流離=さすら}ってきたけれど

――わたしが探しているものは何?

  青い光
  ヨコハマの
  青い光

それは観 ....
鎌倉の山の間を
歩む叢の隙き間の遠方に
横浜のランドマークタワーが
くっきりと立ち

あんなにも遠いようで
ほんとうは
距離など無いと

汗の伝う頬を過ぎる、風は
僕に云う
 ....
この古びた階段を登ってゆけば
あの宙空が待つだろう

   *

何処までも細く真っすぐな緑色の道
私がどんな哀しみに{ルビ歪=ゆが}んでも
あの空は
この胸に結んだ
ひとすじの糸を ....
晴れた日の鎌倉は
緑の木々の間に立つ
お墓さえ
明るく見える

あの日、体を脱いだ君は
いつから
若葉をそよぐ
風になったろうか

何処かで鳥が鳴いている
それは円い空から
鎌 ....
この部屋の窓外に
まっすぐ上りゆく
街路樹の坂が見える

いつか旅した函館の風景
のようで
ここは都内だ

今日もこの街で
人々は語らい
キッチンの皿は音を立て
車は行き交うだろ ....
「周ちゃーん!」

パパとママと手をつなぐ息子の
後ろから、女の子が呼びかける

周が、まだ言葉を知らなくても
すぐに反応がなくても
女の子は小さな春風と共に
保育園の門へと、駈けてゆ ....
僕の部屋の片隅に
久しく再会した
幼稚園の頃の先生が呉れた
ご主人の形見の下駄が
置いてある

夜の部屋で、ひとり
黒い鼻緒の下駄を見ていると
あの大きな背中と共に
からん、ころん、 ....
ゆっくり育つ息子が
五歳にして
歩き始めたので
日曜日の公園へ連れてゆく

小さな影は、{ルビ日向=ひなた}にのびて
ひょこひょこ歩き
地べたに尻餅をついては
砂を、払ってやる

 ....
風呂で溺れた
ダウン症児の周ちゃんが
救急車で運ばれ
一命を取り留めた
子供病院

入院後の回復は順調で
3日後に人工呼吸器は外れ
ゆっくりと目を覚ました

日が暮れて、パパは
 ....
遠くに数羽の鳩が舞う
あの泉を目指し
時の川をのぼりゆく

(空ノ青サガ 私ヲ 呼ンデイル)

夢の鞄をずしりと背負い
快い逆風を裂きながら
いつしか爪先は方位磁針になる

この足 ....
キーツが本の中から語る
細い川の流れが、視える

道を歩くわたしの影にも
細い川の流れが、視える

時代も国も
異なる二人の間を
結ぶ
ときの川のせせらぎに
耳を澄まして歩けば
 ....
やがて夜は更けゆき
恐れと不整脈は
徐々に…消去するだろう

私はゆっくり「扉」を、開く
(微かな光は隙間から洩れ)

まぶしい彼方から
誰かの影が
一通の手紙を携え
こちらへ歩い ....
わたしの骨がぎくしゃくと、鳴る
肯定的な歌
1+1=人間じゃない

不恰好な日々のつまずき、こそ
しんしんと軋み泣く骨の{ルビ声音=こわね}、こそ
人間の調べ

すけるとんよ
ぎくし ....
悔しいことがあったなら
ぺしゃんこの空き缶に
自分の姿を重ね
思いきり、蹴っ飛ばせ

(人に当てちゃだめヨ)

空き缶は
すーっと空へ吸いこまれてゆく  
空丸さんの服部 剛さんおすすめリスト(32)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
焔の道- 服部 剛自由詩323-2-20
冬の朝- 服部 剛自由詩822-2-22
- 服部 剛自由詩521-7-12
石庭- 服部 剛自由詩421-7-7
夜の信号- 服部 剛自由詩321-1-20
蝉の声- 服部 剛自由詩319-9-25
新宿駅・午前〇時- 服部 剛自由詩219-3-5
旅人とストーブ- 服部 剛自由詩219-3-1
この夜が明けたら- 服部 剛自由詩319-2-9
花と私- 服部 剛自由詩519-2-4
靴音- 服部 剛自由詩919-2-3
お守り- 服部 剛自由詩4*18-10-13
財布の中身- 服部 剛自由詩918-10-6
光の欠片- 服部 剛自由詩1318-9-18
呼び声- 服部 剛自由詩218-9-8
対話- 服部 剛自由詩218-8-16
言葉の船_―横浜詩人会六十周年に寄せて―- 服部 剛自由詩918-8-8
山の道- 服部 剛自由詩518-7-14
広瀬川のほとり- 服部 剛自由詩318-5-24
鎌倉日和- 服部 剛自由詩718-5-23
坂道の風景- 服部 剛自由詩318-5-23
春の門- 服部 剛自由詩318-3-26
下駄の音- 服部 剛自由詩9+18-3-22
日曜日の公園- 服部 剛自由詩12+*18-2-9
子守唄- 服部 剛自由詩618-2-8
空ノ声- 服部 剛自由詩618-2-8
足音- 服部 剛自由詩918-1-25
自らを脱ぐ- 服部 剛自由詩917-12-8
骨の歌- 服部 剛自由詩817-11-20
缶蹴り- 服部 剛自由詩317-9-30

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