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船の停泊しない
図書室には
匂いがない
ブラインドの隙間から
斜陽
カウンターに落ちた
向こうで
司書が背中の羽を
二度動かす
白い付箋のはられた
いくつかの椅子は ....
この街にあるピアノの
ひとつひとつに
シールのようなものを貼っていく
たったそれだけのことで
君との近さや
遠さを
はかることができるのかもしれない
僕の心臓のすぐ側
....
少年は
旅に出た
真っ白なノートを
一冊持って
そのノートに
この世のすべての言葉を
すべての意味を
書くために
街には
言葉が溢れていた
朝には朝の
....
辞書は本当は辞書になんか
なりたくなかったんだよ
本当は絵本になりたかったのさ
だから、辞書は本棚で寝ている間
書かれているすべての文字を
手荷物預かり所に預けて
夢の中で
....
午前3時33分33秒になったら
こっそりと本棚から
辞書を取り出してごらん
99頁と100頁の間に
もう1頁できていて
そこにはとても大切なことが
書いてあるから
で ....
たったひとつの睡眠を
羊たちと分かちあって眠る
もこもこしてるね
なんて今日は言わない
めえ、と寝言を言っても口をふさがない
数をかぞえない
何も思い出さない
微笑みの匂いがする最後の頁を
めくるかのように
僕が女を忘れたころ
女はいつもと同じ場所で
いつもと同じ歌を
歌っていたそうだ
未明
人も車も動き出さない冷たい駐車場
空を見失 ....
昨日は
ライオンに
食われた
一昨日は
ウサギに
肉団子にされ
ハチの幼虫に
食われたことも
あった
ニンゲン様は
俺を汚く食い散らし
ご馳走様
まで
言 ....
三番線に十両編成の
パフェが到着した
中から降りてくる人たちはみな
クリームまみれ
母親に手を引かれた幼い男の子が
頭にフルーツをのっけて
昨日からだよね、昨日からだよね、と
....
ゴンザレス、生まれてこの方メキシコ人
今朝も早くからメキシコ風のシチューを
食べる
ゴンザレスを見守るゴンザレスの兄
生まれてこの方メキシコ人の兄
港の町では遠い海で漁をする季節
....
どううぶつえんの檻の前で親友は盤を取り出し
飛車角落ちで良い、と言う
親友の温かい手から飛車と角を受け取り
どううぶつの檻に投げる
どううぶつは隅でうずくまったまま見向きもしない
飛 ....
余計なものはすべて捨てた
部屋にはダンボール箱が一つ
私は体を折りたたんでその中に入り
蓋を閉める
部屋には今、箱だけがある
納豆をかき混ぜながらきみは
深夜まで見続けた同じ映像に目が釘付けで
醤油とって、と差し出す手に
マヨネーズを渡したとしても
きっと気づかないことでしょう
ときおり
あっ、とか
....
愛の奇跡であの娘と結婚させてください
そう神様にお願いした次の日の朝
目を覚ますと僕の右手には一本のわらがあった
どうにかしろ、ということなのか
どうにかなるさ、ということなのか
わ ....
亀を探している
けれど亀はなかなか見つからない
今日の僕は
誰よりも龍宮城へ行きたいというのに
いじめているべき子供たちもいない
九月になって
みんな風か何かになってしまった
....
結婚したてのころ
奥さんがバスンバスン布団を叩く音を聞いて
親のかたきじゃないんだから何もそんなにまで
なんて思ったけど
十年目に
「布団は親のかたきなの」
衝撃の告白
親のかたきに ....
夏痩せしたみたい
はり金が差し出す腕は確かに細くて
どこまでが腕でどこからが腕なのか
わからないままに、痩せたね、とさすると
そこはこめかみよ
拗ねたふりをする
食卓には温めたロー ....
街中ですっ転んだ
視界にあるのは人の脚
何事も無かったかのように通り過ぎる脚
立ち止まってこちらに視線を投げかけている脚
スーツの脚
ジーパンの脚
スカートの脚
ルーズソック ....
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