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四トントラックの背に鉄屑ばかり積んでいた
製鉄会社を回って非鉄金属ばかりを探して
使い物にならないモノたちを再利用しようと
かき集めていた、父の会社

工場の垣根になるほどの拉げたタイヤの群　.... 最もよき者は攫われてしまった＊
よき者の言葉は封じられ
足並みをそろえる、その旋律だけは大切にされた
皆、同じ顔をして右を向き前に倣う

　　　　　　　　　　　　　＊

── 唄は、
　.... 上っ面の言葉を交わしすれ違う恋人家族その他大勢

本当がまるで無いのになぜ刺したナイチンゲールの胸はくれない

表面張力肥大する星一つ縛れる嘘が行ったり来たり

面倒な人付き合いを弾いたら　.... 年末の庭に放置された大量の菊が
霜が降りる毎に人を誘う手をみせる

いつか燃やさなければ片付かないね、と
そればかり気にしていた母の、
指の第一関節はガンジキのように折れ曲がり
小さく縮ん　.... 死んだ父が
殺された、という
名札をつけて立っている

その横をコンビニ袋に
かつ丼を入れた男が
実存の靴を鳴らして歩く

蛍光灯の下で
頭だけ照らされた女が
命について考えると
　.... 地元の植物園で菊花展が開催される頃
入園入口にある車椅子を借りると
母を乗せて湖畔に広がる花々や温室の中を歩き回った

昔、母は祖母を乗せて車椅子を押した
ひと昔前母は　私を乳母車に乗せて
　.... 駅前の信号の青の中を
ホテルの前で屯する入り女の白い手招きを
ビジネスマンの眼鏡の先を
赤いジャンパーの男のポケットの音を
渡り歩いて辿り着く　エビス屋のテーブル席

器に盛られたカルパッ　.... そこには多くの家族がいて
大きな机の上に並べられた
温かいものを食べていた

それぞれが思うことを
なんとなく話して　それとなく呑み込めば
喉元は　一晩中潤った

天井の蛍光灯が点滅を　.... 私の部屋から消しゴムが消えた
自分で買い続けた漫画や画集本より
知らない人から送られてくる詩集本が増えた頃に

机の周りは書き散らかした紙で黒文字だらけ
背表紙の文句に踊らされた本棚
その　.... 母に愛を頂戴と　両手を差し出すと
母は遠い所を見るように　私を見つめる

朝　白い大きなお皿の上に
母の首が置いてあった
寝室の机の上にある手が握っていたのは
（（少しでも足しになれば…、　.... 雨天が続き狭い古井戸に　水嵩が増す。

私の仕事は、モノクロの写真を陽に透かして、セピア色
に変色させたあと、井戸に沈める仕事だ。夜に、井戸の
ふたを開ける。白い私が発光して浮かんでくる。黒い　.... 腕には　花の痕
ぬるくなった前頭葉から　真昼が滴り
効き目のないエアコンの風が
指先を　揺らしている
デコルテの青白い呼吸が　唇から漏れる
白熱灯の陰り　閉ざした瞼から
上手に笑う　あなた　.... 命のことなど問われれば
とってもエライ国会議員
「七十歳になってもまだ生きて」って　怒鳴ります
「七十歳になったら死ななあかんね」
六十九歳のお母ちゃん
淋しく笑って固まった　父の　.... 夜、池に石を投げた人がいて
石に私の名前が書いてあったと噂した

池に波紋が広がって
石を投げたのは私だと
池は被害者面して　波風立てた

　（名前が書いてあるそうじゃないか 　.... 高級カタログで見た望遠カメラ
小田急線で持っている人を見かけて
少しだけ羨ましかった

ある日　望遠カメラをくれるという人が現れて
私は有頂天で貰い受けた

ピントの合わせ方も　.... 魂が彼女の肉体を超えているのに
なぜ人は彼女の囲いばかり　目にして嗤うのか
動かない右手に握り拳を置いて　左手で書いた文字より黒いのは
右手がやすやすと動く人たちの、コトバ

自由と　.... 天花粉の丸い小箱にはいっていたのは
祖母や母が立ち切狭で廃品回収に出す前に
切り取った釦
鼈甲仕立ての高価なものもあれば
校章入りの錆びた金釦や
普段使いのプラスチック釦
そし　.... それは恋文でしたか
長く綴られた美しい文字でも
過去形になると
住所も名前も内容も
要らなくなってしまうのですね

中古屋で買ったシュレッダーに
「アパート」という文字を半分消されて
　.... 母猫が事故死して母乳の味を覚えることなく、
共に産まれた兄妹が運ばれた行方も知らず、
ただ何となく頭を撫でてくれる手を信じて、
呼びかけてくれる瞳の輝きに返事して、
春はご主人様たちと　.... （狼娘のお宿は何処だ
　　　それは夜ともなく昼ともなく　無差別に
　　　数多の男と交わった女の　落とし種
　　　種に希望なく伸びゆく手足なく目もなく耳もなく
　　　思いついたことを叫ぶしかない　.... 真っ黒い木々の影の中をさ迷うように
真っ赤な夕立の雲間から黒い雨粒が
車窓を叩きつけるように
走りゆくバスから
移ろいゆく黒いものたちを 目の当たりにしながら
避けることも 拭うこ　.... 月曜日に来た人は　とても穏やかな顔をして
私の頭を撫でてくれました
月曜日に来た人は　火曜日には火遊びの仕方を
私に教えてくれました
月曜日に来た人は　水曜日私の小言を片付けて
流　.... 父は生きる 沈黙の中に
母は語る 夢のような言葉
私は横たわる 足りない絶望を枕にして

川の字になった 冷え切った水槽の中
打ち上げられた魚を三匹
飼って眺めて笑っていたのは 　....
ひだかたけしさんの為平　澪さんおすすめリスト（23）
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
四トントラック- 為平　澪自由詩520-12-1
唄- 為平　澪自由詩5*20-12-1
胸は紅- 為平　澪短歌820-7-21
白い炎- 為平　澪自由詩320-3-22
何時- 為平　澪自由詩920-3-20
車椅子- 為平　澪自由詩819-12-7
旅- 為平　澪自由詩219-9-24
台所- 為平　澪自由詩1719-3-6
消しゴム- 為平　澪自由詩219-2-16
宿題- 為平　澪自由詩1018-12-5
井戸のふた- 為平　澪自由詩518-9-30
日蝕- 為平　澪自由詩218-8-19
いのちのことなど- 為平　澪自由詩10*17-8-13
夜の石- 為平　澪自由詩317-2-23
望遠カメラ- 為平　澪自由詩417-2-23
左手からオアシス_- 為平　澪自由詩8*16-12-13
釦- 為平　澪自由詩10*16-12-9
シュレッダー- 為平　澪自由詩1116-11-22
白猫語り- 為平　澪自由詩7*16-11-3
ヒルコ- 為平　澪自由詩216-10-27
疑惑- 為平　澪自由詩4*16-10-25
月曜日の人- 為平　澪自由詩10*16-9-19
未来の魚- 為平　澪自由詩7*16-9-17
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