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熟柿の臭いにおぼれる眼底
海の深み遙かに沈んだ蓚酸の
記憶がこみあげ喉を焼く

都会の底をさまよう脳が
見上げた夜空の淵に
人魚の嬌声が泡立ち  

怒りで放った銛は
領巾にから ....
空と海の混沌に
突き刺さる黒い陸の先端
に白い少女が立っている

淡い彩りが現れ
生まれた風が海を押す
押されて海は岬に駆けのぼり
少女に白い言葉を飛沫く

潮鳴りにひそむ遠い記憶の ....
一時寒くなった初秋が過ぎて
再び訪れた夏日の朝
何を血迷ったか朝顔が起き出してあたりを眺めている
 なんか気の合いそうな方が芽ぇ出しとりんさるがな
 おみゃさん ひょっとしたらゴーヤさんやない ....
鴉の声が窓ガラスをすり抜け
ベッドに潜り込んでくる
戸外では新しい世界が始まったらしい

部屋の中には 
昨夜 
掘り返した青春が 
アルコールに萎えて床に散らばり
描き上げた明る ....
       ー年を取るとはこういうことか7ー

若者よ ズボンをはくとき
ベッドに腰掛けなくても履けるか

家中の者が畳の上で生活していた頃から
立って履くのが常だった
布団の上で寝転 ....
           今年も八月が終わります。
           もう、命日の回向すらありません。
           でも…

    * * *
 
  色褪せたフェルトで覆われ ....
超現代詩は 聞かせるようにつぶやけば出来ます
下手に表現技法とか 文法とかにこだわると
情(こころ)がそがれます

超現代…
はて 現代を超えると何時の時代になるのでしょう
近頃 宇宙 ....
街路樹の緑が色濃くなる刻
敷き詰められた赤い煉瓦に
バイオレットの紗が降りる

黒いヒールがコッコッと音を立て
街路に照らし出されて
白いコントラバスが歩いて行く

コントラバスから延 ....
戦火を避けて祖父の家に疎開していたぼくの
ノートや教科書と一緒に
街にあった家が焼け落ちた翌日 
父は硝煙クサイ鉄の筒を持ち帰ったが
それ以来 街の家のことは口にしなかった

道を挟んだ隣 ....
「おーい おーい」
と誰かが大声で呼んでいる
ドラッグストアの狭い通路

こんな時 こんなところで
大声で呼ぶ声なんぞ
知らない人に決まっている
振り返ってはろくなことは無い
と知 ....
赤い光を背負った父が
海の彼方の岩山から帰ってくると
闇色のかまどに張り付いていた
母の顔が白く浮かんで
子ども達の祭り囃子が
囲炉裏の周りをはね回った
ー「安全保障関連法案」衆院通過の日にー

医師は
腰の痛みを訴えるワタシの
積み木のような背骨のレントゲン写真見ながら言う
 
  ここがずれていて傾く
  それを正 ....
産まれた国は戦争していた
父は軍人にしようと思ったかどうか
まるまるとした数え三歳のぼく
金モールの軍服姿 
腰にサーベル 右手に千歳飴
ギラギラと輝いた眼が
見ていた未来は何色だった ....
空の表面をアメンボウが滑る

水に沈んだ入道雲
に抱かれて
ぼくの顔がこちらを見ている

顔の中を
ハヤの群れが通り過ぎる

ああ
少女のような河童が
ぼくの顔に顔を寄せ
 ....
   ―歩いていたのは七〇年前―

前方は霧に閉ざされて
先導する人は見えない
が 上空に山の頂が透け
笛の音は聞こえる

山の頂き
そは 蜃気楼か 実象か
先導する者は知っていると ....
あなたを焼く炎は
煙さえ立てることなく
空に消えて

後には
黒枠の中で
ほほえむあなただけが
残っている
  
空に
光りの砂 
さざめき

大地に広がる
夏草の波
 ....
ここは都会の海の底
コーヒーを待ちながら眺める窓の外

都会の空から夜が消えても
海の底には闇が淀んで

淀んだ淵の岩間から覗けば
摩天楼のような海藻が
ゆらゆら揺らぎ

海の底に ....
熱帯夜に
惑わされて腐乱した睡眠から
止め処なく垂れ流れるゲルは
黒い卵を内包していた

寝息が言葉に染まって
過去の幻像を描くとき

醗酵したゲルは悪臭を放って
野を枯らし 街 ....
パパあれみて
ジャンボがあるいているよ

ねえねえ みてみて
けむりがおててつないででているよ

ようやくことばが使えるようになった息子ははしゃぐ

何時か 
ジャンボが滑走路に ....
陽向∮さんのイナエさんおすすめリスト(19)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
嘔吐- イナエ自由詩10*16-1-13
暁光- イナエ自由詩20*16-1-7
二〇一五年十一月二八日_ー_ゴーヤと朝顔の物語_ー__- イナエ自由詩12*15-12-23
宴の翌朝- イナエ自由詩14*15-12-17
物を両手には持たないで- イナエ自由詩21*15-9-22
叔父さんに- イナエ自由詩10*15-8-24
超…- イナエ自由詩13*15-8-20
札幌煉瓦通りにて- イナエ自由詩10*15-8-18
あの頃はもう…- イナエ自由詩8*15-8-13
「おーい_おーい」- イナエ自由詩15*15-7-31
遠い日の土産物- イナエ自由詩9*15-7-27
積み木- イナエ自由詩8*15-7-17
サーベルと千歳飴- イナエ自由詩10*15-7-14
夏の思い出- イナエ自由詩7*15-7-12
「ハメルーンの笛」に曳かれて- イナエ自由詩11*15-6-28
夏草- イナエ自由詩21*15-6-20
コーヒーを待ちながら- イナエ自由詩8*15-6-16
夜空を夢が流れて- イナエ自由詩12*15-6-14
おはなししましょ- イナエ自由詩8*15-6-10

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