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 夕映の 風にそよぐ
 お堀端の柳の枝は青々として
 「今夜も、蒸すのかね…。」

 低く重なった綿雲を見る
 蔦吉の 下駄の鼻緒は切れていた
 「仕方ないね。」
 下駄を脱ぐ右足

 ....
 「茶トラ猫、あの日以来…来ないわねぇ。」

 近江屋、厨の上部の隅
 かけてあった梯子を床から上げる おゆうは独りごちる

 そして 三畳の間に敷かれる煎餅布団に座って
 脇に置かれた小 ....
 テイクアウトのピザを
 たらふく食べ
 飲みすぎた赤ワイン

 炬燵で寝落ちし
 ふと目覚める 耳の底の音だけしかない
 深夜

 空ビン洗って
 ベランダの収納ボックスへ入れる音 ....
 17時回ったスーパーの精肉コーナー
 陳列棚に、値下げされた鶏もも肉少量パックが
 取り残され上目遣いで
 私を誘惑する

 手が伸びる けれども
 チキンライスを食べたいわけじゃない
 ....
  「紛いもの」

 凪の夜

 寒空が黒いインク
 
 こぼした水面、すべりゆく

 遊覧船は

 まるで冥界の古城



  「中古マンション」

 三階で 物干し ....
 霜月の
 薄らさむいキッチンで
 蒸気放つ きみと
 僕は今、
 目をはっきり開けたまま
 夜の開ける瞬間をはかっている

 そして
 沸点こえる
 きみの 紅い血は
  ....
 
 薄い霧の 
 晴れない朝
 軽い ハイヒールを器用にさばいて
 舗道をいく 女が美しい

 昨夜 花開いたに違いない女の性が
 そのすんなりした 脚を
 わずかに恥じらわせ
  ....
 男が 居た
 美しい男だ
 あぜ道沿って咲き誇る
 紅のみち
 彷徨って舞いわたる

 男が 居た
 彼は蒼白い顔に大きな目を光らせて
 おしゃれなスーツで包む
 細い し ....
 給料日 仕事上がりに立ち寄るATM
 その銀行の隣に花屋がある
 軒先、白い看板には飾り文字で「花音」

 店内は細長いスペースで奥行きあり
 入り口に色とりどりの花の苗が陳列していた
 ....
46Uさんのリリーさんおすすめリスト(9)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
のらねこ物語_其の十三「金魚玉」(二)- リリー自由詩4*24-2-17
のらねこ物語_其の十二「金魚玉」(一)- リリー自由詩6*24-2-17
深酒- リリー自由詩13*23-12-27
或る日のカレー- リリー自由詩5*23-12-17
五行歌_二首- リリー自由詩4+*23-12-16
Kettle- リリー自由詩3*23-11-17
ハイヒール- リリー自由詩5*23-10-15
黒揚羽蝶- リリー自由詩6*23-9-26
花とボタン- リリー自由詩13*23-6-28

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