すべてのおすすめ
かけるくんは
呼ばれてもいつも返事をしない
返事だけではなく
一言も喋らない
いつの頃からだろう
皆がどんどん言葉を覚えて
いろいろ喋るようになって
かけるくんの言葉がないことに
....
この時期、雪山での遭難は多い。日が暮れて警察、消防、自衛隊などによる捜索が打ち切りになったり、吹雪のために彼らが動くに動けなくなったときがウチらの出番だ。彼らのようなオモテの人たちは自身が遭難したり ....
「自尊心よりも、自分が期待されている役割を読み取り、それに近付くために努力を惜しんでいないということか。」
「そう。志はとても高いわ。私のみてきた数多の訓練生と比べれば一目瞭然。あなたも感じているん ....
霜柱踏んだ昔の三叉路で明けの明星目印に進む
習慣の高速再生壁打ちの言葉駅まで溢さず走る
喋り方ゆっくりしてるあの人とキャッチボールで肩慣らしする
引き込み線の形残 ....
珈琲の混ざった粘膜に唾液が滲みる
先刻の鳩の血液も蹴り足から鼻腔を貫いたか
公園で撒いたパンにありついた鳩を執拗に追い回していた
追手の鳩を蹴ったのは気紛れ
砂糖のない珈琲では消えない後味
....
乗客の少ない
駅員不在のことも多い駅に
子供が取り残されて泣いていた
所々「ママ」「ママ」の混じった
ほぼ聞き取れない泣きながらの声は
受けとるもう一人の声がないままに
モノクロームの ....
「訓練生が訓練について行けなくなったとき、何が起こるか知ってる?」
「ここでのことに限って、訓練生の記憶が消える、だろ。」
「表向きはそうね。ここを離脱すればここの記憶は自然に消える。もちろん何者 ....
人の呼吸のしかた、姿勢、歩き方から運動しているかどうかがわかり、筋肉のつき具合まで短時間でわかるくらいだ。柏木も地道な肉体の鍛練を愛しているのだ。そして特殊能力の修得もその延長上に描いている。だから ....
手作りのミネストローネと讃美歌でいつもの通り飾り気なしで
蹴り足の微妙な狂い 引き裂かれ頭上のベルに歪んだ視界
ありふれた電飾に沈む客船に無理して笑う音楽と月
赤 ....
仕事の定休日である木曜日にクリスマスイブが重なる。誰とも約束せず、普段通りに過ごす。それだけのことが空虚でつまらないことと感じてしまう理不尽な日。いつもなら仕事に打ち込むことでその空虚を埋めていた。 ....
視線知る暮れゆくふりの匙加減いずれ闇夜の独りの踊り
上弦の月に委ねた言葉はもう私を離れ空に散らされ
青と白の珠が光に埋もれてく散開星団に積もる埃
星の死は時を経て ....
ノーギャラで出演迫る孤独すら知らない愚者の視線を察知
最初から不幸せにも幸せにもできない誰かに費やす心
触れてみない観察しない確かめない強制終了 血走る目付き
古 ....
離れてることを忘れ夢中になるそれぞれの布団のなかでのスマホ
ヤジ飛ばす安酒の唾ふりかかりファウルボールで逆襲したい
運命をしょぼい偶然と言い換える趣味の出会いの私の流儀
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柏木に須田の戦闘訓練を、青山に身体能力の向上のためのトレーニングを担当してもらうことをそれぞれ伝えた。特に柏木には、自身の戦闘能力を削られる危険性について知らせ、危険な状態に陥ったら訓練を中止して構 ....
切々と語られた悪夢に聞き入り笑いのツボを3つメモした
役作りうまくできそうにない人の言葉が尖り世界を語る
騙し絵のなかに入って階段をのぼり続ける 理解した上で
桁 ....
破らずにれんげに乗せた小籠包 箸で突き吸う唇熱く
ラウンジであけたワインの残り香を求めボタンをふたつ外した
前に行きたくないだけで本当は難しいこと言いたくなくて
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持ち寄りの言葉をいれたバスケット空になるまでともに過ごした
5分後の自分自身と約束を交わし暫しの休憩時間
階段のスタッカートと大声の挨拶を聞く 懐かしく聞く
あの人が ....
地下鉄の駅とはいっても高架線上にある、そんな駅から5分ほど歩いたところに、フィットネス倶楽部Ichida はある。父、幸盛が始めた小さなスポーツクラブが最初だったが、いまでは指導員も施設もそれなりに ....
夜に喫茶店に誘われるというのも珍しいし、この時間に開いている喫茶店も珍しい。ここに誘った男が力説するこの店のよさについての話に、大袈裟な相槌で新鮮な驚きを演じながら聞き入る振りをする私を、さっきから ....
そのときそれほどピンとこなくても、似た者同士の魂は引かれあう。そんなことが確かにあるのだと思う。澄花さんの半生は思ったよりは平凡なもので拍子抜けしたけれど、抱かれた余韻もあって少し夢心地で、いちいち ....
眠らせることが仕事になったから月の光の底で生きてく
泣き止まぬ嬰児の不安受け止める作戦いくつも立てて過ごした
綺麗事くさす粗雑な匙加減 まどろむ居間で誰かを探す
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